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酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

酷暑の雑感~高校野球、ヒトラーの本棚、「2040年」

2025-08-27 22:00:56 | 独り言
 酷暑の日々で心身は萎えているが、この間感じたことを脈絡なく以下に記したい。

 まずは、沖縄尚学の優勝で幕を閉じた夏の甲子園から。史上最高の大会と評されるほど熱戦続きだったが、広陵を巡る一連の出来事が影を落とした。前々稿で紹介した「神聖喜劇」には軍隊の異様な体質が描かれていたが、スポーツ、とりわけ野球界がいまだに残滓を払拭出来ていないことが明らかになった。広陵のみならず暴力やいじめが有力校に蔓延していることはSNS等からも明らかで、高校だけでなく多くの大学でも前近代的体質が残っている。

 しごきの体験を美談風に語るプロ選手がいるのは残念だが、広陵OBの金本知憲氏は信じ難い出来事を告白している。ベイスターズ牧など広陵の体質を変えようと努力したNPB選手は多いが、一掃出来なかったのはひとえに監督の責任だ。朝日新聞社は、高校、大学と一貫して野球部の体質に馴染めず、25歳でようやくプロになった落合博満氏をアドバイザーにして、高野連の近代化に取り組むべきだ。

 BS世界のドキュメンタリー「ヒトラーの本棚~ナチズムの源を読み解く」(2023年、ドイツ)は興味深い内容だった。ヒトラーの読書傾向について著書があるティモシー・ライバックをメインの進行役に、莫大な蔵書の中からピックアップしてナチズムの源になった思想に光を当てていく。<突然現れたヒトラーが世界を蹂躙した>……、こんな先入観は本作で吹き飛んだ。ミュンヘン一揆の首謀者として投獄されたのは1923年だったが、ヒトラーは20年頃から反ユダヤ主義、優生学を掲げる保守系の企業家や出版人にとって希望の星と見做されていた。

 米政府や大メディアによって<反ユダヤ主義=パレスチナに対するジェノサイドに抗議する者>というすり替えが現在行われているが、1920~30年代における<反ユダヤ主義>は人種差別に限定していい。ヒトラーのバイブルは「偉大な人類の消滅」で、著者のマディソン・グラントは本国アメリカでも移民対策の変更に絶大な影響力を誇り、白人至上主義者が外国人排斥を唱える際の根拠になっている。

 ヒトラーの蔵書の中で目立っていたのは魔術、オカルト、スピリチュアル系でノストラダムスの予言集も早くから読んでいた。ヒトラーにとって〝理想の父親〟だったディートリヒ・エッカートは「ペール・ギュント」の脚色で名を上げた反ユダヤ主義者で、ヒトラーを有力者に引き合わせた。世界に冠たる探検家スウェン・ヘディンもナチス支持者で、「大陸間の戦争におけるアメリカ」で、ルーズベルトの策略がヒトラーを第2次世界大戦に追い込んだと記している。

 優生学に基づき障害者を抹殺し、ユダヤ人やロマを虐殺した。ナチスが創出した地獄は1945年に終わったわけではない。世界では移民や難民への暴力が収まらず、被害者だったユダヤ人によるガザでジェノサイドが続いている。

 ゼロカーボンシティ杉並主催のイベントで映画「2040~地球再生のビジョン」(2019年、デイモン・ガモー監督)を見た。ガモー監督作は自身の肉体を実験台にしながら格差と貧困、情報操作と洗脳、資本主義の冷酷さに切り込んだ「あまくない砂糖の話」(15年)の感想を当ブログに記した。ガモーは娘ベルベットが生きるべき理想の世界を見据えて11カ国を巡る。CGを挿入しながら2017年(撮影時)と2040年がカットバックさせ、未来図を浮き上がらせる。

 バングラデシュでは太陽光発電で電力をシェアするコミュニティーを取材する。エネルギーの地産地消は経済的のみならず、文化的紐帯を維持する効果がある。農業や漁業のやり方を工夫するだけで二酸化炭素の排出を抑えた例が紹介されていた。本作の根底にあるのはケイト・ラワーズが提唱する<ドーナツ経済学>で、利益が循環し公平な社会を志向するモデルだ。前提にあるのは生物多様性の維持と環境保護である。大上段に構えず、一人一人の創意工夫の蓄積が世界を変えるという希望を実現するため、必要になる若い世代との対話をガモーは実践していた。

 酷暑はいつまで続くのだろうか。終わっても蓄積した疲労は抜けそうもない。
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初夏の雑感~社会の歪みを抉る韓国映画、福音派とパレスチナ、将棋、ダービー

2025-05-31 22:08:34 | 独り言
 この10日余り、映画館には出掛けなかったが、WOWOWで録画した映画を楽しんだ。「ゴールド・ボーイ」、「あの人が消えた」、「朽ちないサクラ」の邦画3本も秀作だったが、ズシリと胸に響いたのはポエトリー アグネスの詩」(2010年、イ・チャンドン監督)と「無垢なる証人」(19年、イ・ハン監督)の韓国映画である。まずは「ポエトリー――」から感想を簡単に記したい。

 主人公のミジャ(ユン・ジョンヒ)はヘルパーの仕事をしながら、孫チョンウク(イ・ダウィ)を育てているチャーミングな60代の女性だ。病院で初期アルツハイマー型認知症と診断されたミジャは、文化院で詩の講座を受講するようになる。詩心を育もうと自然に親しむミジャに悪い知らせが届いた。溺死体で発見された女子校生(アグネス)について報じられたが、チョンウクら仲間6人に繰り返し暴行されたことによる飛び降り自殺と判明したのだ。

 実話に基づくストーリーというが、愕然としたのは少年たちが罪の意識を全く感じていないことで、ミジャ以外の家族は示談金で解決しようと試み、学校側も隠蔽に努めている。韓国社会の歪みを感じたが、ひとり倫理と良心に従ったミジャは講座最終日、アグネスの心情に沿った詩を講師に託す。画面から消えたミジャも、川へ身投げしたのだろうか。余韻が去らない傑作だった。

 「無垢なる証人」は金塗れの法曹界の実態を浮き彫りにする。人権弁護士として知られたヤン・スノ(チョン・ウソン)は大手法律事務所に加わり、殺人事件の容疑者である家政婦の弁護を引き受ける。検察側の証人である15歳の少女ジウ(キム・ヒャンギ)は、「アストリッドとラファエル」のアストリッド同様、自閉症スペクトラム(ASD)を抱えており、その証言が陪審員を説得するのは難しかった。

 聴覚、視覚に優れ、パズルに天才的な能力を発揮するジウと交流するうち、スノは事件の背景に潜む真実に迫っていく。当初は敵対していたイ検事(イ・キュヒョン)と協力し、正義と良心をもって鮮やかな逆転劇を演じた。特別学級に転校したジウは明るくなり、弁護士バッチを外したスノは、かつての同志スイン(ソン・ユナ)との絆を取り戻す。カタルシスを覚える人間賛歌だった。

 NHK・BSで「ハルマゲドンを待ち望んで~米国政治を動かす福音派」(前後編)を見た。ノルウェー・スウェーデン・ドイツ・フィンランド合作のドキュメンタリーで、全編を通して進行役を務めているのはニュースサイト「インサイト」のリー・ファン記者で、制作4カ国の人たち、そして俺がアプリオリに価値を置いている多様性、人権への危機感を共有している。暴走している米トランプ大統領を支えている福音派は国民の25%が信者で、共和党の死命を制している。

 ガザでは現在、全住民が飢餓の危機にある。イスラエルによるジェノサイドへの憤りを繰り返し記してきたが、敵の巨大さを本ドキュメンタリーで思い知らされた。福音派の共通認識は<ハルマゲドンは間近に迫っており、最終戦争のさなかイエスはイスラエルに復活し、剣を手に敵をなぎ倒す。主とともに闘った者だけが天国に召される>という内容だ。福音派はロビー活動でトランプ政権中枢に影響力を持っており、パレスチナ人から土地を収奪する国連法違反の入植を援助しているのも福音派だ。主導しているのは「イスラエルのためのキリスト教徒連合」(CUFI)で700万超の信者がいる。番組では「武器を取れ」と民兵組織を念頭に全米をバイク行脚する牧師に迫っていた。

 元福音派牧師、イスラエルのユダヤ教ラビらの証言からも、福音派が唱える<武器を手に闘うイエス>など狂気の沙汰だ。だが、25%の米国民はパレスチナにおけるイスラエルの蛮行に喝采を送る。カルトに洗脳されているかのように……。ハルマゲドンに至る道筋として、大統領が核ボタンを押すことも福音派は射程に入れているのか。「博士の異常な愛情」(スタンリー・キューブリック)は絵空事ではない。

 2局続きで千日手指し直しになった名人戦第5局は藤井聡太名人(七冠)が逆転で永瀬拓矢九段を破り、3連覇を達成した。受けにも進境を見せる藤井は終盤、AIの最善手を指し続けた。上記のジウやアストリッドより症状は軽いのだろうが、永瀬もASDを抱えている。将棋によって苦手な対人関係を克服した永瀬は、今や多くの後輩棋士から慕われている。対局を振り返るYouTube配信番組で、「持ち時間は9時間でも足らない。12時間は欲しい」と斎藤明日斗六段に語っていた。

 最後に第92回日本ダービーの予想を。調子が上向いている皐月賞2着馬の⑬クロワデュノールは馬券圏内に入る可能性は高い。⑨ジョバンニ、⑰マスカレードボールの皐月賞3、4着馬、京都新聞杯1、2着の②ショウヘイ、⑧エムズをいかに馬券に絡めるかを考えている。

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GWの雑感~中村敦夫「線量計が鳴る」、「アストリッドとラファエル」、杉本和陽六段、感性がウエットに

2025-05-01 22:20:35 | 独り言
 今回はGWの雑感をあれこれ綴りたい。まずは阿佐ヶ谷区民センターで見た朗読劇「線量計が鳴る」(岨裕士監督)から。NO NUKES 杉並&ソシアルシネマクラブ杉並共催の上映会である。元原発技師の証言を元に、原発の仕組み、福島事故の実態、原発マフィアの正体に言及した朗読劇で、脚本は朗読者の中村敦夫だ。全国で100回近く開催され、徳島・般若院(2021年)でのライブがDVD化される。

 感銘を覚えたのは中村の不屈の精神だった。<原発マフィアの意のままになってたまるか>と撮影当時81歳だった中村は元技師と自身の思いを重ねて繰り返す。元技師はチェルノブイリを訪ね、事故から30年以上経った現状を調査した。内部被曝の恐ろしさは数字でも明らかだが、日本では改竄され隠蔽されている。子供たちの内部被曝について原発マフィアの責任を問う声を上げていきたい。

 ドラマを見る機会は多いが、「アストリッドとラファエル 文書係の事件簿」(NHK総合)が群を抜いている。現在シーズン5が放映中で、フランスではシーズン6が撮影中という。アストリッド(サラ・モーテンセン)は対人関係が苦手な自閉スペクトラム症という設定で、繊細かつ内向的だ。症状を案じた父の計らいで、パリ犯罪資料局で働いている。対照的に大雑把で活動的な敏腕警視ラファエル(ローラ・ドヴェール)は捜査で知り合ったアストリッドと友情を築いていく。

 アストリッドは難解なパズルを瞬時に説く。膨大な犯罪資料を記憶し、直観力と観察力を駆使して事件を解決に導くさまは右脳と左脳がショートするが如くだ。第5シーズンではアストリッドとラファエルのそれぞれの恋愛が進行し、堅物に思えた警視正が仏教徒であることが判明するなど、温かみも増してきた。ストーリー的には日本でのエピソードもありだが、アストリッドは果たして飛行機に乗れるだろうか。

 アストリッド同様、自閉スペクトラム症であることを公表した永瀬拓矢九段だが、伸び悩んでいる奨励会員を研究会に誘うなど、対人関係が苦手どころか後輩たちからいい兄貴分として慕われている。名人戦第2局では最終盤まで五分の形勢だったが、藤井聡太名人の決定力に屈して連敗となった。その永瀬との棋聖戦挑戦者決定戦を制した杉本和陽六段に注目が集まっている。

 6年ぶりに出場した詰将棋選手権で、短時間で全問を正解し6度目の優勝を果たすなど、藤井の天才ぶりは人知を超えている。数々の実績は言うまでもないが、杉本は遅咲きのダークホースだ。年齢制限ぎりぎりの25歳で三段リーグを抜け、プロ入り8年後の今も順位戦はC級2組だ。苦労人が粘り強い振り飛車で超エリートに一矢を報いることを期待している。

 1月の母の死もあり、俺の感性はウエットになってきた。甲斐バンドが世に出るきっかけになった「照和」でのライブを収録した「照和 My Little Town KAI BAND」(10年)をWOWOWで見ているうち、涙腺が決壊しそうになった。初期・中期の甲斐バンドの和風ペイストを好む俺は、感性が先祖返りしているのかと訝ったが、そうではなかった。

 YouTubeにアップされたクラッシュやマニック・ストリート・プリーチャーズを見ても泣きそうになる。決定打は〝破壊王〟キース・ムーン(ザ・フー)によるビートルズの「イン・マイ・ライフ」のカバーだ。作詞・作曲したジョン・レノンとキースはカリフォルニアでの飲み仲間だった。ソロアルバム(1974年)にも収録されているが、キースはしっとりと歌い上げている。古希が近づいている俺だが、魂は十代の曠野を彷徨っているのだろう。
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真冬の雑感~スーパーボウル、野木亜紀子が照射する日本、マイナンバーカード、斎藤幸平の今、逆風にさらされた渡辺明

2025-02-11 22:46:03 | 独り言
 第59回スーパーボウルはフィラデルフィア・イーグルスがカンザスシティー・チーフスを40対22で破り、7年ぶり2度目の王座に戴冠した。3連覇を目指したチーフスだが、前半で0対24と絶望的な状況になる。流れを決定付けたのは第1Q残り7分20秒にチーフスが犯した不可抗力とも思えるパスインターフェアだった。2インターセプトを許したチーフスQBマホームズは「自分のミスで14点を与えたことが敗因」と言い切り、この敗戦を糧に捲土重来を期していた。

 7シーズン全156話に及ぶ「コールドケース」もほぼ見ているし、主人公のリリー・ラッシュ(キャスリン・モリス)のファンでもある俺は、舞台である〝ブラザーフッドの街〟フィラデルフィアを贔屓にしている。NFLならイーグルス、MLBではフィリーズで、今回の結果には満足している。NFLは今季、50㍎超えFGをやすやすと決めるキッカーたちが続々現れ、ダン・キャンベル(ライオンズ)を筆頭に4thギャンブルを当たり前のようにコールするHCが増えた。エンターテインメント度はさらにアップしており、来季以降も楽しみだ。

 TBSチャンネルで一挙放送された「アンナチュラル」と「MIU404」を見た。ともに脚本は野木亜紀子が担当している。「罪の声」(2020年)も秀作だったが、俺がその存在を意識したのは連続ドラマW「フェンス」(23年)だった。復帰50年を迎えた沖縄で起きたレイプ事件の真相に迫っていく。日米地位協定、珊瑚礁破壊、辺野古移設問題、福島原発による子供たちの被曝までストーリーに織り込んでいる。資本主義の矛盾を後景に据えた「ラストマイル」(24年)が典型だが、野木の脚本はテーマ性とエンターテインメント性を併せ持っている。「アンナチュラル」と「MIU404」も同様で、キャラ設定の素晴らしさも群を抜いている。

 母の死は既報通りだが、人が死ぬことの意味と、後作業の煩雑さを実感している。年金事務所や国民共済、金融機関には多くの書類を送付しなければならない。相続など手続きが入り組んでいる遺族の中には行政書士に依頼するケースもあるという。何とかヤマは越えたと思って中野区役所に戸籍抄本を取りいって愕然とする。パスポートも免許証もない俺は、関連する自治体を訪ねるのが無理ならマイナンバーカードを取得するしかないと担当者に言われたのだ。俺は自説を曲げて取得を申し込んだ。

 先日開催されたグリーンズジャパンの総会では<脱成長>が後退した感を否めなかった。<脱成長>といえば思い浮かぶのが斎藤幸平(経済思想家)で、当ブログでも繰り返し紹介してきた。<脱成長>とは、行き過ぎた資本主義に警鐘を鳴らし、GDPに囚われない生き方を志向する。ミニシュパリズム、ローカリゼーション、ワークシェア、地産地消を包含する。斎藤は全ての市民にとっての共用財、公共財である<コモン>の概念を重ね、<脱成長コミュニズム>を提唱した。多様性、環境問題、民主主義ともリンクしているが、世界の状況は斎藤の希望と真逆になっている。

 斎藤は今、世界の俊英が集うドイツの研究所で分科会<資本主義を超えて>の座長を務めている。その様子を追った「人新世の地球を生きる~経済思想家・斎藤幸平 脱成長への葛藤」(NHK・BS)を、1カ月ほど〝積録〟状態だったがようやく見た。マルクスが自然との共生を説いた草稿を学び、自らアメリカやカナダを旅して人々と交流するが、〝資本主義のご本尊〟たるニューヨークでは反応は冷たかった。〝自由の国でどうして欲望を抑制しなければならないのか〟がアメリカ人の共通認識である。

 哲学者、思想家は実践によって道を示さなければならないと考える斎藤にとって、アメリカ先住民やカナダの環境学者との交流は大きな励ましになった。先住民たちの自然観、環境学者の指標は変わりうる世界の第一歩と確信した斎藤はドイツに戻り、<脱成長>が社会に根付きつつあることに希望を抱く。新境地を示す斎藤の次の著書が楽しみだ。

 渡辺明九段が逆風にさらされている。フットサル中に左膝前十字靱帯を断裂した痛みを堪え切れず、A級順位戦でも相次いで対局途中での投了を余儀なくされた。さらに先日、漫画家の伊奈めぐみとの離婚が公表された。論理的で棋界のオピニオンリーダー的な役割を果たしてきた渡辺は、〝魔王〟のニックネーム通りヒール的存在でもあった。そんな渡辺のイメチェンに貢献したのが元妻の「将棋の渡辺くん」で、愛すべきキャラとして将棋ファンに受け入れられた。心身の傷を癒やした渡辺が藤井聡太七冠とタイトル戦で相まみえる日を楽しみにしている。
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母の死去で心潤む日々

2025-01-31 16:59:20 | 独り言
 今年に入って母が入居していた老人ホームから、体調不良を伝える電話を何度も受けた。そして27日朝、死去の知らせが届く。鬱血性心不全と診断されたが、広い意味で老衰といえるだろう。取るものも取りあえず京都に向かった。小規模の家族葬で、住職である従兄がサポートしてくれたので、葬儀の流れはスムーズだった。
 
 母は享年97で、意識的に人生をクローズした感があった。亡くなっている姉2人、母方の祖母も同様で、耳が遠かった母は補聴器着用を頑として拒絶し、携帯も聞こえないからと解約した。コロナで施設が入館禁止になるなど面会する機会は減ったが、手紙のやりとりで交流出来た。母は膨大な言葉を綴り、自身の思いを遺書代わりに伝えてくれた。

 俺は親不孝で、若い頃から母に心配をかけ続けた。定職に就かずフラフラしていた頃、母は新聞を読むのが怖かったという。俺が何かやらかしているかもしれないと心配していたのだ。数年前に脳梗塞で入院した際は母に連絡しなかった。母よりも先に死ぬというのは最大の親不孝で、妹を亡くしている母を悲しませたくなかった。俺の唯一の親孝行は、母より後に死ねることだろう。

 母は死後の世界を信じていた。天国(極楽)で両親、姉、そして52歳で召された妹と楽しく過ごす日々を待ちわびていた。そこに俺が加われるかは甚だ疑問で、悪行の報いから地獄に落ちる可能性が高い。これから善根を積んだら天国に行けるだろうか。母が飼っていた猫のポン太は入居してから義弟の元で暮らしているが、既に18歳で病に蝕まれ、桜の時節を迎えるのは難しそうだ。母の元を追いかけていくのだろう。

 俺が難儀しているのは、事後作業の繁雑さだ。年金受給の差し止め、市役所への書類提出、銀行での相続などやたら面倒くさい。人が死ぬことの意味を実感しながら、記憶の底から母の姿を拾っている。挙げていったらきりがないが、妹夫婦と東京にやってきた25年前のことを思い出している。当時70代前半だった母だが、今の俺より元気に歩いていた。妹が入院を繰り返していた時は、俺も帰省して義弟の運転する車に乗って病院を往復した。息子代わりに尽くしてくれた義弟に感謝している。

 料理はうまくなかった母だが、俺のソウルフードは母特製ののり巻きだ。酢飯の上に卵焼き、ソーセージ、キュウリを載せて巻く寿司が大好物で、わが家では恵方巻きとしてだけでなく、遠足や運動会などのイベントの定番になった。その後も帰省した時に頬ばり、母の握力が落ちてからは妹が受け継いでくれた。

母の大好きな言葉だった<絆>の意味が身に染みた日々だった。夢の中に母は現れるだろうか。
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ハラリ、ジョン&ヨーコ、そして成長神話の虚実~三が日に考えたこと

2025-01-04 22:45:45 | 独り言
 あけましておめでとうございます。三が日に外出したのは2日だけで、鈴本演芸場の初席第3部に足を運んだ。立ち見も出るほどの盛況で、手練れの演者が次々に高座に現れたが、初めて聞く五街道雲助の「勘定板」が印象に残った。江戸時代の厠(トイレ)をテーマとしたブラックな噺が飄々とした雲助にマッチしていた。

 少しでも有意義に過ごそうと、年末年始にNHK・BSで録画しておいたNHKスペシャル3本を見ながら、今年がどんな年になるか考えた。まずは「情報は人類を滅ぼすか~ユヴァル・ノア・ハラリ 現代を読みとく」から。ハラリはイスラエル人の歴史家で、敷居が高そうな「サピエンス全史」は漫画版(上下)で読んだ。同番組は3月に日本で発刊される新作「NEXUS 情報の人類史」プロモーションの一環かもしれない。

 進行役はCG化されたレオナルド・ダ・ヴィンチが務めた。〝知への欲求が人間の本性〟と語るレオナルドは当時と500年後を対照し、四角い箱(スマホ)に着目する。ハラリは冒頭、<情報は真実で、真実の原材料である>と考えるのは誤りと警鐘を鳴らし、「情報の多くはでたらめで真実ではない」と続ける。誤った情報は事実以上に人々を結び付ける。典型的な例は米大統領選の討論会におけるトランプの発言だ。トランプは「移民たちは犬や猫を食べている」と切り出し、即座に司会者に否定されたが、ネットでは事実であるかのように広がり、トランプ支持派を勢い付けた。

 ハラリは検証するのに苦痛と時間が伴う真実より、<偽の情報=フィクション>の方が広がりやすいと語り、17世紀にドイツ・バンベルクで起きた魔女裁判の例を挙げる。人口の10分の1に当たる1000人が処刑された背景にあるのは「魔女への鉄槌」という書物で、内容は完全なフェイクだが、活版印刷の浸透により大ベストセラーになった。ハラリは現在のSNSと重なる部分があると指摘した。

 ハラリは歴史を解く鍵に物語を挙げる。ロシア社会におけるユダヤ人弾圧はポグロムと呼ばれる。1903年に惨殺を目撃したユダヤ人のビアリクが書いた詩はイスラエルの教科書にも掲載され、断固闘う姿勢が醸成された。このことが現在のパレスチナ情勢の背景にある。最強の軍事国家となったイスラエルは、その成功体験により、自らより弱い者に共感する力を失ったと語っていた。

 虚偽の情報を最も巧妙に利用したのはヒトラーとスターリンだった。ハラリはAIが独裁政権保持に使われる可能性を危惧している。米大統領選でディープフェイクが用いられたケースは枚挙にいとまない。技術の進歩で混沌とした世界に希望があるとすれば、自己修正メカニズムだという。二元論に捕らわれがちだが、自分に知らないことがあると意識し、<事実は2つある>と受け入れれば、対立を克服する道は開けると結論付けていた。

 「ジョンとヨーコ 伝説的トークショーの5日間」(前後編)も興味深い内容だった。ジョンとヨーコは1972年初頭、圧倒的視聴率を誇った「マイク・ダグラス・ショー」に出演した。司会のダグラスとジョン&ヨーコがMCを務める番組で、2人が選んだゲスト――ラルフ・ネーダー、ジョージ・カーリン、ボビー・シーリン、ジェリー・ルービンら――とともにトークを進行する。反体制、カウンターカルチャーの旗手だけでなく、チャック・ペリーとも共演する。番組内では「イマジン」を演奏した。

 ビートルズは解散後、訴訟を抱えていたが、ポールと険悪だったわけではなく、友人として繋がっていたと知り安心した。〝ビートルズを壊した女〟と叩かれたこともあったヨーコだが、アーティストとしての才能だけでなく、自然と人間の調和を志向し、50年以上も前に有機農業や地産地消に価値を見いだしていた。ニクソン政権はオンエア後、レノンに国外退去を命じる。政治的ラディカリズムだけでなく、ライフスタイル全般の革新性に警戒したのだろう。

 「欲望の資本主義2025 成長神話の虚実」最新作のテーマは<成長>だった。俺は当ブログで<資本主義は限界に達しており、とりわけ人口減と高齢化が進む日本では脱成長を志向するべき>と記してきた。今回の番組でも多くの識者が持論を展開していたが、国の政策を推進してきた側と疑義を呈してきた側に温度差は明らかだった。

 自由と民主主義を確立した国の方が、結果として技術革新の成果が上がり、成長を実現する可能性が高いという仮説も、独裁政権下で成長を成し遂げた中国の例が反証になる。先進国の75%の労働者が従事する金融・保険、医療・福祉、流通・小売といったサービス産業が成長すれば、全体としての成長を支えることになると主張する識者もいるが、映画「ラストマイル」には物流業界における資本主義の冷酷な貌が描かれていた。企業は成長しても、下請け業者は生活苦に喘ぐのだ。

 <人口ボーナスは成長に寄与する>という指摘は的を射ていた。日本が高度成長出来たのも生産に従事する人口が増え、高齢者が少ないため社会保障への負担を抑えられていた。真逆の状況になった現在の日本に成長を求める基盤はない。トランプは「関税を25%に引き上げる」と主張しているが、<高関税は福祉の低下を招く>という識者の意見は理解出来なかった。

 マルクス・ガブリエル(哲学者)が利益追求と道徳を併せて志向する倫理資本主義を財界トップに説いていた。倫理と資本主義を相反する価値と俺は思い込んでいる。次週にはガブリエルと交流が深く、<脱成長コミュニズム>を提唱する斎藤幸平(経済思想家)の思索の旅にスポットを当てたドキュメンタリーが放映される。両者の現在地の違いに注目している。
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ノーベル平和賞、総選挙、米大統領選、NFL&MLB、ガザ~〝不発弾男〟の誕生日雑感

2024-10-15 22:33:56 | 独り言
 きょうで68歳になった。人生を振り返ると、一貫して〝不発弾男〟だったが正直な感想である。何も成就出来なかったが、暴発しなかっただけでもましと言うべきか。今回は誕生日の雑感を記したい。

 日本原水爆被害者団体協議会(被団協)のノーベル平和賞受賞は時宜を得たものだった。折しも石破茂首相は米軍との<核共有>に言及しており、ロシアやイスラエルによる核攻撃が囁かれている。戦前回帰を志向する極右ブロックが高市早苗元政調会長を軸に形成されつつある。裏金問題による政治不信がメインテーマになりそうな総選挙が公示された。

 金権腐敗打破は永遠の課題だが、俺は格差と貧困の是正、気候対策、安倍色の払拭をリトマス紙に考えている。自公は論外で、ベターの選択なら立憲民主党となるが、右派が顔を揃えた野田執行部は明らかに自民党支持者狙いで、大政翼賛会を目指しているかの如くだ。選挙区によっては野党共闘が整ったことに希望を抱いている。

 次々にハリケーンが襲うアメリカで、大統領選の投開票日が迫ってきた。気候危機など一顧だにしないトランプが勝ったら、自然破壊はさらに進みそうだが、支持率は拮抗している。イスラエルへの対応には大差はないし、中産階級は生活苦に喘いでいる。ハリスが抜け出せなかった理由はそこらへんにあるのだろう。

 NFLとMLBを観戦しているが、双方の進化は驚異的だ。NFLなら50㍎以上のフィールドゴール(FG)の飛躍的な成功率アップで、60㍎近くを簡単に決めるキッカーが増えた。MLBでは球速アップで、1㍄(160㌔)を当たり前に投げる投手がゴロゴロいるが、軽々と打ち返す打者が多い。筆頭格スキーンズの161㌔フォーシームを大谷がスタンドに放り込んだ。

 グリーンズジャパン(緑の党)のオンラインセミナー<ガザの状況は? この虐殺を止めるために日本や世界に何ができるのか>に参加した。第1部では清末愛砂氏(室蘭工大大学院教授)が「法の適用におけるダブルスタンダードに抗して――パレスチナ解放を考える」、第2部では杉原浩司氏(NAJAT代表、緑の党東京都共同代表)が「日本の虐殺加担を止める道」をテーマに現状を報告した。

 清末氏は国際法が適用されていないダブルスタンダードを指摘し、イスラエルが長年にわたってガザを蹂躙してきたことを批判する。物流を止め、ライフラインを止めることで、医療体制は崩壊し、まさに強制収容所になっている。シオニズムの排他性を挙げるだけでなく、憲法で平和的生存権を唱える日本が国際法違反に加担することに憤りを隠さなかった。

 杉原氏は残虐兵器と大型爆弾を使用するイスラエルに武器輸出するドイツ政府を俎上に載せ、ベアホッグ外相が緑の党共同代表であることに遺憾の意を表明していた。欧米諸国を後ろ盾に国際法を無視するイスラエルに対抗するにはBDS(ボイコット、投資撤収、制裁運動)が最後の手段と強調していた。清末氏と杉原氏の対談では、ガザ弾圧に抗議する人たちに反ユダヤ主義のレッテルを張るというイスラエルの戦略で、欧米ではリベラルも意見を表明しづらくなっているという。

 誕生日に有意義なイベントに参加出来てよかった。内容が多岐にわたるので、次稿でも触れるかもしれない。
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酷暑の日々の雑感~パリ五輪、角田大河騎手、気候危機、長崎平和祈念式典

2024-08-12 18:04:50 | 独り言
 連日の酷暑で心身にダメージを受けている。読書も進まず、映画館に足を運ぶ元気もない。前稿から中5日の更新になる今回は<酷暑の日々の雑感>を記したい。

 行き着けの接骨院の青年施術師は院長に連れられてパリを訪れ、柔道選手をチェックするスタッフとして活躍した。フェンシングチームの健闘、レスリングの金メダルラッシュに加え、男女マラソンの6位入賞にも驚かされた。アフリカ系ランナーが絶対的な資質の違いでレースを支配するのが従来のパターンだが、赤崎と鈴木は終盤まで食らいついていた。〝駅伝はマラソンランナーを育てない〟という定説は覆るかもしれない。

 五輪で輝いた選手たちと同世代の角田大河騎手の死を、JRAが公式に発表した。藤田伸二元騎手がYouTube公開中に第一報が伝えられ、スタッフの「電車で」という声に、上野幌駅で起きた人身事故との関連が俎上に載せられた。角田騎手は函館競馬場のコースに車で進入した件で事情聴取を受ける。騎手が聖地であるコースに乗り入れるなど許されない行為だが、免許取り消しを仄めかされ大きなショックを受けたとの報道もある。

 闇の部分も多く、推察だけで語るのは無理がある。だが、彼はまだ21歳で、1年間の騎乗停止といった重い処分が科されたにしても、厩舎での地道な作業に従事するなどして信頼を勝ち得たら、さらに大きくなって復活する可能性はあったはずだ。仲間の騎手たちも追悼のコメントを寄せている。JRAは更正への道を担保することは出来なかったのだろうか。

 「報道1930」(BS・TBS)は8日、<格差と不平等と「気候正義」>と題された特集を組み、温暖化への警鐘を鳴らしていた。日本近海の海面水温は28度に迫っており、ゲリラ豪雨のみならず、台風が頻発する危険な状況が予想されている。俺が所属するグリーンズジャパンでは<ストップ! 地球温暖化~1・5C目標 これで日本の責任を果たす!>のパンフレットを作成した。充実した内容で、関心のある方はHPをチェックしてほしい。

 日本では認知度が低いが、<ティッピングポイント>という気候危機の指標がある。グリーンランド氷床の融解、西南極氷床の融解、アマゾン熱帯林の喪失など数ポイントがあり、相互に影響し合って温暖化に突き進む可能性が高い。2030年までに電源構成で再エネ75%を達成し、断熱規制とガソリン車規制が求められるが、日本では遅々として進んでいない。依然として原発推進の方向だが、コスト高のみならず地震が頻発する現状を考えたら、明確に原発ゼロの姿勢を打ち出す時機に来ている。

 俺は経済に疎く、二酸化炭素削減の具体的な道筋を説明することは出来ない。だが、学習会でパンフ作成に当たったMさんの言葉が参考になった。ドイツで目標達成の可能性が現実味を帯びたことがある。マイナス成長だったからだという。気候危機は不平等や貧困の解決を前提に、脱成長、ローカリゼーション、ワークシェア、地産地消とリンクすることが克服の第一歩ではないかと直観した。その旨を発言したら賛同を得られた。

 トランプは気候危機を無視し、<掘って、掘って、掘りまくれ>と資源採掘と大量使用を宣言している。大統領選については稿を改めて記したい。

 最後に長崎平和祈念式典について。長崎市がイスラエル大使を招待しなかったことに抗議し、米、英、独、仏、伊、加、EUの大使が欠席した。これに重なるのがパリ五輪で、ロシアは戦争を理由に出場していないが、国際法に違反し、国際司法裁判所でもジェノサイドと認定されたイスラエルは出場している。ダブルスタンダードを拒否した長崎市は評価すべきだ。

 ああ、疲れた……。次回は中3日で更新したいが、材料がない。
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初夏の雑感あれこれ~日本ダービー、MLBの若きモンスターたち、藤井聡太を継ぐ者

2024-05-23 21:44:33 | 独り言
 日本ダービーの枠順が決まった。競馬歴45年の俺にも、ダービーには様々な思い出がある。初めて馬券を取ったのは1982年で、バンブーアトラス-ワカテンザンの枠連は2800円だった。勤め人時代に参加していたPOGは指名馬4頭という小規模なものだったが、97年のダービー馬サニーブライアンは皐月賞を勝ったにもかかわらずフロック視され7番人気で、シルクジャスティスとの馬連は4860円だった。

 フリーになってメンバーになったPOGはレートが高く、気合が入った。2012年のダービーはディープブリランテ-フェノーメノの指名馬ワンツーという最高の結末で、19年に2番手追走から逃げ切ったロジャーバローズも記憶に新しい。欲というより愛を覚えていたのは17年に3着に敗れたアドミラブルだった。9月に喘鳴症で9着に惨敗したが、5カ月半ぶりに復活して3連勝し、1番人気に推される。競馬サークル内の空気も〝確勝〟だっただけに、レース後の落胆は大きかった。

 今はPOGと関係ないし、少額しか賭けないから、冷静に楽しむことが出来る。皐月賞馬の⑮ジャスティンミラノを中心視せざるを得ないが、相手は⑧アーバンシックと⑬シンエンペラーを考えている。応援するのはアドミラブルで無念の涙を流し、来年に定年を控える音無師が送り出す⑩サンライズジパングだ。シンエンペラーとサンライズジパングは重厚な欧州血統で、スピード決着にどう対応するか注目したい。

 MLBを観戦する機会が増えた。大谷、山本が牽引するドジャーズはポストシーズンを見据えているし、七色の変化球を駆使するダルビッシュの進化には目を瞠る。通用しないと決めつけていた今永のMLB仕様の変身には驚いたし、菊池と鈴木も頑張っている。日本人以外に若きモンスターたちを見つけた。NFLにもモンスターは多いが、システムに縛られている感がある。以下の3人は解き放たれたフィジカルエリートだ。

 レッズのエリー・デラクルーズ(22)はホームラン王と100盗塁を狙える強肩の内野手だ。オリオールズのガナー・ヘンダーソン(22)は内野ならどこでもこなせるユーティリティープレーヤーで、今季すでに16ホーマーを記録している。パイレーツのポール・スキーンズ(21)はフォーシームの平均球速が160㌔の剛腕ルーキーで先日、6回無安打11三振で初勝利を挙げた。数年後、彼らはどこまで進化しているのだろう。

 おととい(21日)行われた竜王戦6組決勝は注目の対局だった。藤本渚五段は18歳の最年少棋士、対する山下数毅三段は15歳の奨励会員で、三段リーグで次点1回を獲得している。この対局で勝てば次点1回が与えられるので、2回で4段昇段となりプロ入りが確定するのだ。両者は研究仲間でもあり、手の内は知り尽くしている。山下優勢の場面もあったが、最後は藤本が貫禄を見せた。

 藤井聡太八冠からタイトルを奪う者は誰かと聞かれたら、将棋ファンはまず叡王戦で藤井をカド番に追い詰めている伊藤匠七段(22)を、次に藤本と山下を挙げるだろう。ポイントになるのは若さだ。三段リーグには44人がひしめき、年間でプロになれるのは4人という狭き門である。天才たちは練習将棋で切磋琢磨し、AIを導入して最先端の戦法を研究している。四段昇級を果たした棋士が涙ぐむのもわかる気がする。
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真冬の雑感~NFL、米大統領選、英米仏の苦悩、王将戦

2024-01-29 21:06:55 | 独り言
 NFLチャンピオンシップが行われ、スーパーボウルの組み合わせは49ers対チーフスに決まった。ホームであるにもかかわらずペナルティーで100yd近く罰退したことがレイヴンズの第一の敗因といえる。ライオンズはフィールドゴール圏内で4thギャンブルを2度失敗し、相手にモメンタムを与えてしまった。とはいえ、随所に煌めくプレーがちりばめられており、アメフトの面白さを堪能出来た2試合だった。シーズン全般の感想はスーパーボウル直後に記したい。

 大統領選も着々と進行し、共和党ではトランプ前大統領がニューハンプシャー予備選でもヘイリー元国連大使を破り、指名に向けて前進する。だが、得票率の差は10%強だし、裁判を抱えている。ヘイリーにとって自身が知事を務めた来月下旬のサウスカロライナ州が正念場になるだろう。議会襲撃に関与したと思われる前大統領の復帰なんて狂気の沙汰で、民主主義を標榜する国とは思えないが、そこに日本人としての錯覚がある。

 スウェーデンのテレビクルーが1960年代後半、アメリカのブラックパワーを取材したフィルムを再編集した「ブラックパワー・ミックステープ」を12年前、当ブログで紹介した。深刻な差別の実態、福祉や医療の遅れを詳らかにし、<アメリカは不自由で非人道的な後進国で、ベトナム戦争はナチスに匹敵する暴虐>と断じたことで、アメリカはスウェーデンと国交を断絶する。トランプ台頭を見る限り、当時の指摘は正しかったのだ。

 一方のバイデンは1億㌦(141億円)の資金を既に調達し、全米自動車労組の支持も取り付けた。健康さえ維持出来れば指名は確実で、保守的なケンタッキー州知事選で妊娠中絶を唱える民主党候補が勝利を収めたことを考えると、トランプと一騎打ちになっても五分に戦える可能性はある。だが、イスラエル寄りの姿勢で、イスラム系団体から見限られた。若い層(18~39歳)の47%がパレスチナを支持していることを考えると、将来に向けた戦略も求められる。

 不安定なのはアメリカだけではない。欧州では英仏独が政情不安を抱えているが、背景にあるのはコロナ禍とロシアのウクライナ侵攻だ。英国では物価高止まりや財政緊縮による景気低迷を打破するため、多くの国民が減税を求めている。応えようとしない保守党政権の支持率は大幅に低下し、総選挙では労働党に大敗北を喫する見通しだ。

 フランスとドイツでは農民の反乱が起きている。エネルギーや燃料の価格は上昇しているのに販売価格を抑えられたことで、生活が成り立たなくなっているのだ。ドイツではシュルツ政権への不支持が80%を超えた。政権与党は〝財政トリック〟で公約として掲げた農家支援を反故にした。日本と景色が異なるのは大規模な抗議活動だ。数千台のトラクターが大都市に繰り出し、市民も理解を示している。民主主義は健在なのだ。

 王将戦は藤井聡太八冠が菅井竜也八段に3連勝し、防衛に王手を掛けた。才能とAIを駆使した研究の深さで〝絶対王政〟を確立した藤井を慌てさせる棋士はいるのだろうか。ストイックで気合に満ちた菅井を応援していたが、王将戦では圧倒されている。となれば、竜王戦に続いて今週末に始まる棋王戦で藤井に挑戦する伊藤匠七段、18歳の藤本渚四段に期待を寄せるしかない。10歳前後で奨励会にも入会していない少年が、いずれ藤井の牙城を崩すかもしれない。
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