酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

ハードな週末~「プロジェクションマッピング」&「脱成長ミーティング」

2016-04-21 19:14:29 | カルチャー
 米大統領選の民主党予備選でサンダース候補がニューヨークで完敗した。撤退の時機かもしれないが、闘いは終わりではない。〝アメリカの3・11〟というべき反組合法の抗議活動で主導的な役割を果たした10代、20代の若者が、これまでサンダースを支えてきた。アメリカの国の形を根底から変えるのは日本並みに難しいが、サンダースと支持者の思いが結実する日はきっと来る。

 「忍者武芸帳」(1967年、大島渚)の主人公(影丸)の台詞を繰り返し紹介してきた。即ち<大切なのは勝ち負けではなく、目的に向かって近づくことだ。俺が死んでも志を継ぐ者が必ず現れる。多くの人が平等で幸せに暮らせる日が来るまで、敗れても敗れても闘い続ける。100年先か、1000年先か、そんな日は必ず来る>……。

 高邁な志は、弾圧されても必ず受け継がれ、いずれ花実を咲かせる。事実M、欧米、そして台湾や香港でも変革の兆しが表れている。俺もまた、無数の影丸が身を賭して守ってきた日本の地下水脈の番人になりたい……。なんて力んでみたが、ハードな日々に息も絶え絶えだ。先週末は知人に誘われ白河に足を運び、小峰城、南湖公園で散りゆく桜を楽しんだ。夕方からは冷え込む中、「福島プロジェクションマッピング2016 はるか~白河花かがり」を観賞する。事前申し込み制で、2日で4000人が集うイベントになった。

 観光客として東北を訪ねるのは3度目だが、電車とバスは本数が少なく、車での移動が前提になっている。タイムロスを避けるため、タクシーを使うケースが増えてしまうが、〝お金を落とす〟ことも復興の一助と考えている。年内にもう一度、東北を旅したい。候補のひとつは昨秋、駅近くしか回れなかった石巻だ。ついでにフェリーで猫の島(田代島)に足を延ばすというプランも考えている。

 1泊して昼過ぎに東京に戻り、「脱成長ミーティング」(ピープルズプラン研究所)に参加した。10回目にして初めての参加である。発起人は友人でもある高坂勝さんで、今回は「脱成長論を歴史的に振り返る」というテーマだった。報告者である古沢広祐氏(国学院大教授)によれば、「成長の限界」(ローマクラブ編、72年)と初期マルクスの疎外論が脱成長を育んだという。

 「成長の限界」には亡き友の思い出と重なっている。高校2年の時、秀才の友は同書に感銘を受け将来を決めた。<通産省に入ってエネルギー政策の舵取りをする>という夢を叶え、小泉元首相から一目置かれたほどだが、志半ばで病に斃れた。対照的にダラダラ怠け街道を歩んだ俺は還暦直前、導かれるように脱成長にたどり着く。不思議な縁を覚えた。

 古沢氏の話は理解が及ばぬ点も多々あったが、ふやけた脳も次第にほぐれていく。脱成長は切り口が多く、様々な箇所から囓っているのが現状だ。研究者、環境保護や気候変動、食の問題に携わる活動家らが、それぞれがの問題意識をベースに語り合う後半、場の空気が和んでいく。古沢氏も理論と現実の兼ね合いを柔らかく示し、ピケティやスティグリッツに頻繁に言及された。

 高坂さんは緑の党前代表でもある。<多様性を認め、循環可能なシステムを志向する>という党が拠って立つ理念は、言い換えれば脱成長となる。グローバリズムは価値と文化の均一化(モノカルチャー)を推し進めたが、脱成長は調和とオルタナティブを模索する。議論の中で、GDP、GNPの呪縛から解放され、豊かさの新たな指標を提示する必要性を感じた。

 初参加ということもあり、発言を求められた俺は<ここ数年、最も関心を抱いてきたのは格差と貧困で、脱成長とどこかで繋がっている気がする。パチンとショートしたとまで言わないけど、ヒントを得ることができた>と話した。他の参加者も若者が置かれているシビアな現状に警鐘を鳴らしていた。

 脱成長は生き方そのものにも関わってくるテーマだが、古沢氏が指摘された通り、主体の問題にこだわり過ぎると宗教に近づく危険性もある。今週末は<動物との共生>を学ぶ基礎講座に参加する。生物多様性もまた、脱成長と不可分であることを今回知った。生きるとは、自分の無知を知ることだ。遅きに失したとはいえ、少し謙虚に、そして勤勉になった。

 囲碁の井山名人が7冠を達成し、「熊本の人たちを少しでも勇気づけられたら」と会見で語っていた。才能ある人はジャンルを問わず、被災者に希望を与えることができる。東日本大震災時にも感じたが、俺のような無能な人間は何を成せばいいのだろう。仕事をなげうって現地に赴くのが無理なら義援金しかない。最も効果的な方法を探っている。
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