![グレート・ギャツビー[新版] The Great Gatsby (ラダーシリーズ Level 4)](https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51U61uBsOVL._SL1000_.jpg)
少し前に日本語で読んで気になった部分がやはり気になった。
トム・ブキャナンが、妻のデイジーはギャツビーが好きなのだと気付く場面。
今回読んだラダーシリーズではこうだった。
"You always look so cool," she repeated.
In that little moment, Daisy had silently told Gatsby that she loved him, and Tom Buchanan saw it. He was shocked.
(「あなたはいつもとても涼しそう」と彼女は繰り返した。
その少しの瞬間に、デイジーは無言でギャツビーに彼を愛していると告げた。そしてトム・ブキャナンはそれを見た。彼は驚いた。)
(92ページ)
原文は以下のようになっている。(本は持っていないのでネットで探した。)
"You always look so cool," she repeated.
She had told him that she loved him, and Tom Buchanan saw. He was astounded.
(原文)
ラダーシリーズは読みやすくするために、短くしたり、単語を置き換えたりしているだけなのかと思っていたが、「In that little moment」や「silently」などを補っている。
読むと、「涼しそう」の言葉のあとに無言で愛を語った。そしてそれに夫が気付いた、というように読める。
原文の「She had told him」がいつ言ったのかがはっきりしないからだろう。
もともとは『テヘランでロリータを読む』のなかの引用から興味を持ったのだった。そのあと、村上春樹訳と小川高義訳を読んだ。並べてみる。
「あなたはいつも涼しそうね」デイジーはくりかえした。
あなたを愛してる、彼女はそう言ったのだが、トム・ブキャナンもそれに気づいた。彼は愕然とした。
(アーザル・ナフィーシー『テヘランでロリータを読む』)
「あなたはいつも涼しげね」と彼女は繰り返した。
彼女はついさっきギャツビーに向かって、あなたを愛していると告げていたし、トム・ブキャナンもそれを見て取った。彼はあっけにとられていた。
(村上春樹訳)
「いつだってクールなんだから」
さっきはギャッツビーに好きなのよと言った。トム・ブキャナンも感づくものがあって愕然としたようだ。
(小川高義訳)
村上春樹訳と小川高義訳では、トムがいない間にデイジーが言った言葉にトムが(なぜだか)気付く、となるのだが、やはりちょっと不自然な気がする。新潮文庫の野崎孝訳を以前立ち読みで確認したときの記憶では、村上・小川と同じ感じだったと思う。日本人は野崎孝に引きずられたのかもしれない。