たちきり(演:柳家さん喬 落語)

2024-04-16 00:00:33 | 落語
たちきり(演:柳家さん喬 落語)

元々、上方では本格的な人情噺だったものを明治時代に東京で演じるようになる。上方では、非常に長い時間をかけていたが、東京では簡易型になって前半を大幅にカットしているようだ。

まず、枕の部分で芸者の花代の話に触れる。お客は芸者と遊ぶときは、金で時間を買うわけだ。たとえば1時間で一両とか。江戸時代には時計はないのでそれの代わりが線香で、1本燃え尽きるまで何分で何本でなんぼというところ。予備知識を刷り込むわけだ。

ただ、この枕を唐突に話すと、客は「一体、何の話?」と察しがつくので、それとなく違う話に振ってから、商家の放蕩若旦那のことを語り始める。

若旦那なのに、遊びが大好きで商いに身を入れず芸者遊びに入れ込むので、親類一同が、どうしたものか、と相談を始めるわけだ。上方では、この後、車引きにして過労死させようかとか、船遊ぶにつれて行って海に落としてしまおうとか、家を追い出して浮浪者にしようかとか、ここでたっぷり時間をかける。

一方で、若旦那は「お糸」という芸者と懇ろになり、女将も公認の切れない中になっていく。

ここのバランスが難しく、「放蕩」でもあり「純情」でもあることにしないと、後で困る。

そして親戚一同が決めた方策は、百日間の土蔵押し込め。つまり監禁である。

一方、お糸は、突然に来なくなった若旦那のことを思い、文をしたため送るのだが、それが土蔵の中に届くことはないわけで、何度も何度も返信があるわけもない文を送り続けるうちに憔悴仕切ってしまい床に臥せることになる。

そして、百日が過ぎ、自由の身になった若旦那は、行き先をごまかしてお糸に会いに行くのだが、その時には既にお糸は亡くなっていたわけだ。事情を女将に説明し、仏様に線香をあげ、仏前に座るとどこからともなく三味線の音が聞こえてくる。若旦那がかつて好きだった曲を聞きながら思い出にふけっていると、線香が燃え尽き、三味線もとまる。女将が、「線香が断ち切りになりました」となるわけだ。

つまり、演じるのが難しいわけだ。若旦那の行為を肯定するのか否定するのかによって、悲劇とも喜劇ともいえるわけだ。

なんとなく、座を沸かせようとして顰蹙を巻き起こす失言を繰り返す政治家も数多いが、本演目は特に難しいような気がする。『自分の悲劇は、他人の喜劇』ということわざもあるわけだ。(知らなかった人は、今、覚えておこう)

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