政治の言葉は酷く、稚拙で、常に空虚だ。体現しているのは安倍首相だが、反安倍側も同じ陥穽にはまっているケースが多い。十進法の回りくどい思考に浸る俺は辟易しているが、単純化、図式化が求められる政治で二進法が好まれるのは当然の帰結だ。
安倍昭恵さんについて書こうと思った矢先、森友問題をベースに本質を突いた論考に触れた。知人の高坂勝さんがブログ(「たまにはTSUKIでも眺めましょ」)にアップした「負うべき責任/負わされる責任」(24日更新)である(http://ameblo.jp/smile-moonset/entry-12259254103.html)。ぜひ検索して読んでほしい。経営するバーに何度も足を運んだ昭恵さんと谷さんへの思いが込められた一文は、既にネットメディアで紹介され、共感を呼んでいる。
3・11から6年……。貴い犠牲を糧に、日本は再生に向けてスタートを切ると確信したが、現実は真逆だった。政官財の利権の構造そのものの東京五輪――築地市場の豊洲移転とも分ち難くリンク――が優先され、復興は後回しになった。良心や矜持の欠片もない安倍政権は原発再稼働と輸出に邁進している。無力な自分が悲しくなるが、東北をテーマに据えたドラマと映画、トークイベントについて記したい。
まずは「絆~走れ奇跡の子馬」(NHK総合、前後編)から。3・11当日、南相馬で生まれた一頭の子馬と家族の物語である。牧場主の雅之(役所広司)は「相馬野馬追」に背を向け、競走馬育成に心血を注いでいる。周囲には和を乱す変人と疎んじられていた。母馬の出産に携わった長男の拓馬(岡田将生)は、津波で崩壊した厩舎で死ぬ。拓馬が命名していたリヤンドノールは、家族にとって彼の生まれ変わりだった。
「リヤンをGⅠ馬に」という父と兄の夢を叶えるため、将子(新垣結衣)も故郷に帰ってきた。元騎手で兄妹の幼馴染みの夏雄(勝地涼)も協力を惜しまないが、母佳世子(田中裕子)は現実離れした夢に距離を置いていた。リヤンの未来に影を差したのは放射能で、北海道の育成牧場に預託を断られる。
雅之と夏雄の挫折が後編で明らかになる。孤軍奮闘で育成牧場を造成する雅之に、「恩讐の彼方に」(菊池寛)の了海が重なった。夏雄、そして亡き拓馬を含む家族の絆は紡がれていくが、競馬ファンには荒唐無稽と思える設定が多々あった。その辺りに目を瞑れば感動的なドラマといっていい。
先週末、第15回ソシアルシネマクラブすぎなみ上映会「LIGHT UP NIPPON~日本を照らした奇跡の花火」(2012年、柿本ケンサク監督)に足を運んだ。場所は高円寺グレインで、終映後は満田夏花さん(FoE Japan)と参加者を交えたトークイベントが開催された。まずは、映画の感想を。
東日本大震災直後、一人の青年が立ち上がった。映画ではプロフィルは紹介されていなかったが、高田佳岳さんは〝普通の人〟ではない。二つの大学で学んだ後、大手広告代理店に入社した敏腕営業マンである。人脈をフル稼働させ、<複数の場所での花火同時打ち上げで被災地を明るくする>というプランを5月後(8月11日)に現実にした。昨年まで開催され、10カ所以上で花火を打ち上げている。
高田さんたちは「今は花火どころではない」という声を説得していく。上の世代と交流していくうち、花火のコンセプトが<祭り>から<鎮魂>に変わったのが興味深かった。若い世代の情熱とチームワークは頼もしかったが、俺が違和感を覚えた。一昨年秋に被災地を巡った際に感じたことと乖離していたからである。
映画でも紹介された釜石大観音だが、訪れた時は閑散ぶりとしていた。三陸鉄道とBRTを乗り継いで南三陸に向かう途中、窓の外の光景に愕然とする。気仙沼ではタクシー運転手が、放置された傷痕を説明してくれた。「LIGHT UP NIPPON」は希望と可能性に溢れていたが、公開後3年を経た時点の東北は復興と程遠く、今も人口減少に歯止めが利いていない。
満田さんのトークの肝になったのは、小池百合子東京都知事の原発事故の区域外自主避難者への対応だ。支援期間延長を決めた自治体は多いが、東京では本日(3月31日)、打ち切られる。避難者宅を訪れた都職員は開いたドアに足を挟み、暴対法以前のヤクザの如き恫喝を繰り返す。誓願をはねのけて定時制高校の廃止を決めるなど、<都民ファースト>と裏腹の知事の冷酷さの反映といえる。人権犯罪に対し、FoE Japanは他の団体とともに都に抗議した。
前々稿でアレクシエービッチの案内人を務めた斎藤貢さんの詩を紹介した。<ひとよ。虚飾の舌で 優しく、希望を歌うな。偽りの声で、声高に、愛を叫ぶな>と結ばれていたが、福島で若い世代の体内被曝の実態調査、避難地域20㍉シーベルト撤回訴訟などに取り組む。満田さんの言葉に希望と愛を感じた。そこに真の絆が息づいている。
安倍昭恵さんについて書こうと思った矢先、森友問題をベースに本質を突いた論考に触れた。知人の高坂勝さんがブログ(「たまにはTSUKIでも眺めましょ」)にアップした「負うべき責任/負わされる責任」(24日更新)である(http://ameblo.jp/smile-moonset/entry-12259254103.html)。ぜひ検索して読んでほしい。経営するバーに何度も足を運んだ昭恵さんと谷さんへの思いが込められた一文は、既にネットメディアで紹介され、共感を呼んでいる。
3・11から6年……。貴い犠牲を糧に、日本は再生に向けてスタートを切ると確信したが、現実は真逆だった。政官財の利権の構造そのものの東京五輪――築地市場の豊洲移転とも分ち難くリンク――が優先され、復興は後回しになった。良心や矜持の欠片もない安倍政権は原発再稼働と輸出に邁進している。無力な自分が悲しくなるが、東北をテーマに据えたドラマと映画、トークイベントについて記したい。
まずは「絆~走れ奇跡の子馬」(NHK総合、前後編)から。3・11当日、南相馬で生まれた一頭の子馬と家族の物語である。牧場主の雅之(役所広司)は「相馬野馬追」に背を向け、競走馬育成に心血を注いでいる。周囲には和を乱す変人と疎んじられていた。母馬の出産に携わった長男の拓馬(岡田将生)は、津波で崩壊した厩舎で死ぬ。拓馬が命名していたリヤンドノールは、家族にとって彼の生まれ変わりだった。
「リヤンをGⅠ馬に」という父と兄の夢を叶えるため、将子(新垣結衣)も故郷に帰ってきた。元騎手で兄妹の幼馴染みの夏雄(勝地涼)も協力を惜しまないが、母佳世子(田中裕子)は現実離れした夢に距離を置いていた。リヤンの未来に影を差したのは放射能で、北海道の育成牧場に預託を断られる。
雅之と夏雄の挫折が後編で明らかになる。孤軍奮闘で育成牧場を造成する雅之に、「恩讐の彼方に」(菊池寛)の了海が重なった。夏雄、そして亡き拓馬を含む家族の絆は紡がれていくが、競馬ファンには荒唐無稽と思える設定が多々あった。その辺りに目を瞑れば感動的なドラマといっていい。
先週末、第15回ソシアルシネマクラブすぎなみ上映会「LIGHT UP NIPPON~日本を照らした奇跡の花火」(2012年、柿本ケンサク監督)に足を運んだ。場所は高円寺グレインで、終映後は満田夏花さん(FoE Japan)と参加者を交えたトークイベントが開催された。まずは、映画の感想を。
東日本大震災直後、一人の青年が立ち上がった。映画ではプロフィルは紹介されていなかったが、高田佳岳さんは〝普通の人〟ではない。二つの大学で学んだ後、大手広告代理店に入社した敏腕営業マンである。人脈をフル稼働させ、<複数の場所での花火同時打ち上げで被災地を明るくする>というプランを5月後(8月11日)に現実にした。昨年まで開催され、10カ所以上で花火を打ち上げている。
高田さんたちは「今は花火どころではない」という声を説得していく。上の世代と交流していくうち、花火のコンセプトが<祭り>から<鎮魂>に変わったのが興味深かった。若い世代の情熱とチームワークは頼もしかったが、俺が違和感を覚えた。一昨年秋に被災地を巡った際に感じたことと乖離していたからである。
映画でも紹介された釜石大観音だが、訪れた時は閑散ぶりとしていた。三陸鉄道とBRTを乗り継いで南三陸に向かう途中、窓の外の光景に愕然とする。気仙沼ではタクシー運転手が、放置された傷痕を説明してくれた。「LIGHT UP NIPPON」は希望と可能性に溢れていたが、公開後3年を経た時点の東北は復興と程遠く、今も人口減少に歯止めが利いていない。
満田さんのトークの肝になったのは、小池百合子東京都知事の原発事故の区域外自主避難者への対応だ。支援期間延長を決めた自治体は多いが、東京では本日(3月31日)、打ち切られる。避難者宅を訪れた都職員は開いたドアに足を挟み、暴対法以前のヤクザの如き恫喝を繰り返す。誓願をはねのけて定時制高校の廃止を決めるなど、<都民ファースト>と裏腹の知事の冷酷さの反映といえる。人権犯罪に対し、FoE Japanは他の団体とともに都に抗議した。
前々稿でアレクシエービッチの案内人を務めた斎藤貢さんの詩を紹介した。<ひとよ。虚飾の舌で 優しく、希望を歌うな。偽りの声で、声高に、愛を叫ぶな>と結ばれていたが、福島で若い世代の体内被曝の実態調査、避難地域20㍉シーベルト撤回訴訟などに取り組む。満田さんの言葉に希望と愛を感じた。そこに真の絆が息づいている。