![英雄を謳うまい(村上春樹翻訳ライブラリー)](https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41AWZc+GiDL.jpg)
初期の短篇と詩、それと書評などが収録されている。例によって詩は適当に読む。(いや正確には適当に”読まない”だ。)
短篇小説しか読んでいないのでカーヴァーがどういう考えの人なのかよくわからないところもあったのだけれど、これを読むとどういうふうに創作と向き合った人なのかがわかる。
《まっとうな小説においては、物語の中の行為の意味は、物語の外側にいる人々の人生にまで波及していく。こんなことさえいちいち思い出さなくてはならないのだろうか? もっとも優れた長篇小説なり短篇小説においては、善は善として認識される。》(322頁)
物語の中に実生活とは違う論理や倫理が展開されることが嫌いなようだった。
また、チェーホフとそれからヘミングウェイへの言及が多かったように思う。
チェーホフでは『谷間』『犬を連れた奥さん』『六号室』が好きらしいので、ちょっと読んでみたいと思う。チェーホフを僕はこれまであまり面白いと思ってこなかったのだが、これまであまり面白いと思ってこなかったカーヴァーの作品をとても面白いと思うようになったので、なにか変化があるかもしれない。
そもそも短篇小説というものを長篇小説の出来損ないのように思っていたようにも、あるいは長篇小説を読む時間がないときに読む間に合わせの代用品のように思っていたような気もするのだが、短篇小説はそれ自体が素晴らしいとも最近思う。