酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

10年ぶりの実戦麻雀~惨敗にも爽快感

2008-09-29 00:12:33 | 戯れ言
 ポール・ニューマンが亡くなった。「傷だらけの栄光」、「ハスラ-」、「明日に向かって撃て!」、「スティング」、「スラップ・ショット」など感銘を受けた作品が多い。リベラルより左の立場で政治にコミットしてきた名優の冥福を祈りたい。

 中山国交相が辞任した。「日本は単一民族」、「成田空港反対派はゴネ得」や日教組への攻撃は、「南京大虐殺は存在しない」と同様、タカ派の本音を披瀝しただけのこと。騒動の陰に隠れる形になったが、麻生首相はニューヨークで集団自衛権行使について踏み込んだ発言をしている。

 さて、本題。おととい(27日)ミクシィの麻雀コミュニティが企画するイベントに参加した。10年ぶりの実戦復帰は、偏差値45~50の雀力からして無謀な試みだった。トータルで-177(トビ4回)の惨敗も、充実感に満ちた10時間だった。

 30代前半までは年に数回、卓を囲んでいたが、総半荘数は400以下で90年以降は機会を失くす。足を洗ったつもりが、MONDO21で二階堂亜樹を“発見”したことで予定が狂う。見た目の可愛さだけでなく、確かな打ち筋と素直な表情に魅せられファンになった。女流ではNO・1だがテレビ対局では勝負弱く、判官びいきで応援している。
 
 亜樹プロだけでなく小島武夫、土田浩翔ら個性的な打ち手の対局を楽しんでいるうち、もう一度打ちたくなった。ミクシィのコミュニティに複数参加して、復帰のチャンスを窺ってきた。雀力を考えれば場代のみの対局だが、ギャンブラーの端くれゆえ、レートあり(点5)の方を選んだ。

 他の3人は実力ある若者だった。勝負勘、スピード、手作りとも抜群で、場数を踏んでいることが窺われた。トロい俺にも寛容で、少牌寸前を何度か指摘してくれたことを感謝している。同じメンバーなら何度打っても最下位確実だが、次に参加する時はトビを減らし、マイナスを100以下に抑えることを目標にしたい。

 このところ不眠症が続いていたが、心地よい疲れで久しぶりに熟睡できた。二度寝から覚め、慌ててテレビをつけると、会社時代のOGが関わった番組が始まっていた。ノルウェーの雄大な自然に迫った内容で、美しい映像は俺にとって清涼剤だった。

 ディレクターの彼女だけでなく、NGOなどで国際貢献しているOGが3人いる。国境を超えて活躍する彼女たちを心から応援したい。



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「おくりびと」に描かれた生と死の連なり

2008-09-26 00:34:49 | 映画、ドラマ
 王貞治氏がソフトバンク監督を退任した。現役時代の王氏のバットは、俺にとって“巨大な魔法の針”だった。時を堰き止めたバットが一閃するや、白球は心と同じ放物線で外野席に吸い込まれていく。次の瞬間、カタルシスの余韻とともに、俺は日常に引き戻されていた。

 小泉純一郎氏が政界を引退するという。首相在任時は喝采の日々を過ごしたが、三位一体の改革、後期高齢者医療制度などの負の遺産が国民を苦しめている。次男に世襲というのも、改革を声高に叫んだ小泉氏にそぐわない。

 さて、本題。今週は代打でテレビ局に入っている。朝の番組なので終わるのは早く、別の仕事の打ち合わせまで時間が空いたので「おくりびと」(滝田洋二郎監督)を見た。公開中でもあり、ストーリーの紹介は最低限にとどめたい。

 チェロ奏者の大悟(本木雅弘)はオーケストラ解散で仕事を失くす。妻美香(広末涼子)を伴い故郷山形に帰り、納棺師の佐々木(山崎努)の下で働くことになった。納棺師とは遺体を清めて死装束を整え、化粧を施す者を指す。厳粛な死を彩る作業に、大悟は失った夢を重ねていく……。

 観客の体温と湿度は、次第に大悟と等質になる。本作は日本独特の死生観と四季の移ろいを背景にしつつ、宗教や国境を超越した普遍性を獲得した。アメリカ人であれイラン人であれ、大悟と佐々木のやりとりに噴き出し、ラストではスクリーンの大悟とともに感涙にむせぶはずだ。

 本作を企画したのは本木自身という。十数年前に納棺師に関心を抱き、制作決定後は見習として修業した。本木の所作が歌舞伎や能の様式美に劣らぬレベルに達したことが、説得力の根幹になっている。

 正体不明だった銭湯の客(笹野高史)が自らの職業に基づいて生と死の連なりを語るシーンなど、琴線に触れる決め台詞がちりばめられている。肝というべきは、頻繁に現れる食事のシーンで佐々木が繰り返す「困ったことにな」だ。親鸞の境地に通じる慨嘆だと思う。

 死を扱った作品でありながら、釣られてから時間がたっても蠢くタコ、大空を舞う白鳥、溯上するサケなど、生きるものたちの営みが織り込まれている。大悟が最初の仕事の後、嘔吐しながら美香を求めるシーンが印象的だった。死はピリオドではなく、生きること、愛することとシンメトリーである……。本作は見る者にこう伝えたかったのだろう。

 本木の熱演、山崎の存在感、脇を固める名優たちの演技に、広末は一歩も引けを取らなかった。広末は結婚、出産、離婚を経験し、度重なる奇行に薬物疑惑を囁かれたこともあった。苦しい時期を耐え抜き、20代で母性と包容力を表現できる女優になる。今後に注目していきたい。

 俺は不摂生なのに、健診も受けていない。由々しき事態が進行中かもしれないが、それも天命と笑顔で受け止めることにする。冴えない一生を送った俺の死を、練達の納棺師が鮮やかに整えてくれたら最高だ。


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衆愚から“衆賢”へ~総選挙に期待すること

2008-09-23 02:59:18 | 社会、政治
 自民党総裁選は予定通り、麻生太郎幹事長が圧勝した。4代続いて世襲議員をトップに担いだ自民党は、江戸時代の気分なのだろう。選ぶ側の52%が2世議員なのだから、当然の帰結かもしれない。

 「下々の皆さん」(初出馬時の第一声)など多くの失言で知られる麻生氏だが、俺自身の経験を踏まえると<失言≒本音>だ。人権意識の欠片もない麻生氏は、首相どころか国会議員さえ不適格だと思う。

 新首相の賞味期限が切れる前に、総選挙が行われるという。来月26日が濃厚だが、連休なら投票率が下がるという理由で11月2日説も流れている。そこを見送れば、年内はなさそうだ。米大統領選(11月4日)でオバマ氏が勝てば、<日本も民主党>のムードが高まるからだ。

 この間の動きで、<アホな国民はいくらでも騙せる>という自公の思惑が露呈した。出来レースを混戦に偽装した論功行賞なのか、石原氏は幹事長代理に就任し、与謝野、石破両氏の入閣が確実視されている。投票日については上記の通り、タネも仕掛けも国民に曝している。「下々の皆さん」はそれでも自公に投票するのだろうか。

 レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、ノーマ・チョムスキー、辺見庸氏を支持する俺にとって、民主党は遠い存在だ。それでも民主党に一票を投じるのは<必然かつ不毛の選択>だ。政権交代によって風穴が空き、閉塞した社会にダイナミズムが生じることを期待している。

 90年以降、田原総一朗氏を先頭に<社会主義は時代遅れ>の大合唱が始まった。舛添厚労相(当時政治学者)も声高に叫んでいた一人である。グローバリズムに蹂躙された21世紀の世界で、ベクトルは逆向きになる。<社会主義≒反グローバリズム>が大きなうねりになり、新自由主義の実験場にされた南米で左翼政権が次々に誕生する。先進国でも同様で、日本では<蟹工船ブーム>に乗った共産党が支持を広げている。

 <社会主義≒反グローバリズム>の受け皿となる政党が存在しないのは残念だが、日本の民主主義だって捨てたものじゃない。<竹中―小泉路線>は自民党の中でも否定されたし、メディアは総裁選の空騒ぎを大きく報じなかった。衆愚から“衆賢”に転じたことを、国民は総選挙で示すはずだ。

 ここまで書いて腹が減った。ラーメン屋で手にした週刊文春に、<麻生新総理、解散せず>と題された上杉隆氏の記事が掲載されていた。部屋に戻って「ニュース23」を見ていると、後藤キャスターが微妙な空気を伝えていた。俺が麻生氏だったら? 一日でも長く首相の座にとどまりたいだろう。天敵の古賀選対委員長が敷いたレールを突っ走ったら、短命内閣の記録を更新する可能性が高い。

 浮草稼業の今、政治は俺にとって重いものになっている。真剣な眼差しで今後の動きをチェックしていきたい。



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「森の生活」~現代を射抜くソローの慧眼

2008-09-20 00:49:30 | 読書
 与謝野馨経財相はリーマン・ブラザーズ破綻の影響について、「ハチが刺した程度」と語っていた。日本で年間20人前後がハチの刺害で亡くなっていることを、与謝野氏はご存じだろうか。

 さて、本題。<人間はいつから矜持と良心を失い、欲と虚飾にまみれてしまったのだろう>という問いで前稿を結んだ。ヘンリー・デヴィッド・ソロー著「ウォールデン~森の生活」(上下、岩波文庫)に、一つの答えを見つける。即ち<人間は19世紀半ば、既に堕落していた>……。

 今年2月、フリーの先輩にソローを薦められた。暫く失念していたが、「CSI:科学捜査班~第7シーズン」の台詞にソローが2度登場したことで、その名を思い出す。詩人で博物学者のソローは1845年の独立記念日(7月4日)を期して、メイン州のウォールデン湖周辺で自給自足生活を始める。2年2カ月の日常に想念を織り交ぜたのが本書だ。

 一番近い隣人でも1マイル先で、<自然を友に自分が他人より神々の寵愛を身に余るほど受けているように感じた>という。独り暮らしの支えになったのはホメロスの「イリアス」であり、孔子ら賢人の言葉だった。ソローは自然や神話の登場人物との会話を楽しみ、孤独に苛まれることはなかった。

 赤アリと黒アリの闘いを人間の戦争に重ねて描写するなど、春夏秋冬の移ろいが綴られている。家賃1年分に満たない費用で一生暮らせる家を建てる方法を、誇らしげに記していた。<人間は進歩するにつれ、動物の肉を食べるのをやめる運命にある>と主張するソローは、ベジタリアンの走りでもある。

 形骸化した教会について、<キリストそのものとまじわるようにして、われわれの教会など消えるにまかせればいい>、<天国について語るものは地上を辱めている>と厳しく論じている。ソローは自然と直接繋がるネイティブアメリカンの信仰を、キリスト教より上位に置いていたようだ。

 ソローは大学教育、博愛主義、慈善などを虚飾として斬り捨て、情報に躍る人々にも厳しい目を向けていた。<フランス革命を含めて、外国では何一つ新しい事件は起こっていない>と記したソローの目に、ネットサーフィンに興じる現代人はどのように映るだろう。

 ソローがとりわけ憂えていたのは人々の金への執着だった。マルクスの「共産党宣言」(1848年)と軌を一にして、ソローは格差拡大と社会の歪みにメスを入れる。<自発的貧困とでも呼ばれうる有利な基盤に立脚しなければ、だれひとり人間の生活を公平な賢い目で観察することはできない>、<ある階級の贅沢は、他の階級の貧困によってつりあいを保っている>と記している。
 
 孤独を好んだソローだが、決して隠遁者ではない。奴隷制度とメキシコ戦争に反対し、人頭税支払い拒否で投獄されている。1849年に著した「市民的不服従」はガンジーやキング牧師らに絶大なる影響を与えた。

 環境保護、アウトドアライフ、菜食主義、市民的不服従の提唱者……。様々な貌を持つソローは18世紀半ば、現代が抱える矛盾を見抜いていた。その慧眼には驚くしかない。詩的な表現に彩られた本書は、俺にとって最高の濾紙かつ洗剤でもある。煩悩や負の感情から少しだけ自由になれた気がした。


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見えざる手を食いちぎるモンスター

2008-09-17 00:34:38 | 社会、政治
 敬老の日(15日)、70歳以上の人口が2000万を超えたという記事を読んだ。少子高齢化問題こそ、来るべき総選挙の最大の争点だと思う。

 リーマン・ブラザーズの破産適用申請とメリルリンチの救済合併が、世界同時株安を引き起こした。200歳を超えた資本主義は、終わりの始まりを迎えたのだろうか。

 80年代後半、通信技術と運輸力の進歩を前提にグローバリズムが蔓延する。世界を収奪した<世界銀行=国際通貨基金=多国籍企業=アメリカ政府>は、民衆の血で汚れた札束を懐に仕舞い込んだ。

 市場原理第一を謳う新自由主義の実態を余すところなく伝えたのが、昨年放映された「ハゲタカ」(NHK総合/全6回、青山仁原作)だった。98年から07年までの日本を舞台にした、企業買収をめぐる群像劇である。

 外資ファンド日本支社代表の鷲津(大森南朋)とエリート行員から企業再生アドバイザーに転身した芝野(柴田恭兵)を軸に、スト-リーは展開する。5人の主要人物は反目、葛藤、恩讐を超えて一つの流れに連なっていく。<知・理・利>と<義・信・情>の狭間で苦悩する鷲津の内面を、大森が押さえた演技で表現していた。

 鷲津と芝野は<人間力>が<資本の論理>を打ち破る可能性を示した。彼らと対照的に、拝金主義に帰依した者の過ちが世界中で露呈する。資源と食料を買い占める多国籍企業、危なっかしい商品(サブプライムローン)を売りさばいた銀行と証券会社、偽装に手を染める食品企業……。資本主義はコントロール不能の混乱期に突入したのではないか。

 チョムスキーは<グローバリズム蔓延による貧困と格差拡大が、民主主義の危機を招来した>と断言する。この10年、資本主義は一気に幼児化した。剥き出しの欲望が融合して巨大化し、見えざる手を食いちぎるモンスターになる。昨年辞任したメリルリンチ前会長の退職金は180億円を超えていた。“資本主義独裁国家アメリカ”では、狂気の沙汰が当然のことのように受け止められている。

 先月末、「クローズアップ現代拡大版~グローバル・インフレの衝撃」(NHK総合)を見た。榊原英資氏(早大客員教授)は、“ものづくり”の精神に立ち返ることが危機克服の第一歩で、農業保護と食料自給率アップが火急の課題と語っていた。「ミスター円」の提言だけに、説得力は十分だった。

 人間はいつから矜持と良心を失い、欲と虚飾にまみれてしまったのだろう。この問いに対する一つの回答を、次稿で記すことにする。


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「灰とダイヤモンド」~永遠に褪せぬ輝き

2008-09-14 00:38:06 | 映画、ドラマ
 小泉元首相のお墨付きに、小池百合子氏は大はしゃぎしていた。新自由主義導入を改革と言い換え、格差拡大を招いた小泉氏こそ、傾城のリーダーではなかったか。

 羽生善治名人が渡辺明竜王への挑戦権を得た。全7冠永世位獲得が懸かる羽生と、若手のオピニオンリーダーである渡辺との頂上決戦は来月18日、パリで開幕する。

 さて、本題。今回は「灰とダイヤモンド」(58年)について記したい。NHK衛星第2は「映画監督アンジェイ・ワイダ~祖国ポーランドを撮り続けた男」に続き、「灰と――」ら3作を放映した。久しぶりに見たが、鮮烈な輝きはいささかも褪せていなかった。

 ドイツ降伏の日(1945年5月8日)、ワルシャワ近郊のある町の出来事を追った群像劇で、主人公マチェク(スビグニエフ・チブルスキー)はワルシャワ蜂起の生き残りという設定だ。

 本作の底流にあるのは反ソ感情だ。ワルシャワ蜂起では20万人以上の市民が犠牲になったが、真の敵はナチスの蹂躙を座視したソ連軍である。戦後の傀儡政権樹立を画策していたスターリンは、“抵抗勢力”になりそうな自由主義者を見殺しにする。

 マチェクに与えられた使命は労働者党書記シチューカの暗殺だった。誤爆で工場労働者たちを殺したにもかかわらず気が咎める様子もなく、ホテルのバーでウエートレスのクリーシャ(エヴァ・クジジェフスカ)をナンパする。孤独と絶望を共有した2人の逢瀬は、陰影に富みロマンチックだ。白眉というべきは雨の中、荒れ果てた教会を訪ねるシーンである。

 たいまつの如く火花を散らし 我が身を焦がす時 自由となれるを汝は知るや 持てるもの全て失われ 残るのは灰と混沌 嵐の如き深淵の底深く 永遠の勝利の暁に 燦然と輝くダイヤモンド……。

 クリーシャが墓碑に刻まれたノルヴィトの詩を読み、マチェクが諳んじた部分を続ける。「私たちは何」と問うクリーシャに、マチェクは照れながら「君こそダイヤモンドだ」と答える。初めての恋は濾紙になってマチェクの魂を浄化するが、永遠と刹那に彩られたラブシーンはたちまち暗転し、過酷な現実に席を譲る。

 検閲を意識したのか、シチューカは葛藤を抱えた人格者として、自由主義者たちは冷徹な官僚として描かれている。シチューカが自らを撃ったマチェクに体を預けた時、祝勝の花火が打ち上がった。

 カラスの群れが舞う空の下、マチェクはゴミ捨て場で苦悶しながら息絶える。本作が検閲をクリアしたのは、党幹部の目にラストシーンが勧善懲悪と映ったからだが、世界中の映画ファンは異なる思いを抱いた。ある者は美しく散ったテロリストに共感し、ある者は儚い恋の余韻に浸り、ある者は非人間的な管理体制への怒りに身を震わせた。

 <「灰と――」で描きたかったのは善と悪の対立ではない。本当の悲劇は善と善が闘った時に起こる>とワイダは上述のドキュメンタリーで語っていた。9・11以降の世界は、ワイダが示唆した通りに動いている。○○主義、××イズムが人間を不幸に、不自由にすることを、「灰と――」は教えてくれた。

 あれこれ理屈をこねたが、エヴァ・クジジェフスカの美しさに触れるだけでも、本作を見る価値がある。彼女ほど<灰の底深く輝くダイヤモンド>の表現に相応しい女優が、この世に存在しただろうか。





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人生の再チャレンジへ~更生保護の持つ意味

2008-09-11 00:27:11 | 独り言
 普段から素行不良だったとはいえ、若ノ鵬、露鵬、白露山への一発レッドには驚いた。向精神作用、筋力増強を問わず、禁止薬物使用のケースは1~3年の謹慎が、プロアマ限らず世界標準ではないか。

 A級戦犯だった岸信介、造船疑獄に関与したものの指揮権発動で逮捕を免れた池田勇人と佐藤栄作、炭鉱国管疑獄で収監された田中角栄、昭和電工疑獄に連座した福田赳夫、数々の疑獄で名が挙がった中曽根康弘……。一再ならず躓いた彼らは、後にすべて首相に登り詰めた。

 大麻所持で逮捕された井上陽水、萩原健一、内田裕也、錦野旦、研ナオコ、美川憲一は、禊ぎを経て世間に受け入れられた。かくも優しい日本人の国技が大相撲である。3力士が外国人ではなかったら、どのような処分が下っただろうか。

 政治家や芸能人の過ちには寛大な日本人だが、罪を犯した者への眼差しは厳しい。一昨日(9日)、更生保護フォーラム主催「第17回チャリティ寄席 花の会」(国立演技場)に足を運んだ。現在6600社ある協力雇用主の更なる増加を呼びかけるイベントで、一竜斎貞花一門らが話芸を披露した。

 慈善など似合わぬ俺だが、仏教界を代表してパネラーを務めた従兄弟に誘われ参加した。国会議員を経て、知恩院広報担当として法話をこなす従兄弟は、巧みな話術で満員御礼の客席の笑いを取っていた。

 更生保護とは道を踏み外した者の<人生の再チャレンジ>を支援する試みだ。出所者を偏見から守り、その権利に留意して再犯防止に努めている。関連官庁の調査では、職を得た出所者の再犯率7・6%に比べ、無職者は40・4%に達するという。更生保護に携わる保護司、協力雇用主は犯罪防止に大きく寄与している。

 俺は幸いにも塀の外にとどまった境界線の人間だ。非行に走らなかったのは両親がしっかりしていたからだし、若くして自分の<歪んだ資質>に気付いたことも大きかった。教師や銀行員のような堅い仕事に就いていたら、ストレスで確実に社会面を賑わせただろう。痴漢、それとも万引? もっと危険な行為に及んだ可能性さえある。

 サラリーマン時代の末期、俺は兆しを自覚していた。管理職という裃(かみしも)が俺を蝕み、キレて言葉を荒らげことが何度かあった。かつての同僚にこの場を借りて謝りたい。

 過去を反省し、枯れた後半生を送るのが今の俺の目標だ。11月下旬のインド旅行は、煩悩を削ぎ落とすきっかけになるかもしれない。俺はいつの間にか従兄弟が企画したツアーの員数に入っていた。

 釈迦が悟りを得たブッダガヤも旅程に含まれている。朝日が煌くガンジス河で沐浴し、人生の新たな地平を開ければいいのだけれど……。



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NFL、WWE、POG~スポーツの秋たけなわ

2008-09-08 00:03:37 | スポーツ
 W杯最終予選のバーレーン戦を録画して見た。日本の試合を見るたび、「出でよ、肉食系ストライカー!」と叫びたくなる。高原は今、何してるんだろう。

 力士は「男芸者」と呼ばれるアスリート兼芸能人だ。所属タレントが麻薬吸って、社長が辞めたって話は聞かない。暴行死事件の方が遥かに深刻で、北の湖理事長は1年前に身を引くべきだった。 
 
 欧州サッカーが開幕した。Rマドリードにファンデルファールトが加わってオランダカルテット結成となれば、クラシコは中立で見るしかない。ここ数年はバルセロナ第一主義だったが、今季はリバプールを応援することにする。

 NFL開幕戦でジャイアンツがレッドスキンズを下し、連覇に向けて好スタートを切った。昨季のジャイアンツはシーズン中盤まで、鬼のコフリンHC、ひ弱なQBマニング、一家言を持つ悪童たちの三すくみ状態だった。<軋轢と不和>のチームが<管理と統率>のペイトリオッツをスーパーボウルで破るなんて、一体誰が予想できただろう。

 今季の注目チームはカウボーイズだ。戦術まで口出しするジョーンズ・オーナー、選手に優しいフィリップスHC、オーエンスを筆頭に結集した問題児たち、大一番にミスをするQBロモ……。空中分解の危険性も十分だが、程よく混ざってケミストリーが起きれば、王座獲得のチャンスはあると思う。

 ミッキー・ロークがプロレスラーを演じた「ザ・レスラー」がベネチア映画祭で金獅子賞を獲得した。機会があれば見ることにして、最近のWWEの感想を記したい。

 サマースラムではマクマホン会長の娘婿HHHがWWE王座を防衛し、JBLがCMパンクの持つ世界王座に挑んだ。バックステージの政治力がリングに直結しているのが心配だ。WWEでは過剰なプッシュがファンの反発を招くケースも多い。“被害者”だったシナはようやくブーイングから解放されたが、首の骨折で長期欠場する。

 ちょいわるにイメチェンしてブレークの兆しがあったケネディもケガだし、HBK、レイ・レイミステリオも万全の状態ではない。若手ヒールのランディ・オートンは療養中に交通事故に遭い、復帰がさらに遅れるという。森嶋猛のWWE入りが噂されているが、マンネリ気味の今なら活躍のチャンスも十分だ。

 秋のGⅠシリーズを前に、競馬に燃える日々が続いている。昨日(7日)の新潟2歳ステークスでは、ペーパーオーナーゲーム(POG)の指名馬が3頭出走し、セイウンワンダーが不良馬場で最後方からの差し切りを決めてくれた。

 最後に訃報を。10代の頃、キックボクシングの中継で毎週のように接していた寺内大吉氏がなくなった。浄土宗の高僧で、競輪の大ファンとして知られていた。スポーツジャーナリズムの発展に寄与した和尚のご冥福を祈りたい。



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「亀も空を飛ぶ」~物語から寓話の高みへ

2008-09-05 00:26:42 | 映画、ドラマ
 民主・共和両党の党大会、福田首相辞任後の密室劇……。薄っぺらな茶番の口直しに、シネフィル・イマジカで録画したイラン映画を3本見た。

 「わが故郷の歌」(02年)、「亀も空を飛ぶ」(04年)、「半月~ハーフ・ムーン~」(06年)はいずれもクルド人、バフマン・ゴバディ監督の作品だ。とりわけ心に染みたのは「亀も空を飛ぶ」で、ゴバディは戦災孤児から演技を超えた表現を引き出している。

 舞台はフセイン政権末期のイラク領クルド人居住区で、冒頭のシーンに悲劇的結末が暗示されている。世界の矛盾を引き受ける子供たちの健気な姿が、切っ先鋭く自らの無為を穿つ。情ではなく業の底を揺さぶられ、涙を抑えることはできなかった。

 主人公のサテライトは子供たちのリーダーで、パラボラアンテナ設置や撤去地雷の売買を請け負っている。サテライトは幼子を背負った少女アグリンに恋心を抱くが、気持ちは噛み合わない。アグリンはその瞳に深い悲しみを湛えていた。

 アグリンの兄ヘンゴウは地雷で両腕を失くしていた。サテライトは予知能力を持つヘンゴウに一目置くようになる。白眉というべきは、サテライトが駆る自転車の後部座席で、天啓に打たれたヘンゴウが体を震わせるシーンだ。間近に迫った米軍侵攻とアグリンの過去と未来が、ヘンゴウの脳裏でカットバックする。

 前稿で記したチョムスキーは<アメリカのイラク侵略は究極の国際犯罪>と断じていたが、イラクに住むクルド人の目に、米軍は悪魔(サダム・フセイン)を退治した解放軍と映ったのではないか。100%の真実など存在しないことを、ゴバディの作品が教えてくれた。

 「わが故郷の歌」と「半月~ハーフ・ムーン~」は、老音楽家を主役に据えたロードムービーだ。絶対的な賢者のお告げ、人前で歌うことを禁じられた女性たち、前近代的な風景……。時代設定は1世紀前と勘違いしそうだが、登場人物は携帯電話とパソコンでしっかり世界と繋がっていた。

 イラン人監督が芸術性の高い映画を作り続けてきた理由を、マフバルバフは「ハリウッドの影響を受けなかったから」と分析していた。物語が寓話に転じる奇跡の瞬間を味わえる確率が最も高いのは、間違いなくイラン映画だ。「亀も空を飛ぶ」はマフバルバフの「パンと植木鉢」とともに、俺にとって忘れ得ぬ作品になるだろう。
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真の民主主義を~チョムスキーの揺るがぬ意志

2008-09-02 00:48:32 | 社会、政治
 昨夜、テレビをつけるや目が点になった。福田首相が辞意を表明している。人権意識の欠片もない麻生幹事長が後任となれば、日本の民主主義は断末魔状態に陥るだろう。

 レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンが先月27日、民主党大会会場近くでフリーライブを決行し、虚妄のアメリカ民主主義に“NO”を突き付けた。8年ぶりの“快挙”で、<反戦イラク帰還兵の会>のメンバーに最敬礼するザックらの姿がYoutubeにアップされていた。

 レイジで連想するのがマサチューセッツ工科大(MIT)ノーマ・チョムスキー教授だ。言語学で革命を起こし、哲学、数学など他分野にも影響を与えた<知の巨人>であり、反戦、反グローバリズムの象徴でもある。「思想家ノーマ・チョムスキー~真の民主主義を育てる」(30日、NHK衛星1)では、同僚の宮川繁教授を聞き手に柔和な素顔を覗かせていた。

 <9・11>以降、メディアの煽りで排外的ナショナリズムが蔓延したが、<世界の中のアメリカ>を意識する人々が増えたとチョムスキーはプラス面も提示する。チョムスキーの影響下、レイジのライブでもアピールした<反戦イラク帰還兵の会>が結成された。

 大統領選挙はイメージ戦略の巧拙を問う場であり、重要課題――環境、格差、医療保険、イラク――が選択の基準になることはないと、チョムスキーは断言していた。チョムスキーに触発され、資本の論理と国家のコントロールを拒否した独立系メディアが全米で産声を上げている。番組で紹介されたニューヨークのフリーペーパーは、マイノリティーが抱える現実や反戦の訴えを1面に掲げていた。

 番組後半のテーマは教育だった。自主性を尊重する小学校で個性を伸ばしたチョムスキーは、当時の経験を基に<教育とは空の容器を水で満たすようなものではなく、花が自分なりに成長するのを支援するもの>と記している。

 チョムスキーはMITが01年にスタートさせたオープンコースウェアを高く評価している。MITのすべての講義は現在、ネット上で無料配信されている。日本でも18大学が採用しているこのシステムの推進者が宮川教授だった。

 宮川教授に民主主義の未来を切り開くキーワードを求められたチョムスキーは、“HOPE”と綴り、「現実を厳しく認識する悲観主義者でありながら、心には希望を持ち続ける楽観主義者でありたい」と言葉を結んでいた。
 
 日本でチョムスキーと同じ地平に立つのが辺見庸氏だ。チョムスキーは知性と理性、辺見氏は感性と情念で肉体を奮い立たせ、資本主義独裁からの解放を訴えている。今後も両者の声に耳を傾けていきたい。



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