酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

シネフィル・イマジカに感謝~04年に見た映画

2004-12-30 19:19:29 | 映画、ドラマ

 ここ10年、殆ど映画館に足を運んでいない。今やレンタル会員でさえないのだが、04年になって考えを改めた。映画に限らないが、ここでインプットしないと、薄っぺらで味気ない晩年になると感じたからである。

 手始めにスカパーの映画セットに入った。再会した映画たちは逸品ぞろいで、「空白の10年」が惜しくなった。とりわけシネフィル・イマジカの放映作は粒ぞろいで、以下に主だったものを挙げてみたい。

 まずはロック映画から。「ヘドヴィグ・アンド・アングリーインチ」は狂おしく衝撃的な作品だ。生きること、愛することの意味をロックに託して表現している。「ドニー・ダーコ」は全体像を把握しきれていないが、オープニングで「キリング・ムーン」が流れた瞬間、鳥肌が立った。自由への希求を描いた「バンディッツ」も鮮烈だった。

 イランを代表するマフマルバフ監督の「カンダハール」「パンと植木鉢」などの作品にも感銘を受けた。物語と神話を分かつものが寓意だとしたら、マフマルバフ作品は映画を超えていると思う。

 触れる機会が少ない国の映画にも出会った。ルーマニアの「神の口づけ」、アルバニアの「ティラナ零年」、インドの「死の玉座」は、奥が深く宿命に彩られた作品だった。パレスチナの「エルサレムの花嫁」、ロシアの「シスターズ」はそれぞれの国の実情が浮き彫りになる秀作で、メキシコの「天国の口、終りの楽園」は切ないラストが秀逸の青春ロードムービーだ。

 「ワンダフルライフ」「ディスタンス」の是枝監督については別項で記した。監督という点では、「親愛なる日記」のモレッティ、「オール・アバウト・マイ・マザー」のアルモドバルといった俊英を知ることが出来、幸いだった。

 さらに「ドーベルマン」「にぎやかな森」「ロストチルドレン」「僕のバラ色の人生」「スペシャリスト」……、挙げればきりがない。目からウロコの一年だった。

 シネフィル・イマジカでのベスト5を挙げれば、「ヘドヴィグ・アンド・アングリーインチ」「パンと植木鉢」「オール・アバウト・マイ・マザー」「ワンダフルライフ」「天国の口、終りの楽園」になろうか。

 シネフィル以外なら、NHK-BSの「アンダーグラウンド」,ムービープラスの「ダスト」、WOWOWの「過去のない男」「シティー・オブ・ゴッド」あたりが印象に残った作品だった。

 日本映画専門チャンネルで放映された9話からなる「演じ屋」も大きな発見だった。ストーリーが進むにつれて主人公たちへの感情移入が強まり、遂には自分と重なってくる作品である。

 映画に夢中になると、現実逃避の傾向が強くなってしまう。「カイロの紫のバラ」のセシリアのように……。映画を見なかったのも、無意識のうちに自分にブレーキを掛けていたからかもしれぬ。来年から無職だし、1年後の自分が心配になってきた。
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「非国民」が選ぶ04年スポーツベスト10

2004-12-28 23:18:09 | スポーツ

今年も残りわずか。スポーツ界もビッグニュース目白押しの一年だった。以下に、試合そのものにスポットを当て、極私的ベスト10を選んでみた。

①イチローのシーズン安打記録更新~認知された日本野球(MLB)
②ピストンズがレイカースを粉砕~ラリー・ブラウンの執念(NBA)
③ギリシャのユーロ2004制覇~欧州過密日程が生んだ大穴(サッカー)
④P・マニングのタッチダウン新記録~全米熱狂のマリーノ超え(NFL)
⑤レッスルマニア20でゲレロ&ベノワ戴冠~ブラック・タイガーとワイルドペガサスの到達点(WWE)
⑥マットを這ったビッグネームたち~ロイ・ジョーンズとデラホーヤの落日(ボクシング)
⑦立命と関学の死闘~シナリオのない2幕の傑作劇(関西大学アメフト)
⑧バルセロナ復活~オランダ色を一掃したライカールトの賭け(サッカー)
⑨Qちゃん落選と野口の金~曖昧さが拭えぬ選考ドラマ(アテネ五輪)
⑩同志社復活の兆し~数年後の日本一に向け(大学ラグビー)

 スポーツに限らず、アイデンティティーをたやすく感じることがない。そんな俺だが、イチローは熱心に応援した。記録達成が迫るにつれ、割り算したり引き算したりの日々が続く。10月2日朝には、大きな感動と解放感を味わうことが出来た。イチローは個人主義者、新人類と評されることが多いが、守備、走塁に至るまでフォア・ザ・チームに徹している。純粋で頑固、クールで無欲。シーズン中は孤高を保ち、不言実行を貫く。「遅れてきた侍」というのが、真実の姿に近いのでは。

 最近のスポーツ界では、金満チームが選手をかき集めている。そんな中、ピストンズに快哉を叫んだ。重長厚大の見本で絶対本命のレイカースを、組織的な守備、スピード、運動量で4勝1敗と圧倒する。エキサイティングで胸がすく10日間だった。

 以上が04年の1、2位だが、来年もスポーツに熱くなりそうだ。年明け早々、大学ラグビーで同志社が早稲田に挑む。俺は30年来、対戦相手が母校であっても同志社を応援してきた。そしてW杯予選。テレビの前で声を嗄らさねばならぬ。日本に声援? いや、俺は10代の頃からオランダサポーターなのである。
 
 ひねくれ者、それとも外れ者? さらに言えば「非国民」……。

 学問に励まない「非学生」、仕事嫌いな「非社員」はごまんといる。スポーツぐらい「非国民」でもいいと思うのだが……。

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人生いろいろ~夢の続きは金杯で

2004-12-27 07:41:14 | 競馬

 俺の不人気ブログも、競馬の時だけ反響がある。有馬についての前項、これまでにない数のアクセス、トラックバックをいただいた。「予想という坩堝」に身を焦がすギャンブラーたちが覗いてくれたのだろう。どうもありがとう。

 「片方でも連に絡めば、人生いろいろと達観を装うつもり」と書いたタップが2着、シルクが3着……。強く推したコイントスはビリと、有馬は目も当てられぬ結果となった。今後は俺のGⅠ予想を、的中への「逆テキスト」「消去材料」として活用してほしい。

 俺を含め、バルクを買った人は釈然としていないはずだ。五十嵐騎手は陣営の指示通り、中団待機でゼンノをマークしたが、見せ場は全くなかった。型に殉じて逃げ粘ったタップ=佐藤哲コンビと対照的である。あまりにカタルシスのないレースぶりだった。

 ブログを始め、競馬へのスタンスが変わった。データや血統を我流で分析したり、勝手にストーリーを仕込んだりと、「理」と「妄」を組み合わせ、予想を楽しむようになった。「騎手偏差値」も少しずつ見えてきたような気がする。ペリエ>デム-ロ=ルメール>武=安藤勝>岩田=内田博>その他の中央騎手……。意見は分かれると思うが、こんな風な基準で予想している。本当の実力って、どうなんだろうか?

 人生いろいろ、競馬もいろいろ……。「いろいろ発言」は首相の言葉としては最低だが、使いようによっては含蓄あるフレーズだと思う。肩肘張らず、流れるように生きていければいいのだが。

 サンデーのラストイヤーは金杯から。「ポストサンデー」の種牡馬っているんだろうか。戦国時代の方が、予想も楽しくなるだろうけど。 

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コインを投げて、表より裏~有馬記念に託す夢

2004-12-25 11:51:12 | 競馬

 イブの夜から朝にかけ、しんしん冷える静寂の底、グランプリに思いを巡らせた。でも、決して孤独ってわけでもない。顔も知らぬギャンブラーどもと一緒に、予想という巨大な坩堝を囲んでいるからだ。クリスマスは20年勤めた会社にオサラバする日でもあるが、感慨も未練もなく、むしろサバサバ乾いている。予想もクールにバサバサ斬っていこう。

 さて、本題。馬柱に載っていることさえ忘れたいのが②ピサノ、⑦ユキノ、⑫ジャーニー。一頭でも連に絡めば、引きつった笑いで新年を迎えよう。③ハイアー、⑤ハーツのボンボン2騎は、菊花賞→JCのローテに耐えられそうもない。連に絡めば「競馬は血統だ」とうそぶけばいい。

 ⑮ドンの芝での能力を測るに格好の馬がいる。バランスオブゲームだ。皐月賞はドン7着、ゲーム8着、ダービーはドン6着、ゲーム7着、菊花賞はドン4着、ゲーム5着とクラシックで並んでゴールした。ドンは菊花賞後、JBCクラシック1着→JCD3着とダート界のトップに躍り出たが、芝で走っていたらゲームとドッコイだったと推測する。この馬が勝ち負けしたら、「凄いな、アンカツ」で済ませよう。

 ⑥シルク陣営のトーンが低い。前走時がデビュー以来の最低体重というのも気になる。⑨タップもローテの不安に加え、急きょ引退撤回と不透明な部分がある。片方でも連に絡めば、「人生(馬生?)いろいろ」と達観を装うつもりだ。

 JCで復活の兆候を見せた⑪ヒシミラクルだが、菊花賞馬として臨んだ2年前の惨敗が気になる。同期のクリスエス、ノーリーズン、牝馬ファインにまで後塵を拝し11着。同じくサッカーボーイ産駒ナリタトップロードも有馬では7、9、10、4着だった。血統的に中山が苦手な可能性もある。奇跡を起こすには人気になり過ぎだ。勝てば素直に称賛したい。

 残ったのは6頭。陣営の悲願達成を祈りつつ◎④コスモバルク。○⑭コイントス、▲①ゼンノロブロイ、☆⑬ツルマルボーイ。この4頭で馬連を買い、△⑩デルタブルース、注⑧ダイタクバートラムは3連複で押さえるつもりだ。

 藤沢コインをひょいと投げたら、96%は表のゼンノ=ペリエ、3%が裏のコイン=岡部。スムーズなゲート出が条件だが、表より裏に夢を託そう。ちなみに残り1%はコインが立った時。ピサノ=藤田が来たら、まさに奇跡である。
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今日は何の日~クリスマスイブイブ?

2004-12-23 05:19:05 | 社会、政治

 今日は何で休みなんだろう。そうか、天皇誕生日だ。

  04年、皇室崇拝者なら気に病みそうな出来事が続いた。だからといって、「神聖で模範的な家族」から「普通の有名な家族」にシフトしたというのは一面的な捉え方だと思う。

 日本人にとって天皇は何かを知りたければ、国会見学をお勧めする。年に数回、合わせて1時間使うかどうかの天皇控室は、贅を尽くした調度が施されている。天皇専用の廊下、階段、エレベーターも同様だ。選良意識の塊みたいな国会議員も、天皇に頭を垂れるより他ない。主権在民がどこより疑わしく思える場所が国会という皮肉……。それがこの国の民主主義の形なのだろう。

 皇室の権威にひれ伏さなかった者もいた。社会党? 共産党? まさか! 

 連合国最高司令官マッカーサーである。国会に足を踏み入れるや、「ガッデム」と口走った(に違いない)。こんなことを放置しては、オイラが帰った後、昔みたいに天皇がイチバーンになっちまう。さて、どうする? 思案した後、マッカーサーは建設業者を呼びつけた。天皇控室の遥か頭上に部屋を造れと命令したのである。

 こしらえたのはダンスホールである。突貫工事だったに違いないが、マッカーサーは天皇の真上で踊らないと気が済まなかったのだ。子供じみてはいるが、支配の哲学なんて大概その程度のものである。

 幸か不幸か、現実はマッカーサーが危惧した方向に進まなかった。天皇誕生日は今や、クリスマスの前にかすんでしまっている。

 そういや昨日、電車の中で高校生らしき少年たちの面白い会話を聞いた。
 「クリスマスってさ、イエスが死んだ日だっけ」
 「十字架で血流したんだぜ。そんな日にケーキ食うか」
 「そうか、復活した日か」

 楽しむのに理由は要らないってことだろう。
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04年MYフェイバリットアルバム

2004-12-21 12:31:29 | 音楽

 今年発売されたアルバムから10枚をピックアップし、順位をつけて並べてみた。

①STILLS“LOGIC WILL BREAK YOUR HEART”
②SONIC YOUTH“SONIC NURSE”
③SNOW PATROL“FINAL STRAW”
④JUDE“ZHIVAGO”
⑤PJ HARVEY“UH HUH HER”
⑥INTERPOL“ANTICS”
⑦KASABIAN“KASABIAN”
⑧MANIC STREET PREACHERS“LIFEBLOOD”
⑨KING OF LEON“AHA SHAKE HEARTBREAK”
⑩KEANE“HOPES AND FEARS”

 UKニューウエーブの影響を受けた米バンドが増えてきた。①はNYとUKがいい具合に調和している。⑥はそのままジョイ・ディビジョンって感じだが……。

 ベテランながら頑張っているのが②と⑧。②は永遠の前衛、⑧は泣きが入った過激おやじ。ともに来年やって来る。今からライブが楽しみだ。

 ④は日本、⑤はUKでそれぞれ長く活躍しているアーティスト。鋭くて硬質、内向きの音だ。狂気と純粋が混ざり合い、痺れるような感覚に浸れる。

 ③、⑦、⑩はUK期待のバンド。③はコールドプレイ、⑦はプライマル、⑩はベン・フォールズを彷彿させる。⑨はアメリカの新鋭で、ダイナソーに似た粗っぽく投げやりな音がいい。

 ライブはミューズとレディオヘッドしか見ていない。問題なくミューズに軍配を上げる。かつてレディオヘッドは等身大のヒーローで、ライブでは無上のカタルシスを与えてくれた。そんな彼らも最近は神になったらしい。椅子に腰掛けて聴くのが相応しいだろう。

 かたやミューズは旬のバンド。本国ではグラストンベリーなど野外フェスで大トリを務め,伝説的パフォーマンスを連発した。“undisputed king of UKrock”とNMEに絶賛されている。彼らを今春、渋谷AXで見た日本人は幸せとしか言いようがない。

 年内で会社を辞める。当分働かないし、俺の年齢だと、その気があっても仕事は見つからない。当然、緊縮財政で、そのうち人道支援を要請せねばならぬ。CD購入などもっての外、年間ベストアルバムを選ぶなんて贅沢は、今年が最後になるかもしれない。
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タイムマシンな04音楽ライフ~バッヂとの再会

2004-12-20 16:27:09 | 音楽

 音楽に限れば、俺はかなりミーハーだ。「旬」と「瞬」を求めロックと付き合ってきたが、風向きが少し変わってきた。

 昨年夏、赤坂ブリッツでパティ・スミスを見たのがきっかけだった。50代半ばというのにパフォーマンスは完璧で、グリニッジビレッジの男どもを惹き付けたフェロモンも衰えていない。「今晩、付き合ってくれ」なんて言葉がステージに投げられると、パティは妖しい笑みで応えていた。

 あの夜、俺は大きな教訓を得た。信念と使命感を維持すれば、人は年齢に関係なくエネルギーを放ち続けるのだと。

 パティの磁力で時空が歪み、タイムマシンに乗って時を遡り始めた。すると、不思議だ。キュアー、モリッシー、ピクシーズといった好みのアーティストがまとめて復活したのである。「ピート、ごめん」の項で書いたフー初来日、ルースターズの一夜限りの再結成と、あちこちで休火山、死火山が噴火し、ついでに俺まで逆噴射して会社を辞めるに至った次第である。

 何より嬉しかったのは、バッヂの旧譜のCD化である。お薦めは唯一のフルアルバム「タッチ」で、粒ぞろいのポップソングが詰まっている。ライブの切れはめんたい一派でも際立っていて、ジャムの前座を務めた際、ポール・ウェラーに絶賛されたほどだ。

 ブレークしないまま風のように消えたバッヂは、ファンにとって、実らなかった恋、胸に刺さった棘のような存在であり続けたと思う。復刻盤の発売で、未完のストーリーにようやくピリオドを打てたのではなかろうか。

 ファンサイトによると、リーダーの田中さんは既に亡くなっているという。しんみりする話だが、日本のバンドで唯一、パワーポップのコンビレーションに収録されるなど、再評価は欧米で先行した。死して何を残すかが芸術家の価値を決める。田中さんもロッカー冥利に尽きると思う。
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「楽園」から「地獄」へ~北朝鮮をめぐる闇

2004-12-18 09:10:23 | 社会、政治

 1950年以降、10万近くの在日朝鮮人が希望を抱いて祖国に帰った。吉永小百合主演「キューポラのある街」には、同級生が嬉しそうに帰国を報告する場面がある。そういえば地理の教科書にも、「鉱工業資源が豊かで社会保障も整っている」という記述があったっけ。

 あの頃すでに北朝鮮は「地獄」だったはずである。何者かが意識的に虚構の「楽園」を創り出していたのだろうか?

 今となれば北朝鮮亡命なんてブラックジョークにしか思えないが、よど号事件は衝撃的だった。「我々はあしたのジョーである」と声明文を結び、赤軍派は英雄気取りで「革命の拠点」たる北朝鮮に旅立ったのである。

 中学生の頃、福井に海水浴に行った時のこと、海岸に立っていた看板に「密航者らしき姿を見つけたら連絡してください」と記してあった。何を指しているかわからぬ俺に「北朝鮮のスパイのことや」と級友が教えてくれたことを思い出した。

 福井から新潟に連なる日本海沿岸は当時、安全保障上の重点地区だったはずだ。敦賀原発は稼働したばかり、柏崎原発をめぐっては激しい反対運動が展開していた。警察関係者が目を光らせていた一帯で拉致が頻発したのは残念でならない。

 北朝鮮がテロ国家としての全貌を現すまで、韓国がアジアにおけるヒール(悪役)を演じていた。言論弾圧、金大中氏拉致、光州事件……。日本のマスコミは軍事政権下の韓国より金日成体制の北朝鮮の方がましと決め付けていた。だから80年に産経が「拉致」をスクープした時、国内の反応は極めて鈍かったのである。俺なんぞ最近まで、その記事を知らなかったほどだから。

 何者かが示し合わせて事実を隠蔽していたとしたら……。何者とは政治家? マスコミ? 隠蔽の理由は? 北朝鮮をめぐっては深い闇が横たわっている。パンドラの箱を開けた小泉首相だが、6カ国協議の枠組みと世論の板挟みになり、制裁について方針を示せずにいる。

 13日から3日間、「報道ステーション」の特集で北朝鮮の悲惨極まる映像を見た。あの国を救うには金王朝崩壊しかないと日本人は確信しているが、米、中、露、韓の4カ国は別の思惑を秘めているに相違ない。「地獄」を「地獄」として残すことの方が、自らの国益に繋がるといったような……。
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MYブーム04は落語~志ん生の話芸と生き様

2004-12-16 15:53:18 | 戯れ言

 今年に入り、古今亭志ん生の「なめくじ艦隊」を読んだ。問わず語りを弟子が筆記したものらしい。極貧の不遇時代がしみじみと、妙に明るく記されている。題名の由来は、長屋に出没したなめくじの大群だという。読後、CD全集を買い込み、繰り返して聞いた。

 さらに、スカパーで「鬼の詩」を見た。明治の落語家、桂馬喬の芸への執念を描いている。狂気の淵に踏み入れた馬喬の姿はホラーより凄惨で、心臓に直に響く作品だ。

 そうか、落語かってんでパチリ手を打ちゃあ、台本募集なんてぇ記事が飛び込んできやがる。応募せずにいられるかってんで、せっせと書き上げ送ってみるってぇーと、箸にも棒にもかかりやしねえ。ふざけるなってんだ……と落語調になってしまったが、千を超える応募があれば通るはずもない。

 俺なんぞ落語が何たるか語る資格もない初心者だし、志ん生の芸について御託を並べるのは百年早いが、生き様に感銘を受けたことは事実である。

 酒好きであちこち不義理を重ね、借金取りに追われたり破門されたりで、改名は十数回。空襲を避けて満州巡業に赴くも、現地で終戦を迎え留め置かれた。身一つで引き揚げた時、既に57歳。普通ならピリオドを打つ年齢だが、ラジオの普及で運が向いてきた。大ブレークするのである。

 綾小路きみまろは潜伏30年と称しているが、志ん生など半世紀だ。無名のまま老境に達し、65歳で全盛期を迎える人生なんて、噺家以外でも滅多に聞かない。志ん生が凄いのは死後30年、世紀が変わってもファンを増やし続けていることだ。

 俺と志ん生との共通点はといえば、50歳前にして運も金もないこと。楽天的なのもおんなじだ。よーし、俺もいつか志ん生みたいに……なんて希望を抱いてしまうが、それは無理な相談だ。俺は無芸大食、志ん生には鍛錬と放蕩で培った芸がある。悔しいことに、艶福家でもあったそうな。
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教育という名の凶器~「チームアジア」を阻むもの

2004-12-14 04:19:11 | 社会、政治

 帰省して母や伯母とテレビを見ていると、画面に北朝鮮の映像が流れたりする。金親子への崇拝、統制された国民、貧しい農村etc……。二人の老婆は口を揃える。「昔の日本とおんなじや」と。

 なるほど、ニュースフィルムで戦前の日本の映像を見ると、子供たちは笑みを作り、「立派な兵隊になってお国に尽くします」と健気に決意を述べている。

 パレスチナでの自爆テロを日本人は他人事のように眺めているが、原点は日本赤軍による空港乱射事件であり、遡れば特攻隊へと行き着く。命を天皇に捧げる「散華」こそ皇国教育の極致だったが、今も形を変えてアラブ社会に根付いているのだ。

 教育とは狂気を育み、凶器にもなる。中国での反日教育は問題だが、明治維新から1945年まで「中国人、朝鮮人は劣等民族」と洗脳し続けた日本の教育のありようにも心を留めるべきだと思う。

 10代の頃、東京のラジオ局をチューニングするたび、北京放送に邪魔をされた。「日米の帝国主義者を倒すため、日中の人民は連帯して戦おう」なんておかしな抑揚の日本語でアジっていたが、国交が回復するや、「田中角栄同志」と180度転換する。豹変する国であり、棘さえ抜けば旧に復する可能性もある。

 中国が反日教育を推進するのは、国民の不満をそらす標的を設定しないと共産党支配がもたないからだといわれている。日本の常任理事国入りにブレーキを掛け、アジアNO・1に君臨したいという「中華思想」も根底にあるだろう。それじゃあ、「棘=参拝問題」を抜き、あちらのお手並み拝見というのもどうだろう。

 保守派、改憲派の総大将たる中曽根氏は首相時代、靖国神社に一度だけ参拝したが、その際は中国首脳に十分根回しして、「問題にせず」との言質を取っていた。85年8月15日にはアジア諸国に配慮し、参拝取りやめの理由を官房長官談話の形で公表している。リアリスティックな判断と、護憲派の後藤田氏を官房長官に据えたバランス感覚は、「朝日寄り」の俺でさえ評価せざるをえないのだが。
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