大江健三郎の『治療塔』(河出書房新社『日本文学全集22』所収)を図書館で借りて読む。
ほんとうは図書館で借りてこの本を読むのならば、講談社の『大江健三郎全小説』のほうが新しく、しかも続編の『治療塔惑星』も入っているのだけれど、二段組なので少し読みにくいだろうし、続編を読むかどうかもわからないので河出書房新社の『日本文学全集』にした。
ひさしぶりに大江健三郎を読む。
意外、というべきかとってもおもしろかった。ちゃんとSF小説だった。
しかし懐かしい節回しで歌う歌手のように、いかにも大江健三郎という文体だった。こんな風に書くのは大江健三郎しかいない。
選ばれた人たちが「新しい地球」を目指して旅立っていったのに、十年後になぜか戻ってくる。
彼らは歳を取らずに若返っているように見える。
「新しい地球」にはカマクラのような「治療塔」があり、そこに入ると人間は若返ることができる。
新しい肉体を手に入れても「新しい地球」で生き延びるのは大変なので、彼らは地球に帰還し、新しい肉体で古い地球を生き延びようとする。
簡単にいえばそんなような話で、最後のほうにまとめて理解できるように朔ちゃんと隆伯父の親子が対話する。
《叛乱軍の人たちの原理は、地球での肉体的条件を改造せず、自然なありようの人間のまま「新しい地球」の条件と闘う、そのようにして次の世代も育てる、ということでしたから。》(381頁)
《新しい肉体条件でならば、地球を再建できるかもしれぬという構想が生まれた。そこで再び苦しい宇宙航海をして、古い地球に帰還したんだ。》(382頁)
《つまりこれからのわれわれの活動に、「新しい地球」で「治療塔」を経験をした人間は、つまり「神」の最後の手なおしを受けた人間は、大切なのだ。それこそが新生人類の素材だし、新生を信じうる根拠でもある。われわれはまず「治療塔」を経験した帰還者そのものを、大切に保たなければならない。「治療塔」の秘密が科学によってあきらかにされ、人間の力で同じモデルが作られるまでは、「新しい地球」での成果を純粋に守りぬいて、第二、第三世代へとつないで行くことがなにより必要なんだ。》(383頁)
これまで僕の読んだことのある大江健三郎の小説では、「神」について語りはするけれど登場することはなかったのだが、この小説では「神」がいる。そこに驚いた。
「新しい地球」の「治療塔」で新しい肉体を手に入れた朔ちゃんの子供を妊娠しているリッチャンは、どのような子供を産むことになるのか。
また、「新しい地球」に再び出発した李さんたちはどうなるのか。
そこらへんが気にかかるので続編を読むことにします。
また、大江健三郎をひさびさに読んでおもしろかったので、同じ本に入っている『人生の親戚』も読んでみようかとも思ってます。
ほんとうは図書館で借りてこの本を読むのならば、講談社の『大江健三郎全小説』のほうが新しく、しかも続編の『治療塔惑星』も入っているのだけれど、二段組なので少し読みにくいだろうし、続編を読むかどうかもわからないので河出書房新社の『日本文学全集』にした。
ひさしぶりに大江健三郎を読む。
意外、というべきかとってもおもしろかった。ちゃんとSF小説だった。
しかし懐かしい節回しで歌う歌手のように、いかにも大江健三郎という文体だった。こんな風に書くのは大江健三郎しかいない。
選ばれた人たちが「新しい地球」を目指して旅立っていったのに、十年後になぜか戻ってくる。
彼らは歳を取らずに若返っているように見える。
「新しい地球」にはカマクラのような「治療塔」があり、そこに入ると人間は若返ることができる。
新しい肉体を手に入れても「新しい地球」で生き延びるのは大変なので、彼らは地球に帰還し、新しい肉体で古い地球を生き延びようとする。
簡単にいえばそんなような話で、最後のほうにまとめて理解できるように朔ちゃんと隆伯父の親子が対話する。
《叛乱軍の人たちの原理は、地球での肉体的条件を改造せず、自然なありようの人間のまま「新しい地球」の条件と闘う、そのようにして次の世代も育てる、ということでしたから。》(381頁)
《新しい肉体条件でならば、地球を再建できるかもしれぬという構想が生まれた。そこで再び苦しい宇宙航海をして、古い地球に帰還したんだ。》(382頁)
《つまりこれからのわれわれの活動に、「新しい地球」で「治療塔」を経験をした人間は、つまり「神」の最後の手なおしを受けた人間は、大切なのだ。それこそが新生人類の素材だし、新生を信じうる根拠でもある。われわれはまず「治療塔」を経験した帰還者そのものを、大切に保たなければならない。「治療塔」の秘密が科学によってあきらかにされ、人間の力で同じモデルが作られるまでは、「新しい地球」での成果を純粋に守りぬいて、第二、第三世代へとつないで行くことがなにより必要なんだ。》(383頁)
これまで僕の読んだことのある大江健三郎の小説では、「神」について語りはするけれど登場することはなかったのだが、この小説では「神」がいる。そこに驚いた。
「新しい地球」の「治療塔」で新しい肉体を手に入れた朔ちゃんの子供を妊娠しているリッチャンは、どのような子供を産むことになるのか。
また、「新しい地球」に再び出発した李さんたちはどうなるのか。
そこらへんが気にかかるので続編を読むことにします。
また、大江健三郎をひさびさに読んでおもしろかったので、同じ本に入っている『人生の親戚』も読んでみようかとも思ってます。