酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

大義なき五輪にNO!~IOC総会を前に

2009-09-30 00:02:30 | 社会、政治
 俺は民主党支持でもナショナリストでもないが、鳩山首相の国連での演説に感銘を受けた。〝アメリカのポチ〟と揶揄されたり、小学生の作文のようなスローガンを掲げたり、人権意識の欠片もなかったりと、ここ数代のリーダーがひど過ぎたから、〝普通〟が新鮮に映っただけかもしれないが……。

 新著のPRのため来日した〝世界最高の知性〟ジャック・アタリは、「財界に異見はあるようだが、環境重視に則った技術革新こそ日本の生きる道」と新政権支持のコメントを残した。前々稿(24日)冒頭に記した内容と一致したことが少しうれしい。ちなみにアタリは最近<愛他>を説いている。鳩山首相の<友愛>とどこかで繋がっているのだろうか。

 来月2日、2016年の五輪開催地が決定する。下馬評では東京は厳しそうだが、鳩山首相は予定を変更してIOC総会(コペンハーゲン)に出席する。それではと、オバマ大統領まで駆けつけることになった。

 東京オリンピックが開催された1964年、小学2年生だった俺は、大人たちが必死に応援する〝国〟という存在を知る。三島由紀夫の自決以降、愛国心は右翼の専売特許になったが、60年代は社会に遍く浸透していた。三派系全学連の街頭闘争を支えたのは、庶民の〝反米愛国〟感情だったという。

 モノクロの小さな画面で、俺は〝国〟より重要な〝女性〟を発見した。フランスの水泳選手、東欧の体操選手etc……。俺は女性アスリートの美しさに目を奪われた。「あのときめきをもう一度」と言いたいところだが、今回の五輪開催は「NO!」である。

 高度成長期に開催された東京オリンピックは、国民や市民にさほどツケを残さなかったとされるが、小林信彦の小説などに描かれているように、国を挙げての東京浄化が進行していた。その後の五輪は、札幌の自然破壊、長野の財政逼迫と負の遺産が目立つ。

 64年は10月開催と最適の時季だったが、16年は8月を想定している。主役はあくまで選手なのに、ヒートアイランドで競技を強いるなんて狂気の沙汰だ。「ニュースの深層」で谷口源太郎氏は、トライアスロンのコース(お台場)が抱える水質問題を指摘していた。

 そもそも、石原都知事に国際交流を語る資格はあるだろうか。排外主義的な言動に事欠かなかったが、東京五輪に向けて修正せざるを得ず、親しい野中広務氏の仲介で中国政府との関係改善を図る。「ドンとして東京五輪を迎えたい」が本音だろうが、事はうまく運びそうにない。

 日本は現在、傷みが目立つ巨大な装置といえる。貧困率の上昇、1人当たりのGDPの減少、少子化、農業自給率の低下、年金・福祉・医療の制度崩壊と問題は山積している。ピットインして疲れを癒やし、国力を整備する時期で、オリンピックに莫大な資金を投入するべきではないというのが、国民の声ではないだろうか。

 日曜夜、「大食い王決定戦」を見た。予選突破した唯一の男性も早々に敗退し、女性たちの独壇場となる。肉食系女子、草食系男子の時代を象徴する番組だった。優勝者の実力は抜きん出ていたが、彼女に〝痛さ〟を覚えたのは俺だけだろうか。

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青春を生きる還暦男たち~シティボーイズの魅力とは

2009-09-27 02:56:24 | カルチャー
 1966年7月27日、小学4年生だった俺は、父と叔父に連れられ甲子園を初体験した。巨人の練習中、三塁側スタンドにボールが飛び込み、足元に転がる。手を振る背番号6にエイッと投げると、グラブにすっぽり納まった。

 その夜、ONがアベックアーチを懸け、堀内が開幕13連勝の新人記録を作る。〝フィールド・オブ・ドリームス〟の案内人に思えた背番号6の訃報に、時の流れを感じた。土井正三氏の冥福を心から祈りたい。

 今回はシルバーウイーク中に見た録画物から、「シティボーイズミックスPRESENTS~そこで黄金のキッス」について記したい。

 使える時間に限度があり、芝居関連で見るのはシティボーイズのGW公演(WOWOW)ぐらいだ。互いの領域を侵犯しない大竹まこと、きたろう、斉木しげるの個性が円を形成し、還暦を迎えても遠心力を失わず回転している。

 人生とはある意味、可能性や友を消しゴムで塗り潰していくようなものだろう。鈍色の孤独を纏った俺と比べ、シティボーイズは妬ましいほど若々しく、楽しそうだ。疾走するステージを色に例えれば、青、蒼、碧といったところか。

 長年のファンはシティボーイズに、高いレベルのパフォーマンスを求めている。笑いだけでなく前衛、ナンセンス、不条理の要素も強く、門外漢の俺には理解できぬシーンも多かったが、今年は極めてわかりやすかった。

 資本主義の危機を背景に共産主義を戯画化した<共産主義の会社>、姨捨山を想起させる<じじ捨て川>、世代間のズレを描く<遭難した息子>、ポピュリズム批判が窺える<覚醒剤総理>……。社会の動きと繋がり、テーマ性が浮き彫りになるコントが多かった。

 抜群の間で怒りをぶちまける大竹、優柔不断と曖昧を見事に体現するきたろうのやりとりもおかしかったが、目立っていたのは規格外れの斉木だ。一人デュエット「銀座の恋の物語」、狂った総理など相変わらず破天荒なパワーに満ちていた。

 今回もワサビのように中村有志が舞台を引き締めていた。細川徹、ふじきみつ彦、春山優ら次世代の演者たちも、今後さまざまな形でシティボーイズと絡んでいくに違いない。

 本人たちいわく、日常はかなりいい加減という。自然体に生きながらエネルギーを蓄積し、GWの公演に備えているのだろう。来年もテレビ桟敷での観劇を楽しみにしている。
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孤独の功罪~シルバーウイークを自己採点

2009-09-24 00:22:24 | 戯れ言
 <温室効果ガス25%削減>を掲げた国連での鳩山演説が、欧州各国やNGO関係者から高い評価を受けた。俺が思い出したのは、排ガス規制を定めたマスキー法(1970年)である。

 当時〝安かろう悪かろう〟の象徴だった「メイド・イン・ジャパン」のイメージは、実現不可能といわれたマスキー法を自動車メーカーが次々クリアしたことで一気に上昇する。あれから40年、日本経済は環境をキーワードに再生の道を模索できるだろうか。

 前稿にシルバーウイークの目標を記した。達成度を自己採点(10点満点)すると、①睡眠と休養=8、②水分摂取の制限=1、③掃除と片付け=2、④たまった録画の消化=8といったところか。

 数字はすべて、孤独に根差している。孤独だから用事もなく、たまった録画を見る合間にたっぷり眠れる。誰も訪れてこないから、掃除する必要もない。妻子や愛人がいない俺に、健康に気を配るきっかけはない。

 ……と書くと、俺をよく知る読者は違和感を覚えるかもしれない。学生の頃から勤め人時代まで、俺はコミュニケーションを重視する社交家だった。いつしか志向は逆になり、積極的にコンタクトを取ることは殆どない。アナログ的な付き合いは激減したが、ブログで多くの人と繋がっていると考えれば、孤独ではないという見方も成り立つが……。

 スポーツの秋、様々なイベントをテレビ桟敷で楽しんだ。フロイド・メイウェザーが1年9カ月ぶりの復帰戦で、歴戦の雄マルケスを圧倒した。レッスルマニア'08に登場し、RAWで特別ホストを務めるなど、メイウェザーはWWEと交流している。その縁なのか、HHHがセコンド陣に加わっていた。

 試合後、モズリーが対戦をアピールしていたが、ファンが望むのは〝スピードスター〟メイウェザーと〝野性の男〟マニー・パッキャオの対決だ。遠からず実現するはずのボクシング史上最高の闘いは、いかなる結末を迎えるだろうか。

 ロナウド、カカ、シャビ・アロンソらを獲得したレアル・マドリードが440億円の負債を抱えているという。その一方、無尽蔵の資金を感じさせるのがNFLのカウボーイズだ。新スタジアムの総工費は話題の八ツ場ダムの4分の1弱(1100億円)で、こけら落としにはブッシュ前大統領らお歴々が顔を揃えた。

 〝NFLに最も近づいた日本人〟こと河口正史氏は、「NFLを貫くのは社会主義」と語っている。弱肉強食のルールを勝ち抜いた32人のオーナーが、リーグ繁栄のためにエゴを捨て、チーム力の均衡を目指す。別稿で「NFLは最も資本主義的なスポーツ」と記したが、根底にある公正と平等の精神が普遍性のあるエンターテインメントを現出させているのだろう。

 数試合見ただけだが、若いQBがチームを引っ張るレイヴンズとファルコンズがなかなか面白い。戦いながら成長できれば、スーパーボウル進出も夢ではない。




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自分って何色?~緩い日々に考えたこと

2009-09-21 02:55:25 | 戯れ言
 土曜の午後、なじみの整骨院で肩凝りの治療を受ける。首の左を押されると指先が痺れ、右を押されると奥歯がズキズキした。あちこちのツボで繋がる〝人体の神秘〟に改めて思い至る。

 日曜の昼、方南通りで2羽の蝶を見た。姿態を焼き付け部屋で調べる。モンシロチョウとウラナミシジミのようだが、汚れた大気を舞う心待ちはいかに。

 シルバーウイークの目標を立てた。①睡眠と休養、②水分摂取の制限、③掃除と片付け、④たまった録画の消化である。日がなゴロゴロ、怠惰な時間を満喫するつもりだ。 

 別稿(9月3日)に記した夏バテはこの間、確実に悪化した。気候の変化に対応せず、<夏モードで水分摂取⇒頻尿⇒浅い睡眠⇒疲労蓄積>の悪循環に陥っている。不思議なことに10代の食欲(性欲だったらな)が甦った。糖尿の前兆かもしれない。節制で好転しなかったら、検査を受けるつもりだ。

 <たまった録画その一>は「名探偵コナン」で、数回分をまとめて見た。眠らせたおっちゃん(毛利小五郎)の声を使ってコナンが難事件を解決する場面が番組のハイライトだが、毛利役の声優(神谷明)降板が本人のブログで発表された。長年のファンにとっては残念なニュースである。

 <たまった録画その二>のWWEも残念な事態になっていた。当代一の人気レスラーで〝WWEのカート・コバーン〟を演じてきたジェフ・ハーディー(32)が、負けたら追放というストーリーに沿って退団する。ラストマッチ翌日の逮捕(複数の薬物疑惑)という流れに、当局との取引が匂う。

 ジェフがこの10年、想像を絶する痛みと恐怖に耐えてきたことは、危険な試合の数々から想像できる。ピルマン、ゲレロ、ベノワらの不幸な死の陰にも薬物があり、現在はレイ・ミステリオが謹慎中だ。薬物追放を謳うWWEだが、選手に求めるシナリオをやさしくしないと、悲劇は後を絶たないのではないか。

 今日21日は敬老の日らしい。だからシルバーウイークかと、命名の妙に感心してしまう。ふと、ある問いが脳裏をかすめた。自分の今、そして人生を色に例えたら何色だろう?

 未熟の青、無知の白、ファジーな灰色、混沌の紫……。候補はいろいろあるが、一番近いのは茶色かもしれない。人生の黄昏を迎え、濃さは幾分増している。



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「ザ・レジスタンス」~ミューズが提示した壮大な実験

2009-09-18 03:45:08 | 音楽
 今回はミューズの5thアルバム「ザ・レジスタンス」について記したい。9月4日のBBC放映分など欧州でのライブがYouTubeにアップされている。CDを聴く前にアルバムの中身が把握できるのだから、ロックを取り巻く環境は大きく変化したものだ。

 ミューズは24日から、U2の北米スタジアムツアーのオープニングアクトを務める(計9公演)。欧州と比べ認知度が低いアメリカでは、かつてキュアーやレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのツアーに帯同したことがあった。ラディカルな新作は、アメリカ人にどう受け止められるのだろうか。

 ついでに、ボノ(U2)に注文。オバマ大統領の医療&保険改革が暗礁に乗り上げ、詐欺商法から消費者を守る法案も独裁者の意を受けた<メディア=代理店=政治家>の策謀で否決される可能性大だ。就任記念コンサートに出演したロッカーには責任がある。スタジアムを埋めた数万聴衆に、オバマ支持を熱く訴えてほしい。

 さて、本題。「ザ・レジスタンス」は期待を上回る感動的な実験作だった。メタリック、クラシカル、21世紀のプログレと評されるように、ミューズは様々な貌を持ち、日本の演歌や民族音楽に通底するリリシズムも内包している。混沌は魅力だが、糸が切れると雑多なピースの寄せ集めになる危険もはらんでいる。

 危惧したのはサウンド面だけではない。メジャーレーベルに移った前作「ブラックホールズ&レヴァレーションズ」収録曲の歌詞は、〝21世紀のプロテストソング〟というべき「ナイツ・オブ・サイドニア」を筆頭に極めてラディカルだ。メジャーからアルバムを出しながら、レイジ支持を公言する矛盾を許すほど資本主義は甘くないはずだが、マシュー・ベラミーは俺の危惧を嘲うかのように、スルリと身をかわし、飛躍を遂げた。

 本作は村上春樹の「1Q84」と同様、ジョ-ジ・オーウェルの「1984」に触発されたロックオペラであり、原作をハイパー資本主義下における抑圧に置き換え、タイトルが示すように抵抗を高らかに謳っている。初めて見た時(9年前)、自己顕示欲の強いナルシストのガキに見えたマシューだが、今では政治や社会に対する認識を共有する〝同志〟といえる。

 マリリン・マンソンを彷彿させる♯1「アップライジング」、80年代の哀愁エレポップを思い起こす♯3「アンディスクローズ・デザイアーズ」、バラードからクイーン風に転じショパンで締める♯4「ユナイテッド・ステイツ・オブ・ユーラシア」……。初めて聴いた時、散漫な印象を受けたが、聴き込んでいくうち本作の性格に気付いていく。

 「ザ・レジスタンス」はサントラなのだ。マシューの頭の中には、抵抗を試み弾圧される男女の宿命を描くシナリオが出来上がっていて、2人の心情を表すシーンを想定して曲を付けたのだろう。俺がとりわけ気に入ったのは、ライブ映えしそうな硬質なロックンロール、♯2「レジスタンス」と♯7「MKウルトラ」だ。物語は悲劇で終わるが、「エクソジェネシス」1~3部と題された静謐なラストに希望が込められている。

 シルバーウイークと名付けられた大型連休が始まる。俺が勧める最高の過ごし方は、「ザ・レジスタンス」を聴きながら、前稿で記した「ドーン」を読むこと。分野と国籍は違うが、平野啓一郎とマシュー・ベラミーは同じ地平に立つ同世代のモンスターだ。脳の中で両者が交感し、あなたの中でケミストリーが生じるかもしれない。  

 別稿にも記したが、ミューズの楽曲はライブで完成する。来日公演も噂されているが、チケットが入手できれば最高齢のファンとして会場に足を運び、〝現役NO・1のライブバンド〟の進化を確認したい。




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文学の新たな夜明け~心ときめく「ドーン」の世界

2009-09-15 00:26:18 | 読書
 通常のインフルエンザで3万人以上が死ぬ国は? 食品汚染による死者公表が法律で制限されている国は? 医療費を払えない患者が路上に捨てられる国は?

 悲惨な現実を直視したオバマ大統領が掲げた医療&保険制度改革は、<メディア=代理店=共和党>に操られた国民の反対で暗礁に乗り上げている。彼らの背後に控えるのは金王朝同様、ほんの一握りの独裁者だ。

 さて、本題。今稿は平野啓一郎の「ドーン」(講談社)、次稿はミューズの「レジスタンス」と、分野は異なれどモンスターたちの最新作について触れる。ブロガー冥利に尽きるとはこのことだ。

 仕事先の本のバザーで、平野の前作「決壊」を手に取った。精緻な筆致は〝三島の再来〟の看板に偽りなく、感嘆を込めて書評を記した(09年4月23日)。多産な筆者の新作「ドーン」は2030年代のアメリカを舞台したSFだ。小松左京の傑作群に見劣らない作品の概要を以下に記したい。

 主人公の明日人は東京大震災で息子の太陽を亡くした後、妻今日子とアメリカに渡る。NASAで訓練を受け、医師として火星への有人飛行を経験する。飛行船「DAWN」での出来事、アメリカが単独で介入する東アフリカ戦線、大統領選挙をシンクロさせながら、一本の線に収斂させていく。

 豊かなアイデア、壮大な構想力、ちりばめられたユーモアと教養に驚嘆するしかない。〝三島の再来〟ながらナショナリズムと無縁で、アメリカの未来を俯瞰の目で見据え、リベラルに軸足を置きながら2人の大統領候補のメッセージを対照的に描いている。

 「デジャヴ」(06年)をご覧になった方はイメージしやすいが、本作では<散影>がストーリーの前提になっている。街角での映像を検索でき、個人の行動も容易にキャッチできるシステムで、時に政治的陰謀に利用される。<散影>によってプライバシーの観念は大きく変わり、検索から逃れるため可塑整形が流行する。

 インターネットを基盤にした無領土国家<プラネット>が、テロ国家アメリカと対峙するという想定も興味深い。ウィキペディアと因縁浅からぬ筆者は、書き込み自由な小説サイト<ウィキノヴェル>を世論決定の新たなツールとして描いている。明日人が宇宙にいる間、妻の今日子の孤独を慰めたのは亡き息子の<AR=添加真実>だった。ARとはDNAを元に作製された意思と力感を持つヴァーチャルリアリティーである。

 読み進めていくうち、本作が前作「決壊」の延長線上に位置することに気付いた。自殺願望に憑かれ夢と現の狭間で喪心する兄崇、弟良介と妻佳枝の危うい絆、兄弟の父が抱える闇、得体の知れぬ崇を畏れる母……。「決壊」では親しい者同士のディスコミュニケートが描かれていたが、「ドーン」では次のステップに進んでいる。<分人>、<ディヴ>という造語が提示され、コミュニケーションを解くキーとして用いられている。

 「決壊」の崇も「ドーン」の明日人も、飛び込み自殺を試みた。崇は目的を果たし、明日人は客たちに救われ、新たな人生の扉を開ける。死に彩られた「決壊」に比べ、「ドーン」はポジティヴな力でラストに突き進んでいく。

 途轍もないスピードで飛翔する平野は、次回作でいかなる変容を遂げるのだろう。ちなみに本作で一番伝えたかったことは帯に大書されている。即ち、<愛はやり直せる>……。



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NFL開幕~気分は今季もアンチ愛国

2009-09-12 06:19:23 | スポーツ
 9・11から8年、国民皆保険を公約に掲げたオバマ大統領が窮地に陥っている。製薬メジャーや保険会社の意を受けた共和党、代理店、メディアの攻勢で支持率が急低下した。背景を理解するための最適の教科書は、別稿(08年11月4日)に記したマイケル・ムーア監督の「シッコ」だ。

 オバマの説く<平等と公正>は国境を超えて熱く伝わったが、資本主義独裁国では否定されるべき理念である。かつて国民皆保険導入の急先鋒だったヒラリーだが、寝返ったご褒美に国務長官の座を得る。ヒラリーの任務はブレーキ役だが、オバマが自らの理想を譲らなかったとき暗殺が現実味を帯びてくる。就任記念コンサートに出演した面々には、勇気を奮って大統領支持を表明してほしい。

 「相変わらず反米だな」とあきれる読者もいるだろうが、俺が憎むのは独裁国の一握りの黒幕で、25~30%のアメリカ人とは感性を共有しているつもりだ。アメリカ産の小説、ロック、映画もブログで紹介しているが、とりわけ関心が強いのはNFLだ。

 スティーラーズが開幕戦でOTの接戦を制し、連覇に向け好スタートを切った。タイタンズに惜しまれるのはイージーなFG2本の失敗で、かつてチームをスーパーボウルに導いたマクネア(享年36)に勝利を捧げられなかった。

 昨季をケガで棒に振ったQBブレイディの復帰により、ペイトリオッツ(愛国者たち)が優勝候補筆頭に浮上した。俺にとって張り合いのあるシーズンになりそうだが、俺がなぜアンチ・ペイトリオッツかといえば、ベリチック・ヘッドコーチが神格化されているからだ。

 人心掌握術、潜在能力を見抜く眼力、構想力と対応力、抜け目なさ……。ベリチックが優れていることは認めざるをえないが、一試合で最低10回、「さすが、ベリチック」と褒めそやす解説者には我慢がならない。ミスが出れば、「ベリチックの意図を選手が理解していない」が決まり文句だ。ベリチックは間違いなくスポーツ史上、最も評価の高いコーチだが、へそ曲がりの俺は無謬論におのずと反発してしまう。

 NFLは戦時国家アメリカの象徴であり、最も資本主義的なスポーツだ。「反米のおまえに見る資格はない」といわれればグウの音も出ないが、面白いから仕方ない。 ハリウッドを代表する脚本家たちが卓を囲んで知恵を絞っても思いつかないストーリーが、一つの試合にちりばめられていたりする。1シーズンの放映権料が4500億円前後といわれても納得がいく。

 強力ディフェンスがスーパー制覇の条件とされるが、俺は〝ハイリスク・ハイリターン、を好む。結果はともあれ、今季もコルツ、チャージャーズ、カーディナルスといった攻撃型のチームを応援するつもりだ。忙しいので週3試合が限度かもしれないが、胸躍るようなチーム、戦術、選手を発見できたら幸いだ。



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「お引越し」~息をのむジャパネスク

2009-09-09 00:57:34 | 映画、ドラマ
 モントリオール映画祭で「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ」の根岸吉太郎監督が監督賞を獲得した。「おくりびと」に続き、ジャパネスクが評価されての受賞という。

 今日9日は、映像美と和のテイストに彩られた傑作群で邦画の質向上に貢献した相米慎二監督の九回忌だ。今回は京都を舞台にした「お引越し」(93年)について記すことにする。

 子供を描けば天下一品の相米監督だが、「お引越し」では少女レンの自然体の演技が肝になっている。レンの個性は「じゃりン子チエ」のチエ、「地下鉄のザジ」のザジを彷彿とさせるが、カンヌ出品作ゆえ、製作サイドが後者を意識したことは想像に難くない。

 レンを演じたのは「相棒~シーズン7」の正月特番に登場し、「新相棒は女性?」と世間を騒がせた田畑智子だ。雨の用い方はいかにも相米作品といった趣で、祇園祭、五山の送り火など京都の風物詩も背景になっている。効果的にインサートされる故郷の風景に、ノスタルジックな気分に浸ってしまった。

 「お引越し」は看板に偽りありで、本作の中身は少女レンのひと夏の成長だ。冒頭で印象的だったのは、崩壊間近の家族を象徴する三角形の食卓だ。父ケンイチ(中井貴一)は翌日家を出て、レンは母ナズナ(桜田淳子)と暮らすことになる。

 レンは両親を愛し、両親もレンを愛している。両親の別居に深く傷ついたレンは、父母の回路を繋ぐため、作戦を練って実行に移す。悲しみと寂しさを制御できないレンは、奇矯な振る舞いで周囲を困らせるようになる。

 俺の心は次第に映画から離れ、家族とは、男女とはという、普遍的な問いに対する答えを探し始めた。セックスレス⇒トークレス⇒家庭内別居⇒仮面夫婦⇒離婚に至るケースもあるが、どこかで修復する夫婦の方が多いのは明らかだ。ケンイチとナズナはなぜ、レンのために自分を捨てられないのだろう。お互い別の交際相手もいない以上、歩み寄りは難しくないはずなのに……。
 
 ラストの20分は圧巻で、レンが彷徨するシーンはジャパネスクの極致としか言いようがない。荒々しい火祭りから無明の闇に転じた山道をレンは独りで歩き、明け方の湖畔で幸せだった家族の思い出と再会する。初潮を連想させるシーンもあり、翌日の電車の中、レンは吹っ切れた様子で母と輪唱していた。

 煮え切らない父役の中井、夫への忌避感を拭えない母役の桜田が、溌剌としたレン役の田畑を引き立てていた。公開前年、統一教会の合同結婚式に参加した桜田は、本作を最後に芸能界から去る。脱会していたら今頃、貴重なおばさん俳優として重宝されていたはずだ。

 作風からノンポリに思える相米監督だが、学生時代は闘士として鳴らしていた。ガンに斃れなければ社会派作品を世に問うたかもしれないし、国際映画祭で栄誉に浴していただろう。機会があれば、俺が最も好きな作品「あ、春」について記したい。

 最後に、前稿で取り上げたシンメイフジが鬼脚で新潟2歳Sを制した。POGのオーナーとしては、無理遣いせず来春のクラシックに向けて歩を進めてくれることを願っている。


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頑張れ! シンメイフジ~POGの季節到来

2009-09-06 02:38:48 | 競馬
 長年のオランダサポーターゆえ、日本との戦いを非国民アイで眺めていた。オレンジ軍団が70分まで精彩を欠いたのは、文化の違いに戸惑ったからかもしれない。サッカーには国民性が顕著に表れる。粘着と勤勉を維持して「鬱陶しいな」と相手に思わせることが、日本サッカー国際化の第一歩だろう。
 
 鳩山論文を反米的と米メディアが恫喝的に報じている。滑稽なのは日本のメディアが深刻ぶって後追いしていることだ。優等生が「生活指導の先生、おまえに目を付けてるぜ」と不良に囁くのと同レベルで、底にあるのは情けない奴隷根性だ。

 ノエル・ギャラガーが弟リアムとの確執でオアシスを脱退したが、悲観する必要はない。バンドにはUKロックの名だたるソングライター、ゲム・アーチャー、アンディ・ベルが控えている。才能を結集すれば、オアシスの名に恥じぬアルバムを15年ぶりに作れるかもしれない。

 ギャラガー兄弟が応援するマンチェスターCは、大規模な補強でビッグ4に迫りつつある。プレミアが群雄割拠の複数政党制なら、リーガはバルセロナとレアル・マドリードが覇を競う2大政党制といえるだろう。今季も試合を絞って、欧州サッカーの粋を楽しむことにする。

 この時季の注目といえば競馬で、関心の中心は2歳戦だ。POG指名馬22頭のうち8頭がデビューし、4頭が勝ち上がった。この週末が最初のヤマ場で、昨日の札幌2歳Sに出走したスペースアークは6着に終わった。同馬は心身ともに緩いところがあり、良化の余地は大きい。

 今日の新潟2歳Sではシンメイフジが前売り1番人気でレースに臨む。同馬を駆るのは、昨年の指名馬セイウンワンダーを不良馬場でVに導いた岩田である。セイウンは15巡、シンメイは16巡という下位指名で、〝馬主〟にとって孝行息子、娘たちだ。

 2歳から3歳春までのレースはクラシックに向けての勝ち抜き戦で、一戦ごとに馬たちの評価が変わる。札幌2歳Sのレース前まで2強を形成していたダノンパッション、ロードシップがそれぞれ4、9着に敗れたことで、現在のダービー候補NO・1はリルダヴァルだ。野路菊S(20日)で同馬に挑むのが18巡指名馬エイシンアポロンだ。この馬も俺にとって、〝残り物に福〟である。

 相馬眼を誇る調教師のアドバイスで良血馬を高額で購入しながら、期待を裏切られる馬主も多い。POGも同様で、雑誌やネット上で評判になった馬をピックアップしても、空振りに終わるケースが少なくない。フィジカルな仕上げだけでなく、サラブレッドにつきものの気性難の克服がスタッフにとって大仕事になる。馬の性格まではサークル外の人間にわからない。

 デビューが遅れそうだったり、ケガ情報が流れたりと不安を覚えるPOG指名馬も多いが、まずは今日のシンメイフジで景気付けといきたい。馬券は買っても少額になるだろう。この春以降、馬券をパスする週が増えた。理由はいずれ記すことにする。




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肩凝り、選挙、みかんゼリー~友が消えた夏の終わりに

2009-09-03 00:18:15 | 戯れ言
 今回の総選挙の肝の一つは、共産党と社民党が現有議席を維持したことだ。貧困と格差が拡大すれば、平等と公平を謳う政党が支持されるのは当然で、民主党にも欧州型社民主義を志向する議員は多い。

 輸出頼みの産業構造、農業破壊、危機に瀕した医療と年金、地方の疲弊、1人当たりGDPの著しい低下……。自民党政治の負の遺産を抱えた新政権には、「反面教師委員会」を立ち上げてほしい。参加メンバーは、小泉=竹中コンビをはじめ経済政策を牽引した政官財トップだ。失敗の原因を知らずして再生は望めないと思う。

 などと偉そうに書いたが、俺など日本経済に貢献ゼロの穀潰しだ。それでも今夏はハ-ドな日々が続いた。普段から効率的に作業を進める仕事先で休暇を交代で取るため、個々の負担はおのずと増えるからだ。

 <表の仕事>だけでなく、俺にはノーギャラの<裏の稼業=ブログ>がある。客足が遠のく〝ニッパチ〟ゆえ更新をさぼるつもりでいたが、なぜか訪問者数(IP)が右肩上がりになる。ヘロヘロになりつつ義務感で中2日ペースをキープしたせいか、肩凝りがひどくなり、先週から整骨院通いだ。

 ブロガーは誰しも読者を増やしたい。4年前の郵政選挙時を思い出し、IP数の高止まりを期待して8月後半、政治ネタを中心に据えたら、数字はたちまち急降下……。計算通りにいかないものだ。街は奇妙に静かだったが、ブログ界も選挙に冷ややかだったのではないか。

 凝ったのは肩だけでない。カルピスソーダはマイブーム継続中だが、この夏、「大満足みかん」を発見した。類似品があるのでたらみ製と思っていたが、メーカーはマルハニチロ食品である。3個食べた日もあり、徒歩2分のセブン-イレブンでは俺のせいで品薄になっている。

 夏の友といえばゴキブリだったが、今年は6月以降、生きた姿を見なかった。罠タイプの駆除剤(円形の小さなやつ)を部屋中にセットするや、効果てきめん。死骸を幾つか処理した後、ご無沙汰になる。新型の威力に感嘆したが、ガサガサが消えると寂しさを拭えない。ゴキブリは3億年も生き抜いた地球の主である。「薬に負けるな!」とゲキを飛ばしたい。

 読書の夏にするはずが、本は格好の睡眠導入薬になってしまう。積読本ばかり増え、感想をブログに書けないのがもどかしい。俺にとって心身の〝覚醒剤〟になりそうなのは、NFL開幕とミューズの「レジスタンス」だ。

 とりわけミューズの新作は、「ロッキンオン」が3号続けて特集を組み、大絶賛している。<クラシックをベースにしたスペースミュージック>、<愛と革命をテーマに掲げたラディカルでロマンチックなロックオペラ>という。「ほんまかいな」と疑いつつ、発売日(16日)を待ち侘びている。



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