「未来シアター」(昨夜放送)を見た。二階堂ふみのコーナーでは鮮烈な「ヒミズ」の記憶が甦ったが、武豊のミニドキュメントには首をかしげる。武不振の真の理由――栄華を極める社台グループが武に破門状を出し、有力厩舎も追随した――なんてテレビが伝えられるはずはない。一方で、勝ち星を減らした武を判官びいきで応援するファンが増えている。
香川真司のマンチェスター・ユナイテッド入りが濃厚になった。プレミアは年末年始もない過密日程で、持久力とタフネスが求められる。果たして香川は、ファーガソンが求めるフィジカルのレベルをクリアできるだろうか。マンUのエースといえば、ピッチを駆け回り、強烈なシュートを決めるウェイン・ルーニーだ。武骨、誠実、情熱的といったルーニーのイメージと重なるのが、マニック・ストリート・プリーチャーズのジェームズ・ディーン・ブラッドフィールドだ。
新木場スタジオ・コーストでマニックスを見た。シングル集「ナショナル・トレジャー」収録の38曲を17.18の2日にわたって演奏するという趣向だったが、仕事の関係で足を運んだのは初日だけである。早々に入場し、フロア後方で柵に身を預けた俺は、邪念抜きで右隣の女性に話しかけようと思った。20代前半に見える彼女がいかなる経緯でマニックスを聴くようになったか、興味を抱いたからである。
以心伝心という。俺の気持ちは右ではなく左隣に伝わった。俺が着ていたマニックスのツアーTシャツがきっかけで、40歳の男性と中高年のマシンガントークが炸裂する。彼は翌日のマニックスはもちろん、モリッシーのジャパンツアーにも4日、足を運んだという。「ザ・ザはU2より上」、「オアシスは最初の2枚、レディオヘッドは最初の3枚以外、聴く価値なし」と耳に心地よい〝暴言〟が続いた。
俺はダーティー・プロジェクターズとローカル・ネイティヴスを薦めたが、US系には関心を示さない。「UKなら肉親の情でミューズかな」と言うと、「今じゃコールドプレイより格上のバンドですけど、勝手にどうぞって感じです」と素っ気なかった。言葉の端々に反米感情が窺えたが、マニックスのファンなら当然かもしれない。
Gruff Rhysのサービス精神たっぷりのアコースティックセットのオープニングアクトに和んだ後、「マニックスで聴きたい曲は何ですか」と尋ねられた。2曲挙げたうちの一曲「享楽都市の孤独」でライブはスタートする。アルベール・カミュに捧げられた同曲は、以下のような歌詞だ。
♪文化は言語を破壊する。君の嫌悪を具象化し頬に微笑を誘う。民族戦争を企て他人種に致命傷を与え、ゲットーを奴隷化する。毎日が偽善の中で過ぎ去り、人命は永遠に安売りされていく……
「オーストラリア」、「エヴァーラスティング」と続き、「ツナミ」の前のMCで、東日本大震災に言及する。キャッチーな曲の連続で、稠密な時は軽やかに過ぎていく。日本を意識したのか、桜の木が浮き上がるライティングも鮮やかだった。ニッキー・ワイヤーがいつもより地味と感じたのは俺だけだろうか。
コンビレーションのタイトルは和訳すれば「国宝」になる。日本人は違和感を覚えるだろうが、ロックが文化として定着している英国において、不在のリッチーを含め3人の詩人が提示する奥深くメッセージ性の強い歌詞により、マニックスは<UK国宝バンド>の称号を得た。初期は風紀紊乱、頽廃的、暴力的といったイメージで語られてきたが、現在は知的、ラディカル、癒やしがマニックスを表現する形容詞だ。全欧に中継されたミレニアムギグで新左翼のメッセージを流したり、キューバで演奏したりと、マニックスは信条を貫く〝労働者階級の英雄〟といえる。
「モータウン・ジャンク」の後、俺はドキドキした。ラストは二択で、「デザイン・オブ・ライフ」もしくは……。左隣の彼に挙げたもう一曲のイントロが鳴った瞬間、涙腺が壊れそうになる。3・11直後、俺はこの曲をモチーフにブログを書いた(11年3月19日の稿)。スペイン市民戦争にインスパイアされた「輝ける世代のために」である。
♪これを黙認すれば、おまえの子供たちが耐えなければならない。これを許容すれば、子供たちの世代が同じ目に遭わなくてはならない……
歌詞を紹介し、日本にとって「これ」とは常に<棄民>で、3・11に照らせば<救援物資が届かない福島第1原発周辺の住民であり、いずれ放射能汚染に苦しむ可能性が高い人たち>と記した。政官財は俺が危惧した通りの方向に進み、<輝ける世代>は放射能の危険に今も曝されている。
終演後、固い握手で彼と別れた。彼も、そして右隣の彼女も孤独なんだなと勝手に想像する。ロックを熱く語れる友など、ザラにいるものではない。マニックスは今回のツアー後、活動休止が囁かれている。彼と再会する機会はあるだろうか。
最後に、オークスの予想を。荒れるとみて、④オメガハートランドを軸に馬券を買う。相手は⑧ミッドサマーフェア、⑨ヴィルジーナの人気どころに、⑬サンシャインを考えている。桜花賞馬の⑭ジェンティルドンナは3連単の3着まで、⑯キャトルフィーユの取捨は直前までゆっくり考えることにする。