海街diary(映画 2015年)

2017-05-16 00:00:18 | 映画・演劇・Video
是枝監督が原作の長編漫画を2時間強にまとめ、その年の各賞を相当数獲得した。新人賞の広瀬すずが同名の浅野すずを演じる。

原作は長く、かなり込み入った家族関係をゆったりとした流れの中で表現するのだが、映画は短いので少しストーリーが唐突に感じられることがある。

umimachi


主要登場人物は四姉妹。つまり谷崎潤一郎の「細雪」と同じだが、「海街diary」の四姉妹は家族構成が複雑だ。父親は同じだが上の三人が生まれた後、父親は別の女性の元に走る。そして母親も子供を捨てていなくなる。4人目の妹は父親と別の女性との子なのだが、その女性も、父親も病気で亡くなり、結局他の三人と同居することになる。

そのあたりの過去の出来事の順序が、なかなか頭に入らないが、実際にはアバウトでもかまわない。一人だけ母親が異なることがわかっていれば何とかなる。

映画のストーリーでは、どうしても姉妹の長女(綾瀬はるか)と四女(広瀬すず)ばかりが目立ってしまう。原作では、四人それぞれの非日常的なストーリーが展開されるのだが、大幅カットになっている。

舞台は鎌倉。まったく、ここを舞台にすればなんでも映画が様になるわけで、感じのいい街である。丘に上がれば美しい海が見え、町は人工的な感じのない伝統の染み付いた街だ。映画人や作家もこの町が大好きだ。材木座海岸から鶴岡八幡宮まで一本道になっていて、鎌倉幕府最後の瞬間も駆け上がる新田・足利連合軍の前に一瞬の間に終わった。

もっとも大船駅のそばも鎌倉市なのだが、一般的には、そこは「鎌倉」とは地元では認められていないようだ。

映画の話から離れてしまったので、ついでに材木座海岸の話だが、江戸の町で「初鰹」というと、この材木座海岸でシーズンで初めて揚がった鰹を早馬で将軍様に届けるのが「初鰹」とされていた。その日から鰹が解禁になり江戸の夏が始まるわけだ。

もっとも、最初に初鰹を口にするのは、将軍様ではなく将軍様の毒見係なのだが。

刑(けい)(綱淵謙錠著)

2017-05-15 00:00:13 | 書評
時代小説。時には時代小説を読むが、吉村昭のように事実を7割にして、残りの部分を作家の想像力や洞察力で補うようなものが好きで、さらにストーリーの外に時代の宿命や個人と世界の対峙のような壮大な背景が見えるとちょうどいい。

本著の作者である綱淵謙錠氏は、中央公論社で編集に携わった後、小説を書き始め、直木賞も受賞されている。編集のあと作家という方は時代小説家には多いパターンと思うが、作家達と接するうちに、歴史に詳しくなったり、「こんなものなら自分でも書ける」と過信するところからすべてが始まるのかもしれない。

kei


本書は、刑(幕末を舞台とした首切り浅右衛門の日常)、怯(択捉事件で無防備のままロシア兵に捕まったサムライのその後)、その他桜田門外の変や維新直後の武士たちの苦悩がつづられた短編集である。作風と思うが、あまり主観を強く入れずに、作者のコトバではなく登場人物に歴史を語らせるという方向である。

あと何作かは読んでみようかなと思っている。

ところで歴史(時代)小説で人気のある時代と言えば、戦国時代と幕末なのだろう。最近になって応仁の乱(室町中期)が人気になっているようだが、鎌倉時代や平安時代、また壬申の乱あたりが好きの人はそういないのではないだろうか。

私見ではあるのだが、現代の日本人の生活や思想や社会階層とかそういうものは、一見では敗戦や明治維新で築かれたと思われているが、実際は古代日本からの社会構造が、応仁の乱によって日本が無政府状態になった時点で、レジュームチェンジになったのだろうと思っている。混沌の中から武将トーナメントで将軍が決まったところから安定的国家とそれを支える思想や文化が生まれたのだろうと思う。

それなので、現代人にとって裏切りや無思想主義が横行する時代には共感がわかない。つまり、書いても売れない。ということなのではないだろうか。本来は古い時代の方が原資料が乏しく作家の腕の見せ所が多いのではないのかとは思うのだが、韓流ドラマ(現実性のない美しい国韓国)みたいになってしまうのかな。

鶴首、ただし花入れ

2017-05-14 00:00:00 | 美術館・博物館・工芸品
鶴首とは花入れの中で首が長い物をいう。どれくらい長いと「鶴」と呼ぶのかは明確ではないが、もともとほとんどの花入れには首があるので、見た感じが「首が長いな」と感じたら「鶴首」に分類していいのではないだろうか。(ビール瓶は首が長いが、あれくらいでは鶴とは呼ばずキリンというのだろうか。)

bizen


確か、鶴首があったはずと押入れを探してみると、果たして備前焼があった。自分で買ったわけではないのではっきりしないが、遺された断片的な手掛かりで推測すると、備前六窯の一つである森宝山窯(もりほうざんがま)で焼かれたものだと思われる。(森宝山とは焼酎のブランドのようだ。森伊蔵と富乃宝山を足して分解すると森宝山と富乃伊蔵になる。)

窯の特徴としては、古備前風のざらざらとした仕上がりと渋い色合いといったところだろうか。

本品は景色はあまり豊かではない。親不孝になるからあまりいいたくないが、購入者は陶器のキズ(景色)を楽しむのが備前、ということを理解していなかったような気がする。

toin


陶印にはあまり特徴がみられず、ネットで調べても作家まではわからなかった。わかるとがっかりすることが多いので深く探索しない。どうも最近の備前焼は定価と取引価格が恐ろしく異なるようで基本的には転売するようなものではなく自家用として視覚や触覚で楽しむべきもののようだ。

作意を探せ

2017-05-13 00:00:22 | しょうぎ
詰将棋を作っていながら愚問なのだが、解答者はどうやって読むのだろう。

初手からあらゆる手を検討し、一つずつ間違った筋を消していくのだろうか。あるいは、直感で詰みそうな筋をいくつか考えるのだろうか。あるいは、盤面に理解不能な奇妙な配置をみつけて、それを手がかりにして組み立てるのだろうか。

あるいはそれらを組み合わせて、まず直感で3種類読んで、そのあと配置推理法でそれでもだめなら初手からしらみつぶしということになるのだろうか。

AIなら当然ながら最初から全王手を探し始めるのだろう。

以前、羽生さんがネット上で喋っていたのだが、「一番遠くにある駒の意味を考える」ということだそうだ。確かに、そうかもしれない。私的に言うと、もっといい方法は、ヒントを精読することかもしれない。

sakui


ということで最近読んだ棋書が「作意を探せ」。作意より作為の方がより詰将棋的かもしれない。初級以上中級以下という感じだが、気になることは、今はなき「週刊将棋編」となっているものの原典のすべてはスポニチ掲載の故・大山名人作であるとのこと。意味がよくわからない。


さて、4月29日出題作の解答。長いので分割する。

0513kA


0513kk1


まず、初手から銀と飛車を捨てる。そして龍を所定の位置に移動する。早い話が、序の4手あるいは6手は本題に関係ないのでなくてもいいのだが、最初に大技を出すのはベートーベンの第5番「運命」方式。

0513kB


0513kk2


次の12手は香と歩であまり損をしないように右辺に送る。途中で香を取りもどすが、角が利き始めるので4三とか後の2五には香を打てない。2手目に動いた角が12手目に動いて守備にも使う。

0513kk3


そして▲4二香からついに▲2一歩成でついに宗桂作に近づき▲2四香と第四楽章に突入。ただし、宗桂作と違うのは3一に隙間があって妙なことをすると打歩詰めになる。2三への合駒をすべて確認する必要がある。歩合と桂合が利くと詰まないのだが、ルール上、打てないことになっている。

そして例の銀合15手詰で終る。

0513kC


0513kk4


なお、本図では3三に成桂を配した必然性があるのだが、不自然として3三とに変えた場合、玉型2三桂合を選択できるので、その対策が必要なので、参考図を掲載しておく。

動く将棋盤は、こちら


本日の問題はずっと易しい。途中である図形が3回登場する。

0513mm


最近、塩ヒントが多いので、おいしいにがりを混ぜると、羽生三冠(現在)が一番離れた駒の意味を考えるといいと言っているので、3四の飛は3九にあってもいい、と書いておく。

わかったと思われた方は、コメント欄に最終手と総手数を記していただければ、正誤判断します。

アロエの花

2017-05-12 00:00:00 | 市民A
アロエを何本か鉢に植えているのだが、そのうち一株から一本の長い茎が伸びてきて意味がわからなかったのだが、花のつぼみがたくさん並んでいるのが確認された。

aloe


ということは、開花ということになる。

何か不吉な感じがあるのだが、きれいな花が咲いたら嬉しいな。

無人島に生きる十六人(須川邦彦著)

2017-05-11 00:00:51 | 書評
いわゆる漂流記である。明治36年といえば1903年。100年以上前に実際に起きた海難事故である。その点が、十五少年漂流記とは異なる。

16nin


ある意味ジュール・ベルヌという想像力の塊の作家の作品と現実の船長による現実の無人島生活を比較するのはよくないのだろうが、冷静に考えれば、少年たちの物語の中に散りばめられた仲間割れや和解のストーリーは、現実の漂流者たちの中ではありえないのだろう。仲間割れなんかしていられる場合じゃないわけだ。

しかし、16人が生き延びるために何頭ものアオウミガメが食料になったり、動物油になったり、甲羅がバケツになったり卵を食べられたり、最後は薪替わりの燃料になったり、身代わりになったようだ。

そういう意味で、アホウドリはじめ多くの動物が減少したり絶滅した状況では、簡単に島に流れ着いて生き延びるのも楽じゃないようだ。太平洋ではおなじみのマヒマヒ(シイラ)を食べた話は書かれていないので、日本人の口には合わなかったのだろうか(私は好きだが)


ところで、「無人島に住むなら持って行きたい本」というのがあって、アンデルセンの「即興詩人」がそういわれている。実際、読んだのだが、もう一回読もうとまでは思わなかった。ただ、長いので読み切るには時間が必要だ。

むしろ、持っていくなら『漂流記』がいいのではないだろうか。何しろ、漂流記が成立するということこそ、生還の証なのだが。なお、『平家物語』には鬼界島に流されて、一人だけ許されず流されっぱなしになった僧『俊寛』の悲劇が書かれているのだが、帰りたくないのに無理やり本国送還になる高跳び中の女詐欺師もいるわけだ。

アドレナリンドライブ(映画 1999年)

2017-05-10 00:00:11 | 映画・演劇・Video
ごく普通の生活を送っていた若者男女(車関係のセールスマンと病院看護師)がたまたま暴力団事務所のガス爆発の現場で出くわせ、その際、暴力団の資金2億円強を札束に血の付いたまま持ち逃げしてしまう。男女を安藤政信と石田ひかりが演じる。

adrive


最初は事務所の全員が死亡したといわれていたが、ひとりの構成員が生き残っていた。そして、ことの成り行き上、2億を取り戻すために子分を集めて追跡を始める。一方、逃げる二人は血の付いた札束をコインランドリーで洗濯する。本物のマネーロンダリングだ。半分ずつカバンにいれて逃走を開始。

おそらく製作費のない映画なのだろうが、結構荒っぽい展開になる。何しろ、命が狙いではなくカネが目当てなのだが、逃げる方も「命よりおカネが好き」というのだから、なんだか割り切れない。しかも、子分が親分を出し抜いて2億を独り占めしようとしたり、構成員は病院を抜け出すため、ナース長に賄賂3百万円を要求される。

しかも、カバンを盗もうとする紳士まで突発的に登場。

パンパン撃ち合うような展開にはならず、二人が止まっていたホテルの部屋の金庫が運び出されるのだが、暗証番号が明らかになる前に、またも車ごと大爆発。

しかし、実際には札束は別のところに隠されていて、この二人は無事に大金を手に入れることができ、おそらくは結婚するような展開なのだ。

なんとなく、何が正義なのかよくわからない話だし、二人が結婚するといっても、そもそも山分けしたところから始まった仲なのだから、折半した相手の取り分1億が目当てなのかもしれない。

なお、構成員役を演じた松重豊は本作で2度の爆発被害を受け、その後も苦節を続けたが、ついに最近になって『孤独のグルメ』でテレビ初出演に至った。

宅急便成功の歴史を忘れないことによる失敗

2017-05-09 00:00:33 | 企業抗争
クロネコヤマトが値上げになる。少し前に発表になった残業代未払いとかドライバーの過重労働とか解消するとそうなるようだが、直接原因がAmazonとすると、Amazonと無理な契約をした結果、他のお客様に値上げを実行するということになり、いささか割り切れない。

法人1000社と値上げ交渉といっても、大部分は通告のようなものなのだろう。

もう一つの原因が再配達ということで、1つの荷物を何度も運ぶという不合理な仕組みが採算を悪くし、また労働過重を招いている。

実は、昨年の末に羽田クロノゲートというヤマト運輸の最新基地を見学させてもらったおり、あまり書かなかったのだが、見学者から会社には2種類の質問があった。

一つ目は、「長時間労働が行われていないか」という点で、「まったくない」との回答だった。そんなはずはないだろうとは思ったが、外部からはよくわからない。もう一つは、サービス内容について、「サービスをもっと充実してほしい」ということで、一般配送とクール便では夏は荷物が熱くなるので、全部冷やしてほしいということを言い張る女性がいた。無茶苦茶なこと言うなあと思ったが、そういう人もいるのだろう。

ところで二十年ほど前に小倉昌男元社長の話を聞いたことがあるのだが、宅急便を始めたときの状況は、最大顧客だった三越から切られて会社存続が困難になった時、米国視察に行ってフェデックスの運送に触発されたということと、当時の日本では個人が荷物を運ぶ場合、鉄道駅まで自分で持って行き、目的地近くの鉄道駅に荷物が届き、あとは個人で取りに行かなければならないという悲惨な状況だったそうで、誰しも困るところに商売が転がっていたということだそうだ。


そしてヤマト運輸は宅急便というビジネスモデルを支えるためにネコシステムというオリジナルシステムを作って、業界のトップランナーになったわけだ。

ところが、その後、モータリゼーションが加速し、さらに運ぶ荷物が少量多品種に変わっていく。さらにAmazonはじめネット通販の比率が高まり運送量が増大し、さらに時間も多様化する。

私も3年ほど地方都市にいたのだが、そもそも昼間は家にいないし、月の半分は小刻みに出張していると、帰宅すると大手三社からの不在配達票が10枚単位でポストに入っていた。早い話が、「荷物が預かっているが、いつ、どうしたらいいのか」という連絡があれば、たぶん自分で取りに行くだろう。あるいはコンビニとか職場他の転送先を指定するとか。

おそらく、システムが外部に対してはあまり開かれていないため、顧客からみて重要なはずの二つの要素である「届けてほしい時に届ける」「なるべく早く届ける」のうち、後者を優先しているように思える。(といっても前者だけだと、ヤマトの倉庫が滞貨でパンクするのだろうが)

それに値上げをしても急にドライバーが増えるわけでもないし、システムを考えるべき事態だとは思う。あるいは、ヤマト自体がAmazonや楽天に匹敵するようなネットショップを始めればそもそも格安法人料金体系など作る必要はなくなるはずだ。

左脳型指組みと右脳型指組み

2017-05-08 00:00:00 | 市民A
左脳型と右脳型とはよく使われる言い方で、左脳側は数理演算が特異で論理による思考が得意。半面、物事を分析的に考えようとし過ぎて、論理の延長にこだわり、いつも一から考えようとする性質がある。例の第69代東京都知事が市場の豊洲決定の経緯から進めないと先のことが考えられないといっていることが本心なら、そういう考え方があてはまる。また朝鮮半島の問題を、もう一回武力対峙してからでないと次の策が立てられないといっている第45代アメリカ合衆国大統領もそういう感じがある。

一方、右脳型はそこまでギリギリ考えることはなく、起きそうもないことは考えないし、そもそも考えてもわからないことにはこだわらない。迷路問題を出口から解くような考え方で、それも一理ある。

一説では日本人は男性では左脳対右脳は5:5で、女性では8:2といわれる。女性は勘がいいと言われるが、そうではなく、思いのほか深く考える力があるのかもしれない。一方で、未来のことには不確実性があるので、それに対応するためには、結果から逆算するような右脳型の方が優れていることもある。

また一説では、左脳型と右脳型の見分け方として、「アーメン法」というのがある。両手でアーメンをしたときの指の組み方で、右の親指が上の人は左脳型で左の親指が上の人は右脳型というもの。実はかなり合っているように思っている。というのも、自分もそれなりの有段者なのだが、将棋関係者の宴会などで確認すると、100%が右脳型の組み方なのだ。一方、普通の宴会で確認すると、ほぼ半々という感じだ。将棋のように様々な角度で読まないといけない思考には、一直線の読みではロスが多すぎる(相手が何を指すかもわからないのに、そんなに深くは読めない。しかしそれがプロより強いコンピューターの出現になったともいえる。)

ということで指の組み方で、脳の使い方がわかるという前提で、現在の朝鮮半島問題登場人物ほかをネット上の画像で調べてみた。

しかし、指を組むのが好きな政治家もいるが、基本的に指を組まない政治家もいるのでかなり調べるのに時間がかかった。(右前に組んだり左前に組んだりする人はいないと思う。いつもと違うとかなり違和感を感じるものだ)

31


調べてみたのは、米国45代大統領、ロシア共和国第2代及び第4代大統領、中華人民共和国第5代最高指導者、北朝鮮第4代最高指導者、日本国第96代首相と念のため第69代東京都知事の6人。

32


まず、T氏とP氏とA氏は明瞭なのだが、T氏だけが左脳派である。しかし、中国のS氏の画像はなかなか明瞭なものはなかったのだが、最近の夕食会の時の写真を拡大してみると右脳のようにみえる。また北朝鮮のK氏と東京都のK氏は詳しくみると右脳派のようにみえる。

本来は思考方法の違う人とはなかなか意思疎通がスムーズにいかない(何を考えているのか、言外の意味を伝えにくい。)だからこそ危険なわけだ。

そして第96代都知事の方だが、てっきり左脳派と思っていたのだが、画像を注意深く観察すると、どうも右脳派のようだ。となると市場問題も最初から結論があったのに、もう一度原点に帰ってなど悠長なことを言っているだけなのだろうか。

そういうのは、江戸時代以降「かまとと」と呼ばれていたのだが、ついに現代では死語になったようだ。かまぼこの原料が魚(とと)であることを知らんぷりする女性のことを指したようだ。

平成の書(現物)

2017-05-07 00:00:43 | 美術館・博物館・工芸品
元号を公用している国は日本だけといわれる。しかし、それは大きな間違いなのだ。

西暦というのは欧州人にとっては立派な歴史をもつ数字であってヨーロッパの元号であるといって間違いない。なにしろ、1年を365日とし4年に一回閏年があるが100年に一回は閏年がなく、しかし400年に一回は閏年になる、というルール自体は科学的なのだが、紀元1年はキリストが生まれた年ということになっているのだが、そこにやや正確さが欠けるし、なにしろ紀元1年の前の年はゼロ年ではなく紀元前1年。つまり+1年の1年前は紀元マイナス1年=-1年。1年前は、1-(-1)=2となってしまう。しかも生まれたのは12月25日なのだから、生まれる前から紀元1年なのか、生まれる前の年はまだ生まれていないのだから数字の書きようがない。

とはいえ、デファクトスタンダードの代表事例がこの西暦なのだからしようがない。となると昭和とか平成とか何の意味があるのだろうということになる。西暦よりも欠点が多いのは間違いない。国家的ファッションと割り切ればいいのだが、今でも公文書には元号が使われる。

heisei


さて、平成が始まったのは無論のこと平成元年1月8日。当時の官房長官の小渕恵三氏が昭和64年1月7日に、「あしたから、こうなります」と掲げた。後に総理大臣になった小渕氏を紹介する写真は、いつもこの年号発表時の写真だ。

そして、この「平成」という字が書かれた紙なのだが、現物は竹橋にある国立公文書館に展示中である。時節柄だろう。公文書館の出口に近い場所である。実際には、感動は少ない。文字を書いた人は辞令専門官の河東さんという方で、発表20分前に鉛筆書きのメモがきて、大至急書いたそうだ。簡単な文字ほど難易度が高いのだろう。既にご退官され埼玉で書道教室開業とのこと。次は、武田早雲氏とか、清水寺の大僧正あたりに頼んだらどうだろうか。どちらも事前に頼むと口が軽そうなのでまずいかもしれない。

この「平成の書」だが、実は公文書館にあるには曰くがある。本来、森友交渉録のような重要書類が紛失し、習字二文字が残っているというのは奇妙なのだが、やはり数奇な物語があった。この紙は、発表後、当時の総理大臣であった竹下登氏が所有することになったそうだ。まあ、記念の品みたいなものだろうか。そして数十年経ち竹下家の秘蔵の品が世に出ることになったのが、例の番組に関係がある。「開運何でも鑑定団(テレ東)」。持ち込んだのが竹下氏の孫。つまりタレントのDAIGOさんだった。

ところが、番組の方では、「鑑定不能」ということになる。参考事例はないが、何しろ有名である。5万円から500万円の間?その結果、DAIGOさんは、この書を「国立公文書館」に寄贈することにした、ということだそうだ。DAIGO語でいうと、HSはKFなのでKKに寄贈したということだ。


ところで、「平成」を発表した1989年に官房長官だった小渕氏だが、総理大臣になったのは約10年も後の事だった。平成元年の時の総理大臣は竹下登氏。その後、宇野、海部、宮沢、細川、羽田、村山、橋本と続きその後が小渕、森、小泉となった。小渕→森は任期中に亡くなった小渕氏が最期に「後は青木幹事長に任せる」と言ったとされ、そのあと自民党5人組の密室会議が行われ、その中の一人の森氏が、総理大臣に就任した。

実際、総理大臣はこの後も次々に変わるので受験生泣かせである。宇野氏以降について受験生は「鵜飼い見や細ハム」「端of森(の)鯉」と覚えるらしい。小渕氏=ofだそうだ。

後手番連勝の名人戦

2017-05-06 00:00:00 | しょうぎ
名人戦七番勝負は後手番三連勝ということで稲葉八段2勝、佐藤名人1勝となった。勝星を見れば1勝差に過ぎないが、残り4番と考えれば、佐藤名人は3勝1敗が必要ということで厳しいと言える。名人以外のタイトルは全部藤井新四段が独占しそうな勢いなので、他の棋士がタイトルを取れるのは名人戦だけ、それも猶予は5年間ということになるかもしれないので、めったなことでは貴重なタイトルは譲れないだろう。

もっとも藤井四段が6冠を取ってしまうと、名人戦に挑戦できないのはおかしい、という世論が湧きあがってきて、飛び級でA級入りということになるかもしれない。

冗談(とも言えないが)はさておき、名人戦の3局だが、いずれも稲葉八段が受けに回っているように思える。大半のプロは攻め将棋だけに、受け半分攻め半分の棋風の将棋はプロでは受け将棋と見られるらしい。

一方、コンピューターと人間の大きな違いは、攻めに関してはそれほど力の差が大きいとは思えないがコンピューターは圧倒的に受けが強いように感じる。ギリギリの速度計算が人間をはるかに凌ぐことに起因するのだろう。

ところで、AIは最近、詰将棋創作にも進出しているようだが、現在のところ感動的な作品を作り出しているようには思えないのだが、この「感動的」というのが主観であって、解いたり創ったりする人の感性がそれぞれ異なるため、AIのゴールがどこにあるのかもよくわからない。

hissi


さらに、AIから遠そうなのが必死問題。これはAIの使い方がポイントなのだろう。もっとも厳密なルールがあるのかどうかもよくわからないが創るにも解くにも詰将棋より難しい。もっともチェスでいうプロブレムは、必死問題に近いわけだが、かなりたくさんの問題があり、何冊かは解いてみた。もっとも35手詰めみたいなのはないはず。

最近、解けうれ発行の「必死コンクール集」を解いたのだが、手数が長くなると難しい。詰将棋の5手詰めと5手必死を比べると、必死の方がかなり難易度が高い。


さて、4月22日出題作の解答。

0506k


0506kk


馬と金の利き(斜め後ろ方面)の差を強調した問題で、銀を二枚捨てることになる。

動く将棋盤はこちら


今週の出題。

0428m


飛車を縦と横に利かす、と言うと当たり前の話なのだが、少し意味が違うのだが解いた時にわかるはず(解いた時に判るヒントって・・)

わかったと思われた方はコメント欄に、最終手と総手数とご意見をいただければ、正誤判定します。

溺レる(川上弘美著)

2017-05-05 00:00:29 | 書評
小説家川上弘美が好きなわけではない。逆かもしれない。また彼女の小説の登場人物が好きなわけじゃない。むしろ逆だ。作家も登場人物も嫌いなタイプであるのに、なぜか完成した小説には惹きつけられるところがある。

0422k



本書『溺レる』は、人を食ったような題名だし、八作の短編小説集である。だらしない男とだらしない女の愛憎を描き、首を絞めたり海に飛び込んだり、地方都市に逃げ込んだり。

そして多くの場合、心中したりする。そして成功したり失敗したり。

そういえば、最近、新聞で心中記事をみないが、もう絶滅したのだろうか。心中を美化するほど古典主義者ではないが、その行為が滅びてしまうと、太宰治に付き合った女性がかわいそうだ。

さて、川上弘美と似て非なる作家に金井美恵子がいて、犬猿の仲以上の鮫鰐の仲(こうがくのなか:サメとワニの仲:単語を知らなかった人は、今、覚えよう)なのだが、彼女だったら短編一作を基にして大河小説を書くかもしれない。全体の型式にこだわる川上と細部にこだわる金井。

一つずつの短編にはかなり奥の深いテーマがたくさん詰まっているのだが、なんとなく小説のあらすじを書いているような書き飛ばし方式だ。そのあたりが、小説の構造は好きだが、登場人物に感情を移入しづらいところなのだろうか。

都市鉱山、いや都市金山の話(2)

2017-05-04 00:00:32 | 市民A
2020年の東京五輪のメダルを都市鉱山からの再生金属から使おうという運動がある。都知事と取り巻きが主導しているのだが、多くの人は分かっているのに報道しないことがある。

それは、「金メダルは金ではないこと」なのだ。

では、金メダルは何かというと、銀に金メッキなのだ。では銀メダルはというと、これは銀製。銅メダルは銅に一部(5%程度)亜鉛を混ぜている。

だから、都市鉱山から金を集めるといっても、正確には金メッキ用の金を集めようということ。運動に参加している朴訥な市民は500から600gの金メダルが全部金だと思っているようだが、それだとメダル1枚が240万円にもなってしまう。

そして、実際に東京五輪で必要な金は約9.6Kg、銀が1,210Kg、銅が700Kgらしい。これはロンドン五輪より推定らしい。一方で、メダルの重さは、メダルの大きさに影響されるわけで、ロンドンのメダルは500gだったがリオでは600gだったそうだ。体操の内村選手は、リオの金メダルについて、「ロンドンより重い」と言っているが、重さが1.2倍に増えている。これは直径を大きくしたことによる。

そして、9.6Kgの金だが、大勢の人件費で携帯電話をかき集める前に計算しておくと、使われる金の時価は4,000万円程度にしかならない。直径を小さくすれば3000万円かもしれない。回収する人件費だけでも経費倒れで、大赤字になるだろう。

kin3


ところで、五輪では1位が金、2位が銀、3位が銅なのだが、以前勤めていた会社のゴルフコンペで3位になった時の賞品が、金だった。では1位はというと金。要するに優勝者が10gで3位は5gだった。バブリーだったなあと、いまさら詠嘆。

都市鉱山、いや都市金山の話(1)

2017-05-03 00:00:01 | 市民A
福岡市で金塊購入費3億8000万円が強奪された事件があったのだが、報道によると奪われた札束の重さが38キログラムということだった。札束の場合、1キログラムが1000万円ということになる。

一方、1キログラムの金塊は、およそ500万円弱(消費税込)なので、1万円札は重量当たりでは金の2倍の価値があるということになる。通貨の面目を保ったということだろうか。

ところで、金は希少価値がある金属で、今までに採掘された量は18万トン程度といわれている。その中には都市鉱山といわれ古い携帯電話などに使われたままになっている金は7千トンあるらしい。しかも金鉱石の金含有量は1トンあたり6gなのに携帯電話1トンからは300gも取り出せるそうだ。

ということで、携帯電話から金塊を作る順番を押さえてみる。(田中貴金属資料などより)

gold1


1. 王水溶解と還元
王水というのは硝酸1と塩酸3を混ぜた液体で、これに金を使った部品を入れるとプラスティックは溶けず、金だけが溶ける。そして金を溶かした王水を分離し、そこに酸化しやすい還元剤を投入すると、粉末状の金が分離される。


gold2


2. 濾過と乾燥、精製
溶液から金粉を濾過し分離。水分があり茶色の状態。これを洗浄する。
そうすると、サラサラな金粉になる。カレー粉みたいな色になる。


gold3


3. ささぶき加工と鋳造
聞きなれない言葉だが、カレー粉のような金粉を1200度で溶解。そして冷却すると米粒の半分ぐらいの粒子になる。この状態をささぶき(笹吹き)という。
さらに1000度の状態で型に入れ、地金が完成。検査の後、刻印を押して完成。


ところで、都市鉱山を活用して東京五輪のメダルを作ろうという怪しいプロジェクトがあるのだが、次稿へ。

アントキノイノチ(2011年 映画)

2017-05-02 00:00:34 | 映画・演劇・Video
2009年に出版されたさだまさしの同名小説が原作。2年後の2011年に映画化される。その映画公開直前に映画より2年前のシチュエーションのテレビドラマが放送される。やや意味不明だ。

岡田将生と榮倉奈々がW主演で、それぞれ心に傷を負った過去を持つ人物を演じる。クーパーズという遺品整理会社で働くことになる。

antoki


実は、先日、実家の一つをロープライスで売却したのだが、家を解体する際、残った物品を処分してもらった。解体業者の下請けで遺品整理会社が使われた(あるいは解体業者自身が行ったかもしれない)のだが、家で孤独死したわけでもないので事前に自分で片付けていたのだが、親が捨てずに残していた雑多な物により、親の考えていたことがうっすらとわかることもあった。といっても映画に登場する遺品整理の場面は、死体に沸いたウジとか幼児が殺されて親が刑務所に行った後とか、ゴミ屋敷とか、かなり悲惨だ。

たぶん、給料は中の上なのだろうが、社員の定着率は悪いのだろうな、と想像がつく。

そして、二人とも心の傷を徐々に癒していくのだが、残念ながら二人のうち一人がなくなってしまう。

通俗的に言うとメンヘラ映画ということになるのだが、メンタルヘルスマネジメント1級という資格を取得している身から考えると、心の傷をいやすために過去の記憶をもう一度蘇らせ、それを再分析して、「よく考えれば、あなたが悩む必要なんかなかったのですよ」という結論を導き出すという治療方法は、一時、大流行したのだが、その過去のつらい思い出が脳の中に復元された結果、最悪のケースが多発することになり、今では行われない。病状が悪化して亡くなった人のことは誰も口に出さないことになっているようだ。

そもそも精神科医って難しすぎる分野なのに報われない。

まず、自分は病気ではないと思っているのに無理やり連れてこられる患者が多い。普通の病気と逆だ。次に、眠れないとか胃が痛いとか言ってくる患者にしても、脳腫瘍とか胃潰瘍かもしれないわけで、通常の医学的検討を行ったうえ、他に原因がなければ心の病気というわけで、判断が難しい。さらに潜在的患者数に対して医師が少ないので、一人当たりの診察時間も短いし、短い時間の中では、何が異常かもわからない。言葉巧みに、嘘を並べる人だっている。しかも会社を休職している患者は、1年間等の規定の期間を過ぎると復職できずにタイムアップでクビになるので、「なんとか治ったことにしてほしい」と必死に頼まれたりする。精神科医自身がよく病気にならないものだ。

最近の事件でも、谷秘書官とか中川議員とか3億8千万円を強奪された会社員とかメンタルが心配である。