こじれた話がさらにこじれる可能性

2016-08-24 00:00:29 | 企業抗争
時々話題になっているが出光興産と昭和シェル石油の合併につき、出光興産の大株主である創業家一家が反対している。少しは知っていることもあるので、客観的に補足すると、本件につき現在必死になっているのは、一つは昭和シェルの株主であるシェルグループともう一つは出光興産の創業家である。

シェルの立場は、なんとか自社の株券を誰でもいいから日本の誰かに高額で売り、日本撤退すること。利益がないのではなく、シェルの中の資金効率からいって日本市場は利益が少なすぎるということ。結局、出光と東燃ゼネラルの二股交際した結果、高く払うといったのは出光だったので、相手を決めた。しかし、現在は株価は下がっているが、その時に決めた単価で買ってくれ、ということでここにも火種はある。

一方で創業家の立場は、このまま合併すると、企業がバラバラになり結局は企業価値が下がり、会社が衰退するだろう、と見ている。

その他の当事者は、一応お仕事をしているが、なりゆきで決まったことをやっているだけで、そもそも組み合わせなんかどうでもいいし、合併したからといって巨大な寡占メリットがあるかどうかも不明だし、いわれているようなリスクはあるし、と内心では思っているだろう。

そして、そもそも現在の石油業界の収益悪化の直接原因は、精製設備に対して販売量が減少を続けているからで、元売を足したり引いたりしても状況は変わらないわけだ。精製設備(製油所)を減らすというのは一面的真実だが、供給拠点が減ることにより国内の輸送コストが増加するし、人員削減に伴うコストも発生する。

しかも、減り続けてはいるが販売網を担うのは大部分が特約店という中小企業群であり、それらとの契約期間は基本的に1年間なので、特約店からすると元売りが嫌なら別の元売りに変わればいい。

つまり二社が合併しても、特約店が他のマークに変わってしまうと、さらに精製と販売の比率が悪化し、場合によっては製油所だけを買うという間抜けなことになる。

では、特約店はどう思っているかというと、現在のところ、どちらの系列の特約店も、自分の系列の方が有利になると勘違いしているとしか思えない。ここにも大問題はある。

さらに公取の問題だが審査するのにハーフィンダール・ハーシュマン指数というものを用いる。寡占度を数値で表す計算式で、発明した二人の経済学者の名前がついている。

元売各社のシェア(%)を二乗して、合計する。シェア50%の会社が2社なら、2500+2500=5000ということで相当アウトである。基準は1500以下なら問題なしで2500位まではなんとかなる。

最近の各社別ガソリンシェアは、JX(ENEOS)33、出光16、東燃ゼネラル(ESSO、MOBIL、ゼネラル等)16、昭和シェル15、コスモ14、太陽4、キグナス2である。この数字を二乗して合計すると2042である。

これで出光+シェルが合併すると2522である。ほぼ、これがルール上の限界値であり微調整すれば認可されるはずだった。

ところが、彼らの合併が明らかになってからしばらくしてJXと東燃ゼネラルの合併が表面化すると、公取は順番に審査するのではなく一括審査と言い始める。出光はかなり抵抗したもののそういう方向になっている。総理のゴルフ友達の圧力ではないかとも聞くが真相は不明。

そして一括審査となると、2グループが合併したあとの指数(HHI)は3578と急上昇する。これでも認可するのかどうかという大問題がある。最近は公取も国内シェアではなく世界シェアで考えるという当事者能力放棄状態も窺えるのだが、寡占状況は消費者を不利にするということで、内需沈滞の原因になるので疑問は残る。

つまり、「合併」というコトバで関係者が集まっているだけで、いわゆる「同床異夢」という状態なのではないだろうか。


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