酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

予想はフレンチで~凱旋門賞&スプリンターズS

2006-09-30 00:15:03 | 競馬
 10月1日、スプリンターズSで秋のGⅠシリーズが開幕する。ファンの目は昼より夜、凱旋門賞に挑むディープインパクトに注がれているようだ。

 「武豊TV!」で武と福永は、メディアの楽観論に釘を刺していた。ロンシャンでは大レース前に散水することもあり、より力の要る馬場になる。凱旋門賞上位馬がスピード仕様のJCで惨敗するケースを何度も目にしたが、逆もまた真で、ディープの鬼脚が重い馬場に削がれる可能性だってある。

 メーンディッシュ(凱旋門賞)は俄かナショナリストとしてディープを応援するが、本来は国際親善のコスモポリタンだ。前菜(スプリンターズS)は時間差のお返しで、遠征馬に花を持たせたい。サイレントウィットネスとベンバウンは本調子ではないとみて消すが、前走(セントウルS2着)で足慣らしをしたテイクオーバーターゲットは、2㌔減でもあり買わざるをえない。実績馬レザークにも頑張ってもらおう。

 迎え撃つ日本勢だが、上位人気が予想されるオレハマッテルゼとシーズトウショウは消すことにした。オレハは万全の態勢とは思えないし、シーズはセントウルSを12㌔減で圧勝した反動が出るとみた。狙うのは凱旋門賞絡みでシンボリエスケープだ。シンボリ牧場は早くから欧州に目を向け、スピードシンボリ、シリウスシンボリを凱旋門賞に出走させている。鞍上の蛯名は武と競馬学校同期生で、エルコンドルパサーとのコンビで凱旋門賞2着と大健闘した。凱旋門賞と縁が深い人馬に期待したい。日本馬でもう1頭挙げれば、使い減りしない健康熟女チアフルスマイルだ。

 結論。◎⑬テイクオーバーターゲット、○③レザーク、▲⑫シンボリエスケープ、△⑯チアフルスマイル。馬連と3連複は4頭ボックス、3連単は⑬1頭軸で<⑬・③・⑫><⑬・③・⑫・⑯><⑬・③・⑫・⑯>の14点。

 馬券を外しても、ディープがテイクオーバーターゲット(目標奪取)してくれたら文句はない。真性ナショナリストの安倍新首相のこと、ディープが凱旋門賞を制したら、人間以外に初の国民栄誉賞を授与することは確実……、なーんてありえない話だが、それぐらいのユーモアが欲しいものである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「孤独な破壊者」~小泉人気を支えたイメージとは

2006-09-27 01:01:22 | 社会、政治
 小泉純一郎氏の肩書が前首相になった。タカ派、身内、論功行賞の安倍新内閣でアジア外交が改善されるのか不安を覚える。

 最近気になるのは、<小泉⇒安倍>のブレーキ役として中曽根元首相を持ち上げる傾向だ。洞察力は認めざるをえないが、変わり身の早さで「風見鶏」と評され、清廉と対極に位置する政治家だった。<日本社会の地盤は粘土から砂に変質し、ポピュリズムに規定されたナショナリズムに流されている>という趣旨の中曽根氏の分析が「ニュース23」で紹介されていたが、今日の政治の本質を穿っていることは確かだ。

 ポピュリズムについて議論されているが、小泉人気の理由について納得いく答えが提示されていない。マッド・アマノ氏は小泉首相の最後の訪米の様子に、<変人から愛人へ>と題したパロディーを作成した。一国の指導者が他国首脳の前で「ラブ・ミー・テンダー(優しく愛して)」と歌うなど醜態としか言いようがないが、支持率は落ちなかった。<恥>や<矜持>はこの国で死語になったらしい。

 <砂社会>になったからこそ人々は<絆>に幻想を抱きがちだが、小泉氏は情と無縁だ。家族はタブーで、「理想の父」「理想の上司」「理想の友」と程遠い冷徹な人間であることは、国民は承知の上だった。青木氏との関係は辛うじて保ったが、盟友の山崎氏や加藤氏を切り捨て、昵懇だった綿貫氏や野田氏も<抵抗勢力>と一括りにして追放した。

 <革命>以上に人を鼓舞する響きはない。近隣諸国と比べ政治的ダイナミズムに欠ける日本だが、一歩手前の<改革>という囃し文句に国民は踊らされてきた。小沢氏が<改革>を掲げた時期、小泉氏は<守旧派>代表だったが、首相になるや<改革>を叫び喝采を浴びた。<壊し屋>なら負けない小沢氏だが、大衆的人気を獲得していない。小沢氏になくて小泉氏にあったのは<孤独>ではなかろうか。政治家は大概、自分がどれほど多くの仲間に囲まれているか嬉々としてアピールするが、小泉氏のパブリックイメージは真逆の<絶対的孤独>だ。官邸で独り、ワインを飲みながらオペラを聴いている姿が思い浮かぶ。

 小泉氏の支持基盤は20~30代と60代以上だった。最もテレビを見る年齢層で、<ワイドショー政治>の結果と分析されているが、<最もテレビを見る=孤独>と言い換えることも可能だ。生まれながらにして乾性植物の若い世代と、かつて湿性だったが干からびてしまった老人たち……。彼らの孤独とピッタリ重なったのが、一国の宰相ではなかったか。

 話は変わるが、丹波哲郎さんが亡くなった。「キイハンター」のボス役が丹波さんとの出会いで、千葉真一、野際陽子、谷隼人、大川栄子らが脇を固めていた。ミステリー、ハードボイルド、アクション、コメディーと様々な要素が詰め込まれ、人間の愚かな欲望が抉り出されていた。10代前半ゆえ背伸びしつつ見ていた俺にとり、<人生の予習>というべき番組だった。

 個人的な好みは「組織暴力」と「続組織暴力」だが、主演、助演、脇役を問わず、丹波さんほど邦画史を飾る名作の数々に出演した俳優はいない。ファンのみならず、監督やスタッフに愛され重宝された役者だったのだろう。ご冥福を祈りたい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

左京再論~「日本沈没第二部」

2006-09-24 00:27:32 | 読書
 「日本沈没」の続編が、33年の歳月を経て発刊された。小松左京のアイデアを基に数人のSF作家が構想を練り、谷甲州が執筆した。<チーム小松>による作品というべきだろう。

 400万部を売り上げた空前のベストセラー「日本沈没」を最高傑作と思い込んでいる方も多いが、左京作品ではせいぜい標準レベルである。期待しないで読んだ続編も「想定内」というのが率直な感想だ。以下に簡単に内容を記したい。

 国土消滅後、日本人は世界中に散らばり、中央政府はオーストラリア・ダーウィンに置かれている。パプアニューギニアでジャングルを開拓する移民、中央アジアで政治の波にもまれる難民が、苦闘する日本人の象徴として描かれている。日本海をめぐる中国との軋轢、エゴむき出しのアメリカの姿も、現実さながら盛り込まれていた。日本人が生き残る手段として、技術の粋を結集した<地球シミュレータ>が完成する。日本政府が講じた策は果たして……。

 姜尚中東大教授は、アメリカ追随の日本が<アジアのイスラエル>になりつつあると論じていた。<チーム小松>は本作で、流浪する日本人をユダヤ人と重ねて描いている。ユダヤ人とはユダヤ人の母から生まれ、ユダヤ教徒であること……。中田首相はユダヤに倣い、日本人を狭隘なアイデンティティーで束ねることを試みた。現実の政治でも同様の流れが進行している。安倍新首相は憲法と教育基本法の改正により、ナショナリズムの確立を目指しているからだ。

 国家ではなく組織原理に支配されがちな日本人の志向、異文化への柔軟な対応を勘案した鳥飼外相は、コスモポリタニズムの立場から中田首相と対立する。ナショナリズムとコスモポリタニズムのいずれに立脚すべきか、国家とは、民族とは……。<チーム小松>は結末で、自らの立ち位置を提示している。「日本沈没第二部」はテーマ性とスケールを併せ持つ作品で、特異の状況下に多くの登場人物を配しており、3倍以上のボリュームが必要ではなかったか。

 読了後、別稿(昨年11月29日)で紹介した「極冠作戦」(67年)を思い出した。環境破壊、地震の頻発、中国の台頭、利潤追求のみに邁進するアメリカ、権力ヘの盲従と知性の低下など、40年後の現在を高い精度で予測した作品である。

 小松左京の神髄に触れたいなら、「物体O」、「時の顔」、「夜が明けたら」、「結晶星団」(いずれもハルキ文庫)などの中短編集がお薦めだ。極大と極小を繋ぐ透明の糸が張り巡らされ、ホラー的要素もふんだんにちりばめられている。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

安倍新首相のアキレス腱

2006-09-21 00:34:08 | 社会、政治
 安倍晋三氏が自民党総裁に選出されたが、得票数は伸び悩んだ。メディアは尻尾を振ると予想していたが、「週刊現代」と「週刊ポスト」は反安倍キャンペーンを展開している。最新号ではそれぞれ、統一教会、耐震偽装との繋がりを取り上げていた。安倍氏は脇が甘く、パチンコ業界との癒着がマスコミを賑わせたこともあった。

 安倍氏は父晋太郎氏の代から<統一教会=勝共連合>とのパイプも太い。だが、統一教会は90年以降、反共どころか金王朝と良好な関係を築いている。野中氏から北朝鮮の利権を奪ったのは<反北朝鮮の牙城>と目される森派の重鎮というから、政界は百鬼夜行だ。

 靖国参拝で波紋を広げた小泉首相だが、「村山談話」を継承し、A級戦犯の責任を肯定した。後継の安倍氏は右に大きく舵を取る純正の<改憲タカ派>と見做されている。「サンデープロジェクト」で田原キャスターは、安倍氏の戦争責任に対する歴史認識を執拗に問うていた。A級戦犯をめぐる質疑になると、安倍氏は祖父岸信介の名誉を守ろうとするあまり、頑なに身構えていた。

 岸には北一輝に傾倒した時期があった。北は2・26事件との関わりで右翼と見做されているが、10代の頃から反皇室的言辞でマークされ、天皇を<木偶>として利用することを試みた革命家である。大逆事件への連座を免れた北は、汎アジア主義を掲げて中国革命成就に奔走する。<昭和の妖怪>と揶揄された岸だが、左右に顔が利くことで「両岸」と呼ばれ、最低賃金制や国民年金を導入した。その辺りに北の影響が窺える。

 今月上旬の「テレビ噂の真相」で安倍新首相を分析していたが、マッド・アマノ氏の証言が興味深かった。04年参院選時、自民党の「この国を想い、この国を創る」のキャッチコピーを、アマノ氏は「あの米国を想い、この属国を創る」とパロディーにした。後日、安倍幹事長(当時)から恫喝を受けたという。

 少年時代の安倍氏を想像してみる。優しく接してくれた祖父がマスコミに現れる時は、「戦犯上がり」とか「CIAの代理人」といった定冠詞付きだった。安倍少年にとって祖父を非難するマスコミは憎しみの対象であり、トラウマだったかもしれない。NHK介入問題でも、安倍氏の高圧的な姿勢は目立っていた。新政権の言論操作はチェックする必要がある。

 安倍新首相にとって、祖父岸信介の存在は最大の強みであり、同時にアキレス腱なのだろう。果たして安倍氏は<妖怪>のDNAを受け継いでいるのだろうか。まっすぐ歩もうとすると、短命政権で終わる可能性が高い。

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

リオは東京の未来?

2006-09-18 00:35:25 | 社会、政治
 前稿で「バス174」を取り上げた。見終えた後、日本とブラジルの回路を自分なりに考えてみた。

 アメリカは80年代、長期不況から脱するため高金利政策を掲げる。結果として債務国の経済は破綻の憂き目を見る。ブラジルも同様で、アメリカ主導の新自由主義が幅を利かすようになった。<ひき逃げ犯が医者を装い、被害者に偽薬を投入した>との喩え通り、ブラジルは極度の格差社会になる。

 <小泉―竹中ライン>の金科玉条というべき新自由主義は、民営化、規制緩和、市場開放の3点セットだ。日本では肯定的な識者が多いが、南米の指導者たちは自国の経緯を踏まえ、<新自由主義=諸悪の根源>と断言する。<日本の常識は南米の非常識>ということなのだろう。

 ベネズエラ、チリ、アルゼンチン、ブラジル、ボリビア、ペルーでは、<格差拡大⇒貧困層の政治参加⇒左派政権誕生⇒反グローバリズムの高揚>の道筋を辿る。日本で死語になった社会主義が、南米大陸では人々の希望になった。ブラジルのルーラ大統領は労働党の指名を受託し、2期目に向けて立候補を表明した。ルーラ大統領も他の南米の首脳同様、反グローバリズムを掲げ、中ロとの接近を図っている。「バス174」はルーラ政権以前の作品だが、この3年で経済や人権がどのように改善されたか興味がある。

 ブラジルは再生への秘密兵器を持っている。サトウキビからバイオ燃料エタノールを生成する事業が、世界のエネルギー事情を変えようとしているからだ。エタノールにはガソリンの半額で供給されるし、環境にも優しい。世界中のメーカーは、エタノール対応の新車開発にしのぎを削っている。ブラジル国内では失業者がサトウキビ農園に吸収され、雇用の拡大を生んでいる。

 エタノールをめぐる狂騒を眺めるうち、ある人物に行き当たった。二十数年前、似たプランの実現に奔走し、巨額の債務を抱えた男がいた。アントニオ猪木である。サトウキビを原料に用い、<工業=農業=牧畜>を循環的に発展させるという「アントン・ハイセル」はたちまち行き詰まった。ドン・キホーテ扱いされた猪木だったが、直感が正しかったことは認めざるをえない。

 日本ではこの5年、地方は壊れ失踪者や自殺者も減らない。東京にもスラムが広がり、リオのような街になるのではという不安もあるが、日本人独特のバランス感覚に賭けてみたい。和を尊ぶ日本人は、世界に例を見ないほど格差に敏感な国民だ。安倍政権では大幅な軌道修正がなされるだろう。南米で起きた<格差拡大⇒社会主義復権>の道筋こそ、日本のエスタブリッシュメントが何より恐れる<未来図>なのだから……。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「バス174」~ブラジルの闇を穿つ

2006-09-15 00:22:47 | 映画、ドラマ
 ブラジルと聞いて連想するのはサッカー、サンバ、カーニバルだ。創造性、開放的といったプラスイメージだけではなく、Bricsの一翼を担い、さらなる経済成長が約束されている……と書くとまるでパラダイスだが、スクリーンの中のブラジルは出口のない迷路だ。貧困と格差を背景にした矛盾と暴力は、「セントラル・ステーション」(98年)、「シティ・オブ・ゴッド」(02年)、「カランジル」(03年)などで生々しく描かれている。
  
 WOWOWで放映されたドキュメンタリー「バス174」(02年)も同様だ。00年にリオデジャネイロで起きたバスジャック事件の本質を、実写フィルムと証言を織り交ぜてあぶり出していく。拳銃を手にバスに立てこもったサンドロはメディアを十分意識して振る舞い、事件を伝えるテレビにブラジル中が釘付けになった。

 サンドロの人生は苦難の連続だった。幼い頃、目の前で母親を刺殺され、ストリートチルドレンになる。映像でのサンドロは狂気と衝動を抑制できない若者だが、関係者の証言で別の素顔が浮かび上がる。サンドロはコカインやシンナーに溺れたが、他者を傷つけることはなかったという。バスでは内向けと外向けの会話が同時進行し、恐怖を演じた人質女性たちは、サンドロに殺意がないことを感じ取っていた。

 抉り出した問題点は三つある。第一は警察の暴力的体質だ。サンドロは「俺はカンデラリアにいた」とテレビカメラに向かって叫んでいた。93年、カンデラリア教会前で警官が発砲し、7人のストリートチルドレンが虐殺された。難を逃れた62人のうち、00年までに39人が殺されたとソーシャルワーカーが証言している。サンドロは生き残りの一人だった。

 第二は市民の冷たさだ。カンデラリア虐殺事件に対し、世論は警察に好意的だった。ストリートチルドレンは不可視の存在で、「犯罪に走る社会のゴミを排除して何が悪い」という声が多数を占めたのである。第三は更生施設や刑務所の悲惨な状況だ。収容された者は生き地獄で、憎しみと暴力への志向が育んでいく。

 サンドロは交渉のため、人質の一人と車外に出た。テレビカメラは警察の失態と悲劇的な結末を伝えている。ヒューマニズムの極北を穿った作品だったが、救いはあった。バスを出る直前、会話の中でサンドロが崩れるのを感じたと人質女性が証言している。彼女にすれば身を守るための演技だったかもしれないが、サンドロは幼い頃に殺された母の優しさを思い出したのかもしれない。

 見終わった後、日本とブラジル、自分とサンドロを繋ぐ回路を探っていた。答えは次稿に記すことにする。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

斎藤ふたりのサプライズ

2006-09-12 00:18:37 | スポーツ
 斎藤佑樹投手が進学の意思を表明した。自らを未熟と語る謙虚さに、好感度はさらにアップする。斎藤のイメージは<理想の息子>で、ヨン様追っかけから転向した中高年女性が多いという。斎藤個人の人気というより、堅実で控えめな両親と優しい兄を含めた斎藤家が、砂漠化した日本の社会に潤いを与えている。

 斎藤はセンバツで横浜に乱打され、西東京大会の内容もいまひとつだった。甲子園ではせいぜいベスト8と予想していたが、悪魔憑きならぬ女神憑きの投球に、見る目のなさを痛感する。江本孟紀氏は斎藤について、「現在がピークではないか」と語っていた。一方で元祖アイドル球児の太田幸司氏は「月刊現代」誌上、「コントロールと切れはプロで十分通用する」と絶賛している。関係者の見解も分かれているが、答えは4年後に出るだろう。

 同じ斎藤姓だが、目覚しい変貌を遂げた(オールド)シンデレラボーイが話題になることは少ない。斎藤隆はマイナー契約から這い上がり、ドジャーズのクローザーとして大活躍している。62試合に登板して5勝2敗18S、防御率1・99、68回で90奪三振、被本塁打3と申し分ない成績だ(数字は11日現在)。

 <力任せでポカの多い投手>が斎藤の日本球界での評価だった。スピードが落ちて「打ち頃」の投手になり、表舞台から遠ざかる。昨年夏、ファームで汗にまみれる斎藤の姿が、ニュース番組で紹介されていた。当人が明るかった分、痛々しさを覚えたものだが、笑顔の裏に飛躍への確信を秘めていたのだろう。

 当ブログで何度も記したように、俺は老境に達して輝く人に憧れる。36歳は野球選手にとって「老」の部類ゆえ、斎藤隆は俺にとって今季MVPである。現在ナ西地区首位のドジャースはプレーオフ出場が有望だ。来月には注目を浴びているだろう。

 18歳の斎藤佑樹、36歳の斎藤隆……。今季の球界は斎藤ふたりが最大のサプライズだった。高校野球とMLBの輝きは失せていないが、多くのドラマを生んできたプロ野球の人気失墜が著しい。再浮上への特効薬はあるのだろうか。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

NFL開幕~誰が女神を射止めるか

2006-09-09 03:01:52 | スポーツ
 NFLが開幕した。スティーラーズがドルフィンズを 28対17で下し、2連覇に向け幸先のいいスタートを切った。勝負の分かれ目は、スティーラーズを自陣に釘付けにしていたドルフィンズの不用意な反則だった。

 日本で得られる情報量に限りがある以上、人間的側面に注目するようになった。アメフトのようなコンタクトスポーツでは、モラル、モチベーション、ケミストリーがチームの浮沈を左右する。戦術がギャンブルで成り立っている以上、運や流れも大きな要素だ。気まぐれな女神は微笑む相手をコロコロ変える。スティーラーズは昨季、11月末の時点でプレーオフ出場は絶望的だった。難敵ベアーズを破って女神のスカートの裾に指を掛け、一気にご本尊を抱き寄せた。

 本国アメリカではメディア、アナリスト、胴元が自らのレーゾンデートル(存在価値)を懸けて戦力を分析する。NFLが特殊なのは、主催者まで予想を「公表」することだ。高視聴率のマンデーナイトやサンデーナイトに全米注目(と想定した)試合を組み込んでいくが、思惑通り運ばない。熾烈なV争いのはずが、結果として消化ゲームというケースがシーズン終盤に頻発し、テレビ局は文句タラタラである。

 主催者さえ外すのだから、俺が的中できるはずもないが、地区V予想というより願望を簡単に記したい。ガオラの「V予想クイズ」も下記の通り応募した。全地区的中すれば、2月にハワイに行ける。

 <AFC東>…開幕戦では敗れたが、カルペッパーを先発QBに据えたドルフィンズを推す。ベリチック―ブレイディの神様コンビが率いるペイトリオッツだが、頭脳勝負にも限界があるのでは……。
 <AFC北>…王者スティーラーズを差し置いてベンガルズを一番手に挙げる。昨季の躍進をフロック視する声もあるが、守備の天才と称されるルイスHCの手腕に注目だ。
 <AFC西>…大一番で勝てないコルツだが、今季もスーパーボウルに近いチームだ。ジャガーズはスケジュールが厳しく、昨季(12勝4敗)から星を落としそうだ。再建途上のタイタンズには、ローズボウルで神懸かり的な活躍を見せたルーキ0QBヤングが加入した。
 <AFC南>…下馬評ではブロンコスだが、「非運の名将」エドワーズ新HCの守備強化に期待してチーフスを推す。チャージャーズは新QBリヴァーズ次第だ。
 <NFC東>…オーエンスをめぐるカウボーイズとイーグルスの遺恨に注目だ。Rスキンズも堅実で骨が軋む戦いが演じられそうだが、華のあるジャイアンツに期待する。スター軍団と頑固親父コフリンHCとのミスマッチを楽しみたい。
 <NFC北>…「専守防衛」ベアーズは面白みがないので、先物買いでライオンズに期待する。攻撃コ-ディネーターに就任したマイク・マーツ(前ラムズHC)がどこまでチームを変えるのか楽しだ。
 <NFC西>…昨季はRB陣の故障が相次ぎスーパーボウル出場を逃したパンサーズだが、戦力は充実している。QBシムズ―RBウィリアムズの若手コンビが牽引するバッカニアーズ、怪物QBヴィックを擁するファルコンズも強敵だ。FAでQBブリーズ、ドラフトでRBブッシュを獲得したセインツにも注目と、見どころが多い地区だ。
 <NFC南>…昨季NFC王者シーホークスの優位は動かない。注目はコルツからRBジェームズを獲得したカーディナルスだ。QBワーナーともども、最後の一花を咲かせてほしい。

 WOWOWは年間20億円近くを吹っかけられたが、何とかリーガの放映権を獲得した。本国での放映権料は年間4400億円のNFLだが、日本では格安で、NHKは2億円、スカパーと合わせても5億円前後だろう。NFLに欲張りな代理店がつかないことを切に願いたい。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「悪魔のような女」

2006-09-06 03:46:07 | 映画、ドラマ
 ルネ・クレール、マルセル・カルネ、ジャン・ルノワール、ジュリアン・デュヴィヴィエ、ジャン・コクトー、アンリ・ジョルジュ・クルーゾー……。錚々たる顔ぶれは<映画の公式>を確立したフランスの巨匠たちだ。

 それぞれに思い入れはあるが、個人的な一押しはクルーゾーだ。魔法のメガホンで人間の暗部を抉り出し、スクリーンに刻み付けてしまう。物語を寓話や神話の域に深化させるクルーゾーの術に、畏敬の念を抱くしかない。

 クルーゾーは「フィルムノワールの先駆者」と評されるが、エンターテインメント色も濃い。「恐怖の報酬」(52年)、「悪魔のような女」(55年)はともにハリウッドでリメークされたが、クルーゾー版に遠く及ばない。

 「密告」(43年)、「犯罪河岸」(47年)も必見だが、「情婦マノン」(48年)は男女の深淵に迫った究極の恋愛映画だ。別稿にも書いたが、「浮雲」(55年、成瀬巳喜男)は「情婦マノン」にインスパイアされたというのが俺の勝手な妄想である。

 NHK衛星第2で先日放映された「悪魔のような女」を二十数年ぶりに見た。シンプルながらどんでん返しが用意されたサスペンスで、ヒチコックのサイコスリラーのような味付けもある。興趣を削ぐので、内容の紹介は最低限にとどめたい。

 全寮制男子校の校長ミシェルは暴君として振る舞っているが、権力の源は病弱の妻クリスティナの財産である。女教師ニコルは彼の愛人だが、ミシェルの暴力に悩んでいた。ニコルはクリスティナにある計画を持ちかける……。

 クルーゾー作品において、子供たちは決して無垢ではない。虚言癖のあるモワネ少年を狂言回しに設定し、子供たちは大人と変わらず詮索好きだ。ちなみに原題は「悪魔のような女たち」と複数形だ。内容と一致するかは見てのお楽しみである。

 映画における「悪魔」は2通りある。第一は<内なる邪さ>を「悪魔」に喩えるパターンだ。一方、「尼僧ヨアンナ」などポーランド映画では、「悪魔」を外在的に捉え、<人間に憑き支配するもの>として描いている。ちなみに、本作の「悪魔」は前者である。

 ニュースを見る限り、「悪魔のような女」が日本でも増えている。魔女的佇まいの女性ロッカーに痺れた経験は多々あるが、「悪魔のような女」と身近に接したことはない。もっと残念なのは、「天使のような女」に出会っていないことだけれど……。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

老いて盛んな者たち~レスラー&ロッカー

2006-09-04 03:16:43 | 戯れ言
 前稿に続き、「老い」について。

 ダブルヘッダーで16時間仕事をした。50歳間近の身には応えるが、年長の先輩が徹夜で奮闘する姿を目にすると、「疲れた」など言っておれない。

 政界にお盛んな老人が多いのは当然として、「瞬間最大風速」を楽しむはずのプロレスやロックの世界もまた、高齢化が著しい。

 日本のプロレス界と比べ新陳代謝がスムーズだったWWEも、時計の針が止まり気味だ。ビンス・マクマホン会長は61歳にして、鍛え上げた肉体をリングで曝している。「反抗の象徴」DXにしても、HBKが41歳、HHHが38歳ではリアリティーに大いに欠ける。アティテュード路線で粉砕されたフレアー(57)とホーガン(53)は、そろって「サマースラム」に出場した。ホーガンは「張子の虎」扱いだが、フレアーへの評価は高い。「受け」を血まみれで実践できる技量と、エンターテイナーとしての資質を兼ね備えているからだ。

 先日のフレアーのマイクパフォーマンスは印象的だった。「これまで偉大なレスラーを何人も見てきた」と回想し、ブロディとハンセンを筆頭に挙げた。両者はアメリカで過小評価されているから、現地の若い観衆は「?」だったに違いないが、日本のプロレスファンはジーン来る場面だった。

 ロック界で頑張るご老体といえば、ストーンズとフーだ。成り行き上、レスラーに喩えると、ストーンズはフレアー、フーはカール・ゴッチか。ストーンズは昨年度、米国内で最もツアーで収益を上げたアーティストだった。一方のフーはワイト島フェスで気鋭のバンドと伍すなど、ライブの実力は衰えない。秋には待望の新作(コンセプトアルバム)も発売される。

 俺がロックに熱中し始めた頃、ストーンズとフーは既に、伝説と神話に彩られたバンドだった。ストーンズは風俗紊乱と頽廃の象徴で、フーは若者の代弁者的存在だった。キースは「サー」の称号を得たミックに「絶交宣言」を突き付けたが、いつの間にか元の鞘に納まっている。フーで生き残ったピートとロジャーは、年月を経て恩讐を乗り越えたようだ。

 長持ちするプロレスラーやロッカーたちは、並外れた意志の力と節制でコンディションを保持している。さらに彼らを支えているのは、友情や葛藤を織り交ぜた仲間意識ではないか。そういや政治家たちも、仲間を作っては分裂と、離合集散を繰り返している。元気な老人になるには、「仲間」もしくは「敵」の存在が必要かもしれない。将棋クラブとか俳句サークルにでも入ろうかな。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする