食間のコトバの間に見えるもの

2005-02-17 20:11:22 | 市民A
5cca3b6a.jpg相互愛読ブログ関係にある「ベンチャー企業社長の挑戦、そして苦闘・2月10日号」に面白い話があった。
当該のブログエントリー全体の趣旨とは違うと思うが、

・・・少し風邪をひいた小島社長が医者に行って処方されたクスリの飲み方に「食間時服用」と書かれていて、会社で社員に対して、「食間」というのは、食事中のどの時点を意味するのかとの質問をしたら、大笑いされ、さらに自宅でその話を披露したところ、さらに哄笑を買ってしまった(後半の家族の話は単に私の想像だが・・)。

というような話題である。社長はさらに、「MBAまで取得していて恥ずかしい」とつけ加えられたのだ。

実は、私は、これらの事象が最近起きたことには幾分かの合理的理由があるのではないかと思うのだ(と江戸川乱歩的表現ではあるが)。私もMBAではあるが、同病であり、小島社長が笑いものになる1年ほど前に同様に笑いものになっている。洋食ならば、オードブル、スープ、アントレとか順番に料理が出てきて、コーヒーとデザートで終了するのだから、肉を食う前とかスープを飲んだあとを「食間」と考えるのだろうかとか、中華だとスープは終わりの方に出てくるし、日本料理や韓国料理はほとんど同時にテーブルに並べられるが、和食でも寿司屋とか懐石料理とかの場合は、一品ずつだし・・・とか妙なことを考えていたわけだ。

しかし、なんとなく奇妙な感じがしていたまま、頭の中で放置していたのだが、少し論理的に考えてみることにした。まず、私がもらったクスリ(という表現は間違いで、健康保険という補助金付きで購入した)は、「葛根湯(かっこんとう)」だったわけだ。漢方薬。2日分が処方され、その結果、次の段階を考えるという作戦だったわけだ。初期症状のうちに自分の体力で治そうということなのだが、最近はあちこちの医者で、この「始め漢方路線」が多いように感じる。私は小島社長が入手されたクスリが「葛根湯」か「紫胡桂枝湯(さいこけいしとう)」ではないかと想像するのだが、そうであれば今後の説明と合致する。そうでなければ別の話と理解してほしい。だいたい、本質的には、空腹時に飲む方が吸収がいいわけだ。そういう意味で薬効の緩い漢方は、それ自体で体内に吸収させることが重要になるわけだ。だいたいの漢方はこの「食間方式」だ。なかには、服用後30分は食事をしないようにとか念を押されることまである。

それでは、なぜ漢方が増えてきたかということになると、「よくわからない」というのが本音なのだが、逆説的に言えば、風邪なんかは漢方で2日ほどで治っていくものを、無理矢理強烈なクスリでやっつけないほうがいいと考える医師が多くなったのではないだろうか。そして、ひどい症状の場合は、抗生物質とかが登場する。

もっとも、この「食間」指定、けっこうあいまいな時間指定なもので、よく忘れてしまう。ついつい食事を始めてから、飲むことを忘れたことに気付く。しょうがないので、なるべく時間をあけて眠る直前に飲むことになる。まあ実際は飲み忘れるほどの状態は、もう治ったも同然状態なので、あまり気にしなくてもいいのかもしれない。

というところまでが、ブログエントリーの第一幕で第二幕は漢方薬ビジネスなどについて。

日本で漢方薬を大々的に研究、販売している会社といえば「カネボウ薬品」である。例の産業再生機構行きになったカネボウの多角事業の一環である。化粧品部門がドル箱と言われたが、実はカネボウ薬品は、ちょうど今が儲け始めるスタートのような状態なのである。なぜ、そういうことなのかというと、最大マーケットが中国ということになる。中国はもちろん漢方の国である。しかし、経済低迷時代に開発が遅れてしまい、量産が難しい状態にある。日本への旅行者が帰国時に大量にクスリを買って帰るのは有名だ。さらに中国では、まだまだ健康保険という制度が普及することはないだろうから、その制度を利用して、製薬会社が高利潤を獲得して新薬開発費に回すというサイクルが展開できないだろう。さらに新薬開発には特許の問題がからむ。したがって、開発も漢方に特化していくことが予想されるわけだ。

そして、実は、カネボウ薬品は中国の製薬会社にとって買いたくて(資本投入)しかたない会社なのである。しかも親会社はカネボウ。産業再生機構には相当の打診が入っているものと想像する。案外、どうにもならないカネボウの過去負債の清算財源になってしまうかもしれないと思っている。このようにダメ親会社の子会社は、優良企業化すればするほど売却(カーブアウト)される可能性が高くなるのだが、運良く新職場に席を確保できた社員は、新しい勤務システムにあわせて頑張らなければならないが、もしも給料が中国本土ベースと同じだったらひっくり返ってしまうだろうけど。

ところが、この漢方薬の分野で中国企業と日本企業が争っている分野がある。それは海洋生物起源のクスリである。日本の経済水域はきわめて広く、東西南北に広がり、その遺伝子情報は多岐にわたるのだが、既に利用したり、研究を続けている製薬会社や大学は一部に過ぎない。アマゾン流域の陸上生物の種の多様性に気付き、生物の持ち出し禁止を打ち出し、製薬を国家的重点産業として保護しているブラジルを対極と考えれば、陸生生物より多様な可能性のある、海洋生物を放置している日本は、「甘い」。尖閣列島の問題は、海底エネルギー問題だけではないのだ。古くは、江戸時代末期に和人が蝦夷地を開拓(侵略という人もいる)して、原住民族と紛争を起こしていた原因の一つが、北海道に自生する新発見の植物や動物の漢方薬としての資源利用だったことは、意外に知られていない。つまり北方領土問題にもつながっているわけだ。


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