樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

トビと鳳凰

2014年04月03日 | 野鳥
寺院などの大屋根の左右には大きな瓦の飾りがあります。例えば、下の写真は奈良の平城宮跡公園に復元された大極殿のもの。お城の場合は鯱(シャチホコ)ですが、寺院や宮殿の場合は「鴟尾(しび)」と呼ぶそうです。



別名「とびのお」ですが、どう見てもトビの尾羽には見えません。



バードウォッチャーは空を飛ぶ大型の鳥を発見すると、まず尾羽の形を見て、「な~んだトビか」とがっかりしたり、「丸いからタカだ」と色めき立ったりするので、トビの尾羽は頭に焼き付いていますが、「鴟尾はトビの尾」と言われても納得できません。
「なぜ、あの屋根飾りがトビの尾と呼ばれるのか?」と疑問になったので調べてみました。
ルーツはやはり中国。南北朝時代に宮殿や寺院の屋根を鴟尾が飾るようになったようですが、ある研究者によると、もともとは鳳凰を屋根に飾っていたが、後に鳳凰の尾羽だけを飾るようになり、それが「鴟尾」と呼ばれるようになったとのこと。
「ならば、なぜ鳳凰の尾羽を屋根に飾るのか?」という次なる疑問が湧いてきます。その研究者は、鳳凰が風の神様なので、台風を避けるためであるとしています。「鳳凰」と「風」の字がよく似ているように、古代中国では「鳳凰=風神」だったそうです。
「屋根に鳳凰を飾る」と聞くと、宇治市民はすぐに「平等院鳳凰堂」を想起します。10円玉の裏には平等院が刻まれていますし、1万円札の裏にはその鳳凰が印刷されています。
その平等院は約2年間の「平成の大修理」を終え、本日より内部拝観が再開されます。



屋根の鳳凰も金箔を張り替えて、本来の光を取り戻しました。金色の鳳凰には台風除けという意味があったんですね。



鴟尾に戻りますが、その後、宋の時代に屋根飾りは台風除けよりも火災除けという意味に変化し、水に関する想像上の動物(シャチホコなど)になったそうです。鳥から魚に代替わりしたわけです。日本の城郭建築もそれを受け継いだのでしょう。
ちなみに、鳳凰にも雌雄があって、「鳳」がオス、「凰」がメスとのことですが、平等院の鳳凰はどっちがオスでどっちがメスか不明です。
コメント (4)
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