古墳の発掘(森浩一著)

2015-03-30 00:00:03 | 書評
kofun古墳というと東日本ではあまりなじみがない。地方豪族の墓地といっても大きなものでも20メートル程度のもので、中学生の郷土研究などで訪れて、穴に潜る程度だが、西日本では巨大古墳が多数ある。古代日本の王の墓ということで、多くは天皇陵や地方の支配者の墓であったと思われるが、まったく奇妙なことに、誰の墓なのかよくわからないことが多いし、よく間違っていることが指摘される。

しかし、どこの国の古代王朝の墓であっても、その後間違えられるということはあまりないし、ということは、墓がつくられてからあと、その墓の主を敬うということが、中断されていた時期があるということだろう。

そして、1990年頃に起きた土地バブルの頃は、特に奈良、京都、大阪では『古墳つぶし』が盛大に行われていたらしい。本書は古墳の発掘という書名でありながら、発掘という名称のもと、土建会社と地方政治が癒着して、御用学者が発掘という美名のもとに、二束三文で取引された古墳(つまり墓地)を、いかに短期間で調査したふりをして、土を良質な壁土として売り、石室の石は庭石に転用し、削り取って整地した丘陵地を住宅街に仕立て直して巨万の富を得ていた人たちがいる、というストーリーを明らかにした抗議の書だった、ということになる。

つまり、今残っている古墳というのは、「長期売れ残り物件」ということなのかもしれない。


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