聖火リレーが朝鮮半島を縦断した。ソウル市街を五星紅旗が埋め尽くしたが、北京で数千本の他国旗が掲げられたら、中国当局はどのような対応を見せるだろう。38度線を越えるや喧騒は一転、粛々とした葬列と化す。対照的な表情に分断国家の痛みを感じた。
NHK教育は先日(27日)、ETV特集枠で「悲劇の島チェジュ(済州)~『4・3事件』在日コリアンの記憶」を放映した。3人の在日コリアンの目を通して4・3事件に迫るドキュメンタリーである。
「パッチギ」をプロデュースした李鳳宇氏(シネカノン代表)は猪飼野(現大阪市生野区)から済州島へと、自らのルーツを辿る。夫亡き後も都内で弁当店を営む金東日さんは、民主愛国青年同盟の一員として4・3事件に関わった。日本入国後も拷問による心の傷は癒えなかったという。金石範氏は半世紀にわたり、4・3事件をモチーフにした小説を世に問うてきた。「歴史は抹殺しても記憶は抹殺できない」という氏の言葉が、心に深く突き刺さった。
4・3事件の背景と経緯を簡潔に記したい。
1945年8月15日は、朝鮮人にとって米ソによる分断の始まりだった。日本では解放軍の顔を覗かせた米軍だが、南朝鮮(38度線以南)では圧制者だった。民主勢力が結集した朝鮮人民共和国を承認せず、過酷な物資供出を求めた。南北統一選挙を求める勢力は、米軍支配下の警察、旧日本軍属、北朝鮮からの越境者により、徹底的に弾圧された。
自由と平等への希求が最も強かった済州島で48年4月3日、武装蜂起が起きた。朝鮮労働党と連携したこともあり、9年後に鎮圧されるまで7万人が虐殺された。済州島出身者はその後も諜報部にマークされ、就職などで厳しい差別を受け続ける。80年以降、状況は少しずつ改善され、盧武鉉前大統領が03年、国家権力による人権蹂躙を公式に謝罪した。蜂起60周年に当たる今年4月3日、金東日さんは政府主催の式典に招待され、親族と涙の再会を果たす。
李氏がプロデュースした「月はどっちに出ている」の原作者、梁石日氏も済州島に縁が深い。「Z」は日韓現代史の闇を穿つエキサイティングな小説だった。
主人公の朴敬徳(作家)は訪韓した際、済州島で衝撃的な事実に直面する。自らが戸籍上、死者になっていたのだ。朴の親族に関わるミステリーと<朝鮮戦争時の日本人戦死者リスト>をめぐる国家的策謀が交錯し、殺人事件が相次いだ。米軍の意を受け左派を虐殺した旧日本軍属のZと、彼を追う秘密組織との暗闘が浮き彫りになり、物語は意外な結末を迎える。
人ごとのようにあれこれ記したが、朝鮮の悲劇が日本の植民地支配に起因することを肝に銘じなければならない。この間の中国の若者たちの滑稽な振る舞いを他山の石に、日本人も排外主義的ナショナリズムを克服すべきだ。客観的に歴史を学ぶことが前提になると思う。
NHK教育は先日(27日)、ETV特集枠で「悲劇の島チェジュ(済州)~『4・3事件』在日コリアンの記憶」を放映した。3人の在日コリアンの目を通して4・3事件に迫るドキュメンタリーである。
「パッチギ」をプロデュースした李鳳宇氏(シネカノン代表)は猪飼野(現大阪市生野区)から済州島へと、自らのルーツを辿る。夫亡き後も都内で弁当店を営む金東日さんは、民主愛国青年同盟の一員として4・3事件に関わった。日本入国後も拷問による心の傷は癒えなかったという。金石範氏は半世紀にわたり、4・3事件をモチーフにした小説を世に問うてきた。「歴史は抹殺しても記憶は抹殺できない」という氏の言葉が、心に深く突き刺さった。
4・3事件の背景と経緯を簡潔に記したい。
1945年8月15日は、朝鮮人にとって米ソによる分断の始まりだった。日本では解放軍の顔を覗かせた米軍だが、南朝鮮(38度線以南)では圧制者だった。民主勢力が結集した朝鮮人民共和国を承認せず、過酷な物資供出を求めた。南北統一選挙を求める勢力は、米軍支配下の警察、旧日本軍属、北朝鮮からの越境者により、徹底的に弾圧された。
自由と平等への希求が最も強かった済州島で48年4月3日、武装蜂起が起きた。朝鮮労働党と連携したこともあり、9年後に鎮圧されるまで7万人が虐殺された。済州島出身者はその後も諜報部にマークされ、就職などで厳しい差別を受け続ける。80年以降、状況は少しずつ改善され、盧武鉉前大統領が03年、国家権力による人権蹂躙を公式に謝罪した。蜂起60周年に当たる今年4月3日、金東日さんは政府主催の式典に招待され、親族と涙の再会を果たす。
李氏がプロデュースした「月はどっちに出ている」の原作者、梁石日氏も済州島に縁が深い。「Z」は日韓現代史の闇を穿つエキサイティングな小説だった。
主人公の朴敬徳(作家)は訪韓した際、済州島で衝撃的な事実に直面する。自らが戸籍上、死者になっていたのだ。朴の親族に関わるミステリーと<朝鮮戦争時の日本人戦死者リスト>をめぐる国家的策謀が交錯し、殺人事件が相次いだ。米軍の意を受け左派を虐殺した旧日本軍属のZと、彼を追う秘密組織との暗闘が浮き彫りになり、物語は意外な結末を迎える。
人ごとのようにあれこれ記したが、朝鮮の悲劇が日本の植民地支配に起因することを肝に銘じなければならない。この間の中国の若者たちの滑稽な振る舞いを他山の石に、日本人も排外主義的ナショナリズムを克服すべきだ。客観的に歴史を学ぶことが前提になると思う。