ケインズ対フリードマン

2010-01-06 00:00:22 | 投資
ito2昨年末、野村證券で開かれていた「野村の自由学校」を覗きにいった。二人の経済学者の対談である。

一人は、東京大学の伊藤元重氏。一応、当代きっての経済学者ということになっている。私の書棚にも一冊、「ミクロ経済学」という本がある。民主党政権誕生の暁には、小泉内閣の時の竹中平蔵氏のように政権入りして要職につくかと思われていたが、どうも声がかからなかったようだ。ミスター円こと榊原英資氏と同病だ(榊原氏は次期財務相狙いか?閣内大騒動の兆し)。

ヤケ酒の飲みっぷりが豪快、という噂が聞こえたのだろうか、最近は、日本酒のコマーシャルなどに登場。今の政権に入っていたら、何らかの責任を負わされる危険もあったと考えれば、第三次小沢内閣(細川、鳩山、菅?)の時の方がいいのかもしれない。

対談の相手が、早大の若田部昌澄氏。伊藤先生より一回りぐらい若い。どうも早稲田の経済学というと、植草一秀元教授のことが想起されてしまうのだが、若手の俊英ということで、学生に対しては特に合格点が激辛だそうだ。

wakatabe対談の内容は、日本経済の構造問題とか、鳩山政権の経済政策について、まあよく聞く話ばかりなのだが、なんとなく盛り上がらないのは、「現政権に政策ってあるのか」というところからくるのかもしれない。

ただ、世界経済の中の日米の政策のタイムラグという部分で、ケインズ対フリードマンという二大巨頭を引っ張り出して解説していたところがちょっと面白いところだった。

日米の政府債務残高(国債残高)のグラフを見ると、1997年頃は日米が同水準だったのが、不況下の日本がどんどん国債依存の公共投資型経済になっていたことがわかる。米国は経済のダイナミックな発展で税収が増えていたわけだ。

kokusai1ところが、小泉-竹中の登場で、2005年頃から国債の残高の増加が抑えられていく。一方、米国は戦費の必要もあり、国債を増発していくわけだ。だから、日米は財政型のケインズ型と金融政策型のフリードマン型の間を並列ブランコのように行ったり来たりしているわけだ。

実際、竹中登場以降、オールド・ケインジアンはほとんど見えなくなったらしいが、たとえばリチャード・クー氏などがそうなのだろうか(彼は学者の分類には入れてもらえないが)。それからカメさん。

だいたい民主党自体が、ケインズとフリードマンというまったく性格の異なる経済思想の中で、どこに進もうとしているのか、さっぱりわからないわけだ。(予想に反して、菅直人はケインズ派ではなかったように見えるのだが、単に次期首相を狙うためのパフォーマンスなのかもしれないし、よくわからない)

kokusai2念のため、日米の政府債務残高の金額が同じといっても、GDPの規模が3倍くらい違うので、対GDP比率ではまったく異なることを付け加えておく。