あり得ない再沈没で・・

2022-05-25 00:00:29 | 災害
KAZU1号の水深120mからの引き揚げ作業が失敗した。水深20mまで引き揚げたあと、波の穏やかな日に台船に乗せるのかと思っていたら、横方向に長距離を引っ張っていく途中に落下。今度は180mになった。港まで横移動しても、最後は台船に乗せなければ陸に上がらないように思うので、最初に台船に乗せるべきだったと思われる。

ともかく、これで良かったと思う人がいて、一人は遊覧船会社の社長。もともと業務上過失致死の刑事責任を問うのが難しいのに、さらに有罪が難しい状況になる。

流れを整理すると、海の上の事故(または事件)なので、捜査は海上保安官になる。そして容疑を固めて、検察に書類を送る。対象は個人であって法人ではないので、亡くなった船長と運航管理をしていた社長のどちらか、あるいは両者。検察は証拠や過去の沈没事例に基づき起訴か不起訴かを判断する。そして裁判になり地裁、高裁、最高裁と続く。

一方、海上保安庁は海難審判所で海難審判を行い、船長の責任を追及する。この場合、不服がある場合は高裁に進むことになる。海上保安官も海難審判所も国交省の傘下で行政組織ということで最終的には司法組織に委ねられる。

民事訴訟の対象は個人及び法人なので、ここで遊覧船会社も対象になり、船客保険とP&I保険が適用になる。もっと深く考えれば、国家の不作為ということも遠因になる。


それで、最初に戻って沈没の直接原因は何かということ。事故の要因は沢山あっても、最後にこれがあれば事故にならなかった、という事案が直接原因となる。

そうなると、強風で転覆したのなら強風でも出航したことに問題があるのだが、そうでないことはわかっている。船底に穴があるなら座礁ということになる。その場合は操船ミスを冒した船長の責任だ。

さらに船体検査の時に、船尾側に1.5トン分の砂袋をバラストとして積載していたにも関わらず、船長は砂袋を陸揚げ(除去)している。砂袋の大きさはわからないが、何回にも分けて運び出している。本来ならパーマネントバラストといって1.5トン分のコンクリの塊を乗せるので、重くて運びだせない。砂袋を降ろしたために船尾が軽くなり舵が聞かなかったり、プロペラが水中から出てしまい、操船不能になったのかもしれない。もっとも地元では「潜水艦」と呼ばれていたとも言われ、1.5トン重くした場合、逆に危険だったのかもしれない。つまり浮かんでいるだけなら合法でも航行は難しかったのかもしれない。

ところで、国交省の責任という声はチラホラしか聞こえてこない、あえて遊覧船会社がさまざまな違反をしたと発表しているが、報道の通り、検査制度や認可制度はひどいものだ。真相が明らかにならなければ責任の所在も見えてこないわけで、うやむやになることも考えられる。

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