本所達磨横町の左官の長兵衛は腕はいいが、博打にはまってしまう。家は貧乏で借金がかさみ、夫婦喧嘩が絶えない。娘のお久がみかねて、吉原の佐野槌(売春宿)に自分の身を売って急場をしのぎたいと駆け込む。
佐野槌からお久が来ていると知らされた長兵衛は大慌てで佐野槌へ行くが、佐野槌の主人は、長兵衛を叱り飛ばすも、借金の額を聞くと、50両という大金。現在価値は200万円ぐらいかな。
見かねた主人は、50両を貸す代わりに、分割払いでも返し続けてくれればいいが、払えなくなったら客を取らせる。体が細い娘だから、そうなったらここで死ぬだろうと脅かすのだが、他に方法のない長兵衛は納得して長屋に戻っていくのだが・・・
帰り道で、今までの非道をあらため一日も早く50両を返そうと決心していたのだが、途中の本所吾妻橋で若い男が身投げしようとしていた。
長兵衛がわけを聞くと文七という男で、得意先の集金の帰り、怪しげな男に突き当たられ、懐を確かめたところ、五十両を奪われたという。
長兵衛は思い留まらせようとするが、文七はどうしても死ぬと言いはる。ついに、長兵衛 「どうしても五十両なきゃ死ぬってぇのか・・・それならこの財布を持っていけ!」と、自分が五十両を持っているいきさつを話す。
究極の選択だ。見知らぬ男の命と、娘の貞操。
押し問答の末、長兵衛は文七に財布を投げつけそのまま走り去る。
ここで場面は文七の方に移る。近江屋に戻った文七を待っていたのは主人や番頭。得意先で集金したあと、好きな囲碁を打たせてもらったあと、50両を座布団の下に置き忘れて帰ったと連絡がきていた。
ということで近江屋には100両あるわけで、しかも文七は相手(長兵衛)の名も知らない、ということで、長兵衛に聞いた50両の曰くについて、検討をはじめ、廓の名前に行き着く。
そして、佐野槌へ行って顛末を聞いたあと、長兵衛の家に近江屋一同が向かうわけだ。
長兵衛の家では昨夜から一睡もせずに夫婦喧嘩が続いていて、女房の追求にもかかわらず、渡した相手の商家すらわからない。朝になってすべて夢だったという「夢オチ」ではないわけだ。眠ってないから。
そこに近江屋一同が登場する。50両を返しに来たわけだ。善意であるのだが、江戸時代は10両盗むと、首チョンなので返すか奉行所に届けるしかないはずだ。
ところが、長兵衛は「一度渡した金はうけとらねえ」と啖呵を切るのだが、そもそも相手の勘違いから発生したわけなので、「とはいうものの、やはり受け取ろう」ということになる。
さらに、近江屋は、上等な酒を用意した上で、すばらしい肴を用意したといって、駕籠が登場。なかからお久が現れる。
近江屋が50両を支払い、身請けしてきたという。さらにこれから文七が独立して店を開くからと、お久と文七の縁談に発展する。その後、文七は元結屋を始め、丈夫で切れることのない元結を販売することになる。
この落語だが、吉原を題材をしているのだが、今後生き残るのだろうか。親の生活が苦しいからと娘が風俗で働くような筋を高座で話すのは厳しいかもしれない。
さらに元結というのは髪をまとめて元の方で縛る紙紐のことで、ちょんまげ時代には必需品だったが、現代ではどうなのかな。相撲部屋では必需品だが。
落語では、博打に負けた話はよくあるが、博打に勝って幸せになったような話は知らない。博打で負けた通訳を題材に翻案できればいいのだが、24億円を貸してくれる気前のいい人物はいるのだろうか。
それと、集金したあと、客先で囲碁を打つとは豪勢な職業(べっこう屋)だ。私も20代の時は仕事で数十億円の手形を運んでいた時期があった。買った方が払いに行くことになっていた。原油タンカー一隻分の代金で、国内で円建てで取引する分があった。地下鉄一駅の距離だがタクシーで行くことになっていた。領収書に電話番号が入っているので、置き忘れたら電話できるようにということ。
もっと少額の手形を失くした社員のことを聞いたことがある。本郷の有名大学卒だったが、そのうちいなくなった。
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