公私とも日々失敗の連続だが、この年末、二つのドジというか、超常現象?に遭遇した。
防水スプレーを靴に吹き掛けている時、右手人さし指にシューとやってしまう。見た目に何の変化もないが、手を洗うとチクチク痛い。水をはじく〝防水指〟になってしまったようだ。嘘と思われる方は、お試しあれ。
もう一つは、CD―Rの消失だ。強めに押し込んだのが悪かったのだろう。パソコン画面は無反応で、ボタンを押して取り出すとケースは空。実に奇妙な話である。
底冷えする亀岡のネットカフェで、今年最後の稿を更新している。
振り返ると2010年は、ロック、映画、そして読書と〝第二の青春〟を謳歌した年だった。CDを聴きながら小説を読む時、ささやかな幸せを感じる。細胞はクチクラ化しているから吸収力はないが、ミルクに浸されたパンのように心地いい。
この国は明らかに傾きつつある。民主党は社民路線を放棄し、自民党同様、大企業に擦り寄っている。総下流化に歯止めが利かない時代、善根を施しているわけでもないテキトーな中年男が世を渡っているのは、運と情けのおかげと言うほかない。安穏に流れがちな日々、戒めになっているのは「ペスト」(カミュ)の登場人物の言葉である。
主人公のリウー医師の元、志の高い者たちが集まってくる。自己犠牲に目覚めたランベールは、「自分ひとりが幸福になるということは、恥ずべきことかもしれないんです」と語るのだ。
現在の日本を穿つ言葉を噛み締めつつ、「おまえはどうする」と自らに問い掛けても情熱が湧いてこないのは、〝第一の青春〟期と違うところだ。
今年は旧交を温めた一年でもあった。20代に交遊した女性とフジロックに行ったのもいい思い出だし、サークル仲間との再会は別稿(11月24日)に記した通りだ。U君の東京出張に合わせて12月にも一席設け、年明け早々に第3弾の予定が入っている。青い議論に夢中になっている五十路軍団は、周りの目に奇異に映るかもしれない。
〝第二の青春〟とはいえ、青春に付きものの恋とは縁がない。「いいな、あの人」と思う女性はいないわけではないが……。40代半ばまでは男女限らず積極的にコンタクトを取るタイプだったが、ここ数年は他者と距離を保つようになった。それも老いるということだろう。孤独を第一の友に、淡々と晩年を過ごしていきたい。
ともあれこの一年、世迷い言に付き合ってくれた寛大な読者の皆さんに感謝の気持ちでいっぱいだ。ありがとうございます。いい年をお迎えください。
防水スプレーを靴に吹き掛けている時、右手人さし指にシューとやってしまう。見た目に何の変化もないが、手を洗うとチクチク痛い。水をはじく〝防水指〟になってしまったようだ。嘘と思われる方は、お試しあれ。
もう一つは、CD―Rの消失だ。強めに押し込んだのが悪かったのだろう。パソコン画面は無反応で、ボタンを押して取り出すとケースは空。実に奇妙な話である。
底冷えする亀岡のネットカフェで、今年最後の稿を更新している。
振り返ると2010年は、ロック、映画、そして読書と〝第二の青春〟を謳歌した年だった。CDを聴きながら小説を読む時、ささやかな幸せを感じる。細胞はクチクラ化しているから吸収力はないが、ミルクに浸されたパンのように心地いい。
この国は明らかに傾きつつある。民主党は社民路線を放棄し、自民党同様、大企業に擦り寄っている。総下流化に歯止めが利かない時代、善根を施しているわけでもないテキトーな中年男が世を渡っているのは、運と情けのおかげと言うほかない。安穏に流れがちな日々、戒めになっているのは「ペスト」(カミュ)の登場人物の言葉である。
主人公のリウー医師の元、志の高い者たちが集まってくる。自己犠牲に目覚めたランベールは、「自分ひとりが幸福になるということは、恥ずべきことかもしれないんです」と語るのだ。
現在の日本を穿つ言葉を噛み締めつつ、「おまえはどうする」と自らに問い掛けても情熱が湧いてこないのは、〝第一の青春〟期と違うところだ。
今年は旧交を温めた一年でもあった。20代に交遊した女性とフジロックに行ったのもいい思い出だし、サークル仲間との再会は別稿(11月24日)に記した通りだ。U君の東京出張に合わせて12月にも一席設け、年明け早々に第3弾の予定が入っている。青い議論に夢中になっている五十路軍団は、周りの目に奇異に映るかもしれない。
〝第二の青春〟とはいえ、青春に付きものの恋とは縁がない。「いいな、あの人」と思う女性はいないわけではないが……。40代半ばまでは男女限らず積極的にコンタクトを取るタイプだったが、ここ数年は他者と距離を保つようになった。それも老いるということだろう。孤独を第一の友に、淡々と晩年を過ごしていきたい。
ともあれこの一年、世迷い言に付き合ってくれた寛大な読者の皆さんに感謝の気持ちでいっぱいだ。ありがとうございます。いい年をお迎えください。