樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

柏餅の真実

2014年04月28日 | 木と飲食
以前、柏餅について「西日本はカシワが少ないのでサルトリイバラの葉で包むらしい」と書いたところ、広島県出身の知人から「昔から柏餅はサルトリイバラの葉。カシワの葉で包んだ柏餅は最近になって知った」というコメントをいただきました。
それでも、「カシワの葉が主流で、サルトリイバラの葉は一地方の亜流」と思っていました。ところが、よく調べてみると逆で、「サルトリイバラが主流で、カシワが亜流」らしいのです。


本来の柏餅の葉、サルトリイバラ(散歩コースの大吉山で撮影)

ある研究者が柏餅に使う葉の全国調査をしたところ、西日本だけでなく東日本の一部(埼玉県、茨城県、神奈川県)でもサルトリイバラの葉を使っていることが判明。岐阜県ではホオノキの葉を使っています。
もともと、食べ物を載せたり、包んだりする葉はすべて「炊し葉(カシハ)」と呼ぶので、樹種に関係なく、木の葉で包んだ餅はすべて「炊し葉餅」。
さらに、カシワの葉で包む柏餅が江戸時代後期に始まったのに対して、サルトリイバラで包む「炊し葉餅」はそれ以前からあったようです。
しかし、人口が急増した江戸の需要にサルトリイバラの葉が応えられないので代用品が必要になった。そこで、ある菓子屋が「炊し葉餅」の語呂合わせでカシワの葉で包んだ柏餅を考案した。しかも、カシワの葉は若葉が出るまで落葉しないことから、「子どもが生まれるまで親は死なない」というもっともらしい子孫繁栄の理由をつけて販売した。
これが大ヒットし、それ以降、カシワの葉で包んだ柏餅が江戸~東海~関西あたりで主流になった、ということのようです。
京都の柏餅もカシワの葉。詳細を確認するため、スーパーではなく地元の老舗の和菓子屋さんで買ってきました。



左から味噌餡、漉し餡、粒餡。味噌餡は葉表が外側、漉し餡は褐色の葉(葉裏が外側)、粒餡は葉裏が外側になっています。一方、江戸時代の書物によると、もともと関西には味噌餡はなかったようで、「江戸には味噌餡もあり、小豆餡は葉の表、味噌餡は葉の裏を出した」と記されています。
麺類の「きつね」と「たぬき」みたいな東西の微妙な相違や混在が柏餅にもあるようです。
コメント (5)
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