新宿コマ劇場の半世紀の歴史にピリオドが打たれる。ACB、リキッドルーム、オールナイト映画、出会い、空騒ぎ、夜と朝の狭間の彷徨……。コマ周辺には懐かしさ、ほろ苦さ、後ろ暗さがぎっしり敷き詰められている。年内閉館のニュースに、思い出のページが破られるような寂しさを覚えた。
録画しておいた「ジャッキー・ブラウン」(97年、タランティーノ)と「カクタス・ジャック」(04年、ロサーノ)を続けて見た。ロサーノは”ポスト・タランティーノ”の呼び声高いメキシコの新鋭である。
俺の中でタランティーノは、以下の二つの貌を持っている。
<A>…邦画、香港ノワールの影響が濃い。ユーモア、奇矯さ、気の利いた台詞をちりばめたピカレスクを作る映画オタク
<B>…ジグソーパズル型群像劇を確立したロバート・アルトマンの後継者。時間と空間を切り刻み、複数の主観でストーリーを綴っていく
「ジャッキー・ブラウン」は両方の要素を程よく調和させた作品で、映画館で見た時、「うまいなあ」と独りごちた。
ジャッキー役のパム・グリアーは70年代、アフリカ系アメリカ人向けインディー映画で名を馳せた。撮影時の年齢は設定(44歳)より上だが、妖艶さがこぼれる魅力的な熟女である。航空会社添乗員のジャッキーは非合法の副業を摘発され絶体絶命に陥るが、一発逆転の大勝負に打って出る。50万㌦の取引を複数の主観でパラレルに重ねた部分が、本作最大の見せ場といえるだろう。
サミュエル・L・ジャクソン(オデール=銃密売業者)、ロバート・フォスター(保釈業者)、ブリジッド・フォンダ(オデールの情婦)、ティム・バートン(捜査官)……。錚々たる面々が脇を固める中、異彩を放っていたのはロバート・デニーロ(ルイス=オデールの相棒)だ。情けない中年男役で芸域の広さを見せ付けていた。
ストーリーだけ説明すれば、ジャッキーは映画史に輝くヴァンプだ。そんな感じがしないのは、本作が寓話の高みに達しているからだ。登場人物は<何か>に操られて神性を帯び、虚実、正邪、善悪を超越している。
「ジャングル・フィーバー」(91年、スパイク・リー)でシリアスに描かれた異人種間の恋愛を、タランティーンは軽くスキップしている。サントラも魅力的で、オープニングの「110番街交差点」(ボビー・ウーマック)と「ストリート・ライフ」(ランディ・クロフォード)は、映像とともに記憶に残る。
「カクタス・ジャック」は<A>タイプのジェットコースター・ムービーだ。偶然とご都合主義を積み重ね、奇妙な予定調和を導いたロサーノの才気に注目したい。メキシコはここ10年、名匠たちを輩出しているが、<B>に連なるのはアレハンドル=ゴンザレス・イニャリトゥだ。「アモーレス・ペロス」と「バベル」では、技法の確かさだけでなく志の高さも示してくれた。
「パルプ・フィクション」、「ジャッキー・ブラウン」、「12時間の死闘/前後編」(CSI科学捜査班シーズン5)が、俺にとってタランティーノ3大傑作だ。<B>路線でイニャリトゥに負けない映画を作り、アルトマンの正嫡であることを証明してほしい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyo_uru.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/etc_building.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/airplane.gif)
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録画しておいた「ジャッキー・ブラウン」(97年、タランティーノ)と「カクタス・ジャック」(04年、ロサーノ)を続けて見た。ロサーノは”ポスト・タランティーノ”の呼び声高いメキシコの新鋭である。
俺の中でタランティーノは、以下の二つの貌を持っている。
<A>…邦画、香港ノワールの影響が濃い。ユーモア、奇矯さ、気の利いた台詞をちりばめたピカレスクを作る映画オタク
<B>…ジグソーパズル型群像劇を確立したロバート・アルトマンの後継者。時間と空間を切り刻み、複数の主観でストーリーを綴っていく
「ジャッキー・ブラウン」は両方の要素を程よく調和させた作品で、映画館で見た時、「うまいなあ」と独りごちた。
ジャッキー役のパム・グリアーは70年代、アフリカ系アメリカ人向けインディー映画で名を馳せた。撮影時の年齢は設定(44歳)より上だが、妖艶さがこぼれる魅力的な熟女である。航空会社添乗員のジャッキーは非合法の副業を摘発され絶体絶命に陥るが、一発逆転の大勝負に打って出る。50万㌦の取引を複数の主観でパラレルに重ねた部分が、本作最大の見せ場といえるだろう。
サミュエル・L・ジャクソン(オデール=銃密売業者)、ロバート・フォスター(保釈業者)、ブリジッド・フォンダ(オデールの情婦)、ティム・バートン(捜査官)……。錚々たる面々が脇を固める中、異彩を放っていたのはロバート・デニーロ(ルイス=オデールの相棒)だ。情けない中年男役で芸域の広さを見せ付けていた。
ストーリーだけ説明すれば、ジャッキーは映画史に輝くヴァンプだ。そんな感じがしないのは、本作が寓話の高みに達しているからだ。登場人物は<何か>に操られて神性を帯び、虚実、正邪、善悪を超越している。
「ジャングル・フィーバー」(91年、スパイク・リー)でシリアスに描かれた異人種間の恋愛を、タランティーンは軽くスキップしている。サントラも魅力的で、オープニングの「110番街交差点」(ボビー・ウーマック)と「ストリート・ライフ」(ランディ・クロフォード)は、映像とともに記憶に残る。
「カクタス・ジャック」は<A>タイプのジェットコースター・ムービーだ。偶然とご都合主義を積み重ね、奇妙な予定調和を導いたロサーノの才気に注目したい。メキシコはここ10年、名匠たちを輩出しているが、<B>に連なるのはアレハンドル=ゴンザレス・イニャリトゥだ。「アモーレス・ペロス」と「バベル」では、技法の確かさだけでなく志の高さも示してくれた。
「パルプ・フィクション」、「ジャッキー・ブラウン」、「12時間の死闘/前後編」(CSI科学捜査班シーズン5)が、俺にとってタランティーノ3大傑作だ。<B>路線でイニャリトゥに負けない映画を作り、アルトマンの正嫡であることを証明してほしい。
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