ワインと国際政治

2007-07-06 00:00:54 | 市民A
69485be6.jpg先週、西川恵さんの講演を聴く。たまたま、新潮新書で上梓された「ワインと国際政治」という著書の関連講演でもある。

最初に、恵さんといっても男性である。1947年生まれと言えば今年60歳。現職は毎日新聞専門編集委員。1971年に東京外語大学から毎日新聞に入社してから、テヘラン・パリ・ローマ支局を経て、2001年まで外信部勤務。そのパリ支局で、グルメの味を覚えてしまった。そして、いつしかフランス政府が開く晩餐会のメニューが、招待客によって微妙に異なることを発見。そこからエリゼ宮の奥深くへ取材を続けるという特技を見つけたそうだ。

講演では、パリの饗宴について、そしてフランスと米国の差について、そして最後に、晩餐会を通してみる日本の皇室外交についての分析、という展開であった。

まず、パリエルゼ宮の厨房だが、料理人は22人だそうだ。そして彼らを代表する料理長だが、ドゴール時代から数えて僅か歴代3人ということだそうだ。要するに味が変わらないことを重要に考えているのだろう。そして、問題の大統領主催の饗宴で供される料理のメニューだが、決定にいたる第一段階では、執事長が素案を作るそうだ。基準は三段階。要は、松竹梅だ。国の格と時の大統領の個人的親しさで選択するそうだ。

次に、この執事長の提案メニューに対して、最終修正をはかるのが大統領自らということになる。料理の内容はともかく、もっとも重要なのはワインである。普通は、乾杯用のスパークリングワイン、そして白ワインに続き、メインの赤ワインとなる。要するに、原案より、格下げしたり格上げしたり、すべて大統領の一存にかかっている。

69485be6.jpgこのあたりの微妙な駆け引きがフランス外交の機尾ということかもしれない。まさにパリはEUの交差点である。

ところがシラク大統領の時は、大統領だけではなく大統領夫人であるベルナイト夫人が厨房に口を突っ込んであれこれ干渉していたそうである。そして、今後、もっとも心配なのは、新大統領のサルコジだが、酒を飲まないそうである。したがってワインのチョイスなんてやりようもないのだろう。(おおた注:もっとも、サルコジ夫人のことはよく知らないのだが、お互いに家庭を捨て、愛人を作り別居していたこともある。たぶん、ワインのチョイスは夫人の仕事になるのかもしれない。)


次に米国ホワイトハウスの厨房だが、こちらは元々、大統領夫人が取り仕切ることになっているそうだ(まるで徳川時代の大奥みたいだ)。こちらも規模はエリゼ宮と同程度らしいが、料理長はよく替わるそうだ。この40年間で7人ということ。今の料理長は、ブッシュ二期目の時に前任者をクビにして、内部昇格させたらしいが、フィリピンからの移民でさらに女性ということだそうだ。

そして、その前の料理人はクリントン時代にヒラリー自身が市中のレストランからスカウトしてきたそうで、得意は魚介類を中心としたカントリー料理だったそうだ。そして、その前は権威ある正統派フランス料理の方。

すると、個人的に思うのは、米国男性にとって、次の大統領選の最大の問題は、ヒラリーが大統領になった場合、誰がホワイトハウスの厨房を牛耳るか、ということなのかもしれない。ビルが大統領の時は、ヒラリーだったわけだから、ヒラリーが大統領になれば、晩餐会のメニュー選びは、ビルの仕事になるのかもしれないが、鱈の白子や手巻き寿司丸かじりなどが好みじゃないか、とちょっと危惧。


そして、西川氏の話題は大きく変換し、日本の皇室外交について、海外訪問の時に受ける各国別の饗応について。もちろん、天皇は国民の象徴ではあるが、政治的な意味はないものとされている。が、海外に出れば、そういうわけにはいかない。日本人代表として「政治の話を避けながら」外交してこなければならない。

先日(5月24、25、26日)、エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国を順に訪問した時も、多大な歓迎を受けたそうだ。しかし、西川さんの意見では、政治性がないと言っても十分に政治的な訪問だった、ということになる。まず、この訪問に先立ち、一年ほどの間に、この三国を訪問する議員、大臣が多かった。つまり、唐突間を消すために、地慣らしをしていた。また、来年1月にはリトアニアに日本大使館を設立するようだ。

それは、一つは中国の積極外交に対抗するためであるし、かたや対ロ的には、領土問題の一環である。バルト三国もロシアに対する領土問題を抱えている。ロシアに対して、右と左とで、同時にゆさぶろうというのだろう。


最後に、天皇・皇后両陛下の、5月24日エストニア訪問の時の昼食会のメニューと26日リトアニア訪問の際の昼食メニューが判明したので紹介する。

エストニアでの昼食会 07年5月24日
<料理>
スズキのグリルと蟹を練りこんだパスタ、香草のピュレとサラダ
子牛のサーロイン、アスパラガスとビート添え、キノコソースで
ルバーブの香草と苺
ババロワとマスカルポーネのアイスクリーム
<飲物>
ムスカデ セーヴル・エ・メーヌ・シュルリー 05年(フランス)白
イランシー 05年(フランス)赤
ポルザマール・クルドネ 92年 (エストニア)デザート・ワイン

リトアニアでの昼食会
<料理>
オヒョウ、鱒、カワカマスのスフレ、白アスパラとルッコラサラダ添え
ローストダック、野菜とポテト、アーモンドケーキ添え
オレンジとコワントロー・リキュールのパフェ、苺とホワイトチョコレートソース
<飲物>
カルドナ ユメ・テーレ キエティ 06年 (イタリア)白
ラロシュ ヴィニャ・プント・アルト ピノノワール 05年(チリ)赤

ということだそうだ。私のいつものお昼と同じレベルだ・・


blog改善のため、再チャレンジ始めました。

↓GOODなブログと思われたら、プリーズ・クリック




↓BADなブログと思われたら、プリーズ・クリック



最新の画像もっと見る

コメントを投稿