米欧回覧実記(現代語訳)全五巻の読破に着手

2010-01-07 00:00:35 | 書評
毎年、読書100冊を目標にしていると、それなりに色々な分野の本を読むことになるのだが、ともすると年末は目標未達になりそうで軽薄な方に流れてしまう。

beioukairan1となれば、ごっつい書物を開くには、年の初めの方でなければならないわけで、かつてから頭の片隅にあった「米欧回覧実記(現代語訳)全五冊」を開くことにする。

1871年に岩倉具視団長の元で、その後の明治の国家形成に中心的な活躍をした人々が日本から米国にわたり、さらに西海岸から大西洋側まで大陸横断鉄道で移動し、そこから欧州へ渡る。公式訪問した国は12カ国という古今の世界史に例がない巨大視察旅行である。

その公式記録を書いたのが、岩倉に付いて回った佐賀藩出身の久米邦武である。

こういう本を読むのに、先入観をもってあたらない方がいいというのが常道なのだが、一つだけ読書の大テーマをあげれば、「日本はなぜ米国型社会を目指さなかったか」ということ。脅迫的とはいえ、開国したのはペリー提督のせいであるし、この使節団も、まず米国というコースだった。同行した5人の少女たちは、米国止まりで欧州には行かなかった。よほど欧州の方がいいと思う理由があったのだろうか。


さて、この世界でも稀なる大旅行記だが、久米の文章は漢文調である。さらに平仮名ではなく片仮名。このため、なかなか読み進むのが難しいという状況だった。源氏物語みたいな話だ。

そのために、色々な動きがあったようだが、ついに水澤周氏の手でこの全五巻2000ページ強の大作が、2008年6月、現代日本に生き返ったわけなのである。(その前に英語訳が出版されていたそうだ。)

ただし、出版費用は、ある篤志家が私財で負担されたそうで、残念ながら、その方の氏名はよくわからない。鳩山母ではないだろう。

そして、まだ50ページしか読んでないのだが、結構、合理的な記述や分析があちこちに見られ、なかなかのものである。第一巻はアメリカ編である。

それでは、・・