酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

「モガディシュ」~同胞との友情をエンジンに街を激走する

2022-08-15 07:43:13 | 映画、ドラマ
 統一教会関連について、北朝鮮と岸一族の〝ねじれ〟を俎上に載せる報道が興味深い。勝共連合をバックアップした岸信介元首相、安倍晋太郎元官房長官、そして安倍晋三元首相と、一族と良好な関係を築いてきた統一教会は、莫大な資金を提供するなど金王朝ともパイプが太い。自民党関係者はこの辺りの闇をどのように総括しているのだろう。

 だが、問題は統一教会にとどまらない。戦前回帰と改憲を目指し、夫婦別姓否定、ジェンダー問題軽視を主張する日本会議懇談会、神道政治連盟に岸田首相自ら加盟している。この国の政治が先進国ではあり得ないカルトに主導されていることは、狂気の自民党改憲案からも明らかだ。

 前稿で紹介した「ブラック・チェンバー・ミュージック」の背景には朝鮮半島の緊張があり、東京での韓国と北朝鮮の女性情報担当者の交流がストーリーに組み込まれていた。「義兄弟~SECRET REUNION」(2010年)や「ベルリンファイル」(13年)など、両国の諜報部員が登場する韓国映画も多い。先日、新宿ピカデリーで「モガディシュ~脱出までの14日間」(2021年、リュ・スンワン監督)も両国の軋轢と友情を描いた作品だった。

 リュ監督は上記した「ベルリンファイル」の監督で、当時のスタッフとともに撮影に臨んだ。現在〝世界一危険な国〟と評されるソマリアの首都モガディシュで、バーレ政権打倒を叫ぶ反乱軍が1991年末に侵攻し、政府軍と内戦を繰り広げる。当時、国連加盟を目指していた韓国はハン大使(キム・ヨンソク)と安全企画部直属のカン参事官(チョ・インソン)のタッグで外交戦を展開していた。

 ライバルは当時、アフリカで韓国を上回る国々と国交を結んでいた北朝鮮で、リム大使(ホ・ジュノ)はテ参事官(ク・ギョファン)を中心に韓国に対抗している。テは当地の若者と連携し、妨害活動でも成果を上げていた。メインキャラの4人に加え、ハン夫人役のキム・ソジンが緩衝材として柔らかい空気を醸し出していた。

 ソマリアは渡航禁止地域で、撮影は風景が似たモロッコのエッサウィラで敢行された。当時の状況をリアルに再現するため、資料を集め分析したという。反乱軍の実相に衝撃を覚えた。10歳前後の少年たちが銃をぶっ放して威嚇する。「シティ・オブ・ゴッド」を彷彿させる映像に、革命を志向するというより、怒りの爆発といった感じを受けた。

 反乱軍に急襲された北朝鮮大使館員と家族はモガディシュを放浪する。中国大使館に入れず、韓国大使館に救いを求める。ストーリーに韓国と北朝鮮の当時の外交が反映していた。エジプトは北朝鮮と友好国で、韓国とケニアは国交がある。ソマリアの宗主国はイタリアで、政府軍、反乱軍双方に一定の影響力があった。ハン、リム両大使は生存と脱出に向けて策を練るが、大韓航空機事件から8年で、両国の確執は消えていない。カンは北朝鮮一行の〝転向〟を画策するが、粛清に繋がりかねないからのめるはずもない。

 両国大使館員と家族、政府軍、反乱軍によるカーチェースが凄まじい迫力で展開する。ハン、リム両大使の複雑な表情と目力が、同胞との友情を表現していた。東京での封切りは終了したが、DVDやテレビでぜひ堪能してほしい。

 きょうで敗戦から77年。次稿では戦争について記す予定だ。

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1 コメント

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Unknown (孤独のキネマ)
2022-09-17 07:46:43
この映画はラストが良かった。北と南、それぞれのリーダーが互いを振り返らず去っていく。日本の映画人にはできない芸当。あの場面を見るだけでも一見の価値あり。
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