昨夜来の雨がようやく小降りになった。窓越しの閃光と轟音に、戦場にいるのではと錯覚してしまう。数年後の辞書には新語<夜立>が加えられているだろう。
ウィリアム・ピーターセン(グリッソム主任)、第9シーズン途中で降板……。このニュースに愕然としたのは先月のこと。「CSI」に続き「相棒」にも激震が走る。寺脇康文が水谷豊とのコンビを解消し、番組を去るという。マンネリ打破の意図はわかるが、寂しさは拭えない。
さて、本題。今回はスクリーンで2度、相棒を演じたアラン・ドロンとジャン=ポ-ル・ベルモンドについて記したい。
中学生の時、映画観賞が習慣になった。夢の扉を叩いた頃に見た「ボルサリーノ」(70年)とNHK衛星2で再会する。ギャングが政財界を支配する30年代のマルセイユを舞台にした実録物だ。
三角関係をきっかけに相棒となったロッコ(ドロン)とフランソワ(ベルモンド)は、アイデア、度胸、暴力を武器に頭角を現す。頂点を極めた後の悲しい結末は、続編「ボルサリーノ2」に繋がっていく。
「ボルサリーノ」はストイシズムと情念に彩られた他のフレンチ・フィルム・ノワールとは色調が異なる。ユーモアとロマンスを織り交ぜた軽妙なタッチは「スティング」に近い。
公開当時、人気絶頂だったドロンとベルモンドは、出演作にも恵まれていた。ドロンなら「太陽がいっぱい」、「若者のすべて」、「冒険者たち」、ベルモンドなら「勝手にしやがれ」、「気狂いピエロ」、「薔薇のスタビスキー」と、映画史に輝く傑作、問題作に主演している。
老境に達した2人が28年ぶりに共演したのが「ハーフ・ア・チャンス」(98年、パトリス・ルコント)だ。監督も役者も楽しんで撮影に臨んだことが伝わる肩の凝らないエンターテインメントだ。
車泥棒のアリス(ヴァネッサ・パラディ)は母の遺言テープで、2人の父親候補を知らされる。レストラン経営者のジュリアン(ドロン)と中古車販売業者のレオ(ベルモンド)だ。我こそ父親と張り合う2人は、キュートな娘アリスを守るためにロシアンマフィアとの闘う羽目になる。ご老体というなかれ、2人は雷名を轟かせた一騎当千の兵だったのだ。
女性をめぐるジュリアンとレオの因縁、パンチの応酬からたちまち打ち解けるという設定、冒頭の出所シーンなど、ルコンドが「ボルサリーノ」を下敷きにしたことは明らかだ。ストーリーや役柄と無関係に、ドロンとベルモンドが互いを揶揄するような台詞も用意されている。
「ボルサリーノ」と「ハーフ・ア・チャンス」を続けて見て、「男たちの挽歌」が無性に恋しくなった。幸いなことに来月末、衛星第2で放映される。<ともに体を張る相棒>こそ、男にとって生涯の憧れではないか。
ウィリアム・ピーターセン(グリッソム主任)、第9シーズン途中で降板……。このニュースに愕然としたのは先月のこと。「CSI」に続き「相棒」にも激震が走る。寺脇康文が水谷豊とのコンビを解消し、番組を去るという。マンネリ打破の意図はわかるが、寂しさは拭えない。
さて、本題。今回はスクリーンで2度、相棒を演じたアラン・ドロンとジャン=ポ-ル・ベルモンドについて記したい。
中学生の時、映画観賞が習慣になった。夢の扉を叩いた頃に見た「ボルサリーノ」(70年)とNHK衛星2で再会する。ギャングが政財界を支配する30年代のマルセイユを舞台にした実録物だ。
三角関係をきっかけに相棒となったロッコ(ドロン)とフランソワ(ベルモンド)は、アイデア、度胸、暴力を武器に頭角を現す。頂点を極めた後の悲しい結末は、続編「ボルサリーノ2」に繋がっていく。
「ボルサリーノ」はストイシズムと情念に彩られた他のフレンチ・フィルム・ノワールとは色調が異なる。ユーモアとロマンスを織り交ぜた軽妙なタッチは「スティング」に近い。
公開当時、人気絶頂だったドロンとベルモンドは、出演作にも恵まれていた。ドロンなら「太陽がいっぱい」、「若者のすべて」、「冒険者たち」、ベルモンドなら「勝手にしやがれ」、「気狂いピエロ」、「薔薇のスタビスキー」と、映画史に輝く傑作、問題作に主演している。
老境に達した2人が28年ぶりに共演したのが「ハーフ・ア・チャンス」(98年、パトリス・ルコント)だ。監督も役者も楽しんで撮影に臨んだことが伝わる肩の凝らないエンターテインメントだ。
車泥棒のアリス(ヴァネッサ・パラディ)は母の遺言テープで、2人の父親候補を知らされる。レストラン経営者のジュリアン(ドロン)と中古車販売業者のレオ(ベルモンド)だ。我こそ父親と張り合う2人は、キュートな娘アリスを守るためにロシアンマフィアとの闘う羽目になる。ご老体というなかれ、2人は雷名を轟かせた一騎当千の兵だったのだ。
女性をめぐるジュリアンとレオの因縁、パンチの応酬からたちまち打ち解けるという設定、冒頭の出所シーンなど、ルコンドが「ボルサリーノ」を下敷きにしたことは明らかだ。ストーリーや役柄と無関係に、ドロンとベルモンドが互いを揶揄するような台詞も用意されている。
「ボルサリーノ」と「ハーフ・ア・チャンス」を続けて見て、「男たちの挽歌」が無性に恋しくなった。幸いなことに来月末、衛星第2で放映される。<ともに体を張る相棒>こそ、男にとって生涯の憧れではないか。