福島原発のメルトダウン直後、当ブログで「卒業」(尾崎豊)の歌詞になぞらえ、<自分で窓ガラスを割る気力も体力もないが、石を投げている人たちの言動を紹介したい。今回の事故がこの国の在り方を根本から覆すきっかけになる>と記した。
あれから8年半、安倍政権は再稼働の方針を撤回していないが、抗い続けている人はいる。第19回「脱成長ミーティング」(ピープルズ・プラン研究所)の報告者、大沼淳一氏もそのひとりだ。今回のテーマは<脱原発と地域づくり>である。
74歳の大沼氏は登山とスキーが趣味で、今も世界を飛び回っている。〝亜熱帯〟名古屋在住だが、冷房どころか扇風機もなしで暮らしている。報告中も立ったままで、「12時間、話し続けることが出来る」という。細かいデータを諳んじていて、質問に対し機関銃のように言葉が返ってくる。脳がふやけ、心身がクチクラ化した俺とはえらい違いだ。
原子力市民委員会委員、市民放射能測定センター運営委員などを兼任する大沼氏は、放射能汚染関連の膨大なデータをネット上で公開している。脱原発を脱成長への一里塚と捉える大沼氏は、再生可能エネルギーへの転換がスムーズに進んでも、<大量生産→大量消費→大量廃棄>のサイクルの下で快適さを求める限り、現状は変わらないと主張する。
大沼氏は脱原発、地球温暖化、生物多様性の危機、遺伝子組み換え、パンデミックを同一の視座で捉えていた。背景にある国際金融資本主義が、南北間(国内レベルでは都市と地方)の格差を生む。少子高齢化が進行する日本が成長幻想に耽るのは薬物中毒患者と変わらないと語っていた。
NHK・BSで海外ニュースを見ていると、<日本はいまだ原発に固執している>との報道を目にする。風力、太陽光発電に移行する多い中、安倍政権と経産省が<原発=ベースロード電源>を崩さないことが齟齬を来している。東芝は米原発事業を巡る巨額損失で躓き、日立は英国、三菱重工はトルコで原発輸出に失敗した。
チェルノブイリ→福島と続いた事故で安全確保に莫大な費用がかかる。政官が方針を誤っても、経済効率を第一に考える大企業まで道を踏み外すなんて考えられないと大沼氏は強調していた。2005年時点で太陽電池の生産量がベスト5のうち4社と圧倒していた日本企業だが、18年にはベスト10から消えている。対照的に中国を軸にした合弁企業の躍進が目覚ましい。経産省はデータを偽装し、<原発は安い>のまやかしで日本沈没に舵を切っている。
「新たな利権を生む」と否定的に評してきた孫正義氏率いる「自然エネルギー財団」だが、アジア各国で集積した自然エネルギーを送電網で繋ぐという「アジアグリッド構想」を立ち上げている。中軸は日本、中国、ロシア、韓国だが、日韓両国の対立が同プランの桎梏になる可能性がある。
流域主義を説く大沼氏は、「里山資本主義」(藻谷浩介、NHK広島取材班著/角川書店)を紹介していた。日本人が共生してきた自然――降水量、温暖な気候、森林面積、排他的経済水域の広さ、豊かな水資源etc――に立脚することで、脱成長、脱原発を軸に新たな社会モデルを形成するべきと提言している。
自分の中で整理出来ていないのに質問してしまう。<日本政府は農業自給率を下げ、今や水資源を売り渡そうとしている。この流れと原発推進は根底で繋がっているのではないか>……。大沼氏は水道料金を含めた都市と地方の格差、再生可能エネルギーを生産する電力会社の壁になっている送電線問題を挙げる。他の参加者も加わって議論は進行した。
後半は放射能汚染の問題で、大沼氏はチェルノブイリ周辺の速やかな施策と比較しながら、日本で進行する危機に警鐘を鳴らす。「ヒバクシャ 世界の終わりに」(2001年、鎌仲ひとみ監督)で肥田医師が指摘していたように、核実験による被曝も深甚であることがデータに裏付けられていた。
今回感じたのは、日本、そして世界の歪みだ。脱原発も切り口のひとつで、<官と民>、<公平と格差>、<自由と抑圧>、<都市と地方>が対立項になって自然と人間の調和を損ねている。〝風にそよぐ葦〟として耐える以外に生き延びる方法はあるのだろうか。
あれから8年半、安倍政権は再稼働の方針を撤回していないが、抗い続けている人はいる。第19回「脱成長ミーティング」(ピープルズ・プラン研究所)の報告者、大沼淳一氏もそのひとりだ。今回のテーマは<脱原発と地域づくり>である。
74歳の大沼氏は登山とスキーが趣味で、今も世界を飛び回っている。〝亜熱帯〟名古屋在住だが、冷房どころか扇風機もなしで暮らしている。報告中も立ったままで、「12時間、話し続けることが出来る」という。細かいデータを諳んじていて、質問に対し機関銃のように言葉が返ってくる。脳がふやけ、心身がクチクラ化した俺とはえらい違いだ。
原子力市民委員会委員、市民放射能測定センター運営委員などを兼任する大沼氏は、放射能汚染関連の膨大なデータをネット上で公開している。脱原発を脱成長への一里塚と捉える大沼氏は、再生可能エネルギーへの転換がスムーズに進んでも、<大量生産→大量消費→大量廃棄>のサイクルの下で快適さを求める限り、現状は変わらないと主張する。
大沼氏は脱原発、地球温暖化、生物多様性の危機、遺伝子組み換え、パンデミックを同一の視座で捉えていた。背景にある国際金融資本主義が、南北間(国内レベルでは都市と地方)の格差を生む。少子高齢化が進行する日本が成長幻想に耽るのは薬物中毒患者と変わらないと語っていた。
NHK・BSで海外ニュースを見ていると、<日本はいまだ原発に固執している>との報道を目にする。風力、太陽光発電に移行する多い中、安倍政権と経産省が<原発=ベースロード電源>を崩さないことが齟齬を来している。東芝は米原発事業を巡る巨額損失で躓き、日立は英国、三菱重工はトルコで原発輸出に失敗した。
チェルノブイリ→福島と続いた事故で安全確保に莫大な費用がかかる。政官が方針を誤っても、経済効率を第一に考える大企業まで道を踏み外すなんて考えられないと大沼氏は強調していた。2005年時点で太陽電池の生産量がベスト5のうち4社と圧倒していた日本企業だが、18年にはベスト10から消えている。対照的に中国を軸にした合弁企業の躍進が目覚ましい。経産省はデータを偽装し、<原発は安い>のまやかしで日本沈没に舵を切っている。
「新たな利権を生む」と否定的に評してきた孫正義氏率いる「自然エネルギー財団」だが、アジア各国で集積した自然エネルギーを送電網で繋ぐという「アジアグリッド構想」を立ち上げている。中軸は日本、中国、ロシア、韓国だが、日韓両国の対立が同プランの桎梏になる可能性がある。
流域主義を説く大沼氏は、「里山資本主義」(藻谷浩介、NHK広島取材班著/角川書店)を紹介していた。日本人が共生してきた自然――降水量、温暖な気候、森林面積、排他的経済水域の広さ、豊かな水資源etc――に立脚することで、脱成長、脱原発を軸に新たな社会モデルを形成するべきと提言している。
自分の中で整理出来ていないのに質問してしまう。<日本政府は農業自給率を下げ、今や水資源を売り渡そうとしている。この流れと原発推進は根底で繋がっているのではないか>……。大沼氏は水道料金を含めた都市と地方の格差、再生可能エネルギーを生産する電力会社の壁になっている送電線問題を挙げる。他の参加者も加わって議論は進行した。
後半は放射能汚染の問題で、大沼氏はチェルノブイリ周辺の速やかな施策と比較しながら、日本で進行する危機に警鐘を鳴らす。「ヒバクシャ 世界の終わりに」(2001年、鎌仲ひとみ監督)で肥田医師が指摘していたように、核実験による被曝も深甚であることがデータに裏付けられていた。
今回感じたのは、日本、そして世界の歪みだ。脱原発も切り口のひとつで、<官と民>、<公平と格差>、<自由と抑圧>、<都市と地方>が対立項になって自然と人間の調和を損ねている。〝風にそよぐ葦〟として耐える以外に生き延びる方法はあるのだろうか。