先週末は「よってたかって新春らくご18」(昼の部、よみうりホール)に足を運んだ。超満員の盛況で、春風亭一之輔「千早ふる」→立川談笑「片棒・改め」春風亭百栄「キッス研究会」→柳家喬太郞「文七元結」の順で高座は進む。一之輔の弾けっぷりとテンポ、百栄の脱力感、枕なしの気合で挑んだ喬太郞と聞き応え十分だったが、今回のハイライトは談笑だった。
立川流とは志らく以外、縁がないので、談笑を見るのは初めてだった。「片棒」は吝嗇がテーマだが、枕だけでなく師匠の談志が繰り返し登場する。談志の財テクと吝嗇は落語界では有名らしい。三遊亭圓生も同様で、気難しさを含めて柳家小三治が枕にしていたのを聞いたことがある。〝権威へのくすぐり〟は健全さの証左だ。
「花筐/HANAGATAMI」(2017年、大林宣彦監督)を有楽町スバル座で観賞した。ブログでこの間、記してきたように体調不調だった。映像美と監督の意図が織り込まれた長尺(3時間弱)の作品に、俺の心身は堪えられるだろうか……。そんな不安が消えて25日に見る。
本作を理解できたか自信はない。最大の理由は、大林が〝彼方の巨匠〟であること。大林を映画館で見るのは3作目で、ビデオ、DVD、TVを合わせても2桁にいっていない。クランクイン直前、がんを宣告された大林は、本作を遺作と位置付けている。原作は檀一雄で、太平洋戦争開戦前夜の若者たちを描いた青春群像劇である。
デビュー作として企画した「花筐」を40年後の今、なぜ撮るのか……。昨秋、ETV特集で放映された「青春は戦争の消耗品ではない~映画監督 大林宣彦の遺言」に監督の危機感が明かされていた。<敗戦(軍国)少年が戦争を描くことが過去、未来に対する責務>と肝に銘じ、戦争出来る国になった日本の現状に疑義を呈している。座視してきたという悔恨を隠さず、<現在の空気に怯えた方がいい>と繰り返し語っていた。
仕事先の夕刊紙記者によると、映画の現場は厳しい状況に直面している。安倍政権を忖度し、政治性を前面に出す作品に出演することに消極的な俳優が少なくないという。「花筐」が逆風の中で公開されたことは想像に難くない。東京での封切りは終了し、これから全国を回る。興趣を削がぬよう感想を簡単に記すことにする。
舞台は旧制高校で、唐津の行事がストーリーに大きな役割を果たしている。俊彦(窪塚俊介)、鵜飼(満島真之介)、吉良(長塚圭史)、阿蘇(柄本時生)の4人が10代後半の青年を演じている。窪塚は撮影時35歳、満島と柄本は27歳、長塚に至っては40歳……。実年齢と役柄のギャップは大きいが、監督の意図を理解し、表現するにはキャリアを積んだ俳優たちが必要だったのだろう。
俊介は若者の天真爛漫さ、鵜飼は一本気、吉良は哲学や思想を語る知性、阿蘇は道化を演じる小心な若者をそれぞれ演じている。バンカラな硬派の集まりは、美那(矢作穂香)、あきね(山崎紘菜)、千歳(門脇麦)らとの交流で空気が変わってくる。魅力的だったのは美那の義姉圭子を演じた常盤貴子だ。ちなみに常盤は、長塚の妻である。
シュールかつ煌びやかな作品世界は、絢爛たる万華鏡に迷い込んだ如くだ。映像、照明、音楽と、一つ一つのシーンに贅が尽くされている。そこに「青春は戦争の消耗品ではない」といった台詞がちりばめられていたが、全体として感じたのは壮大なレクイエムであることだ。厭戦や抵抗だけでなく、がんと闘う監督自身、そして日本人が普遍的に抱く死生観が織り込まれていた。
表現者はそれぞれの手段で社会に訴える。大林はいずれ遠い過去になってしまう今、崇高な意志を示した。消化し切れていないが、映像の断片、俳優たちの表情、台詞の切れ端を記憶の中で拾い集め、再構成していきたい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyo_please.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/cat_2.gif)
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立川流とは志らく以外、縁がないので、談笑を見るのは初めてだった。「片棒」は吝嗇がテーマだが、枕だけでなく師匠の談志が繰り返し登場する。談志の財テクと吝嗇は落語界では有名らしい。三遊亭圓生も同様で、気難しさを含めて柳家小三治が枕にしていたのを聞いたことがある。〝権威へのくすぐり〟は健全さの証左だ。
「花筐/HANAGATAMI」(2017年、大林宣彦監督)を有楽町スバル座で観賞した。ブログでこの間、記してきたように体調不調だった。映像美と監督の意図が織り込まれた長尺(3時間弱)の作品に、俺の心身は堪えられるだろうか……。そんな不安が消えて25日に見る。
本作を理解できたか自信はない。最大の理由は、大林が〝彼方の巨匠〟であること。大林を映画館で見るのは3作目で、ビデオ、DVD、TVを合わせても2桁にいっていない。クランクイン直前、がんを宣告された大林は、本作を遺作と位置付けている。原作は檀一雄で、太平洋戦争開戦前夜の若者たちを描いた青春群像劇である。
デビュー作として企画した「花筐」を40年後の今、なぜ撮るのか……。昨秋、ETV特集で放映された「青春は戦争の消耗品ではない~映画監督 大林宣彦の遺言」に監督の危機感が明かされていた。<敗戦(軍国)少年が戦争を描くことが過去、未来に対する責務>と肝に銘じ、戦争出来る国になった日本の現状に疑義を呈している。座視してきたという悔恨を隠さず、<現在の空気に怯えた方がいい>と繰り返し語っていた。
仕事先の夕刊紙記者によると、映画の現場は厳しい状況に直面している。安倍政権を忖度し、政治性を前面に出す作品に出演することに消極的な俳優が少なくないという。「花筐」が逆風の中で公開されたことは想像に難くない。東京での封切りは終了し、これから全国を回る。興趣を削がぬよう感想を簡単に記すことにする。
舞台は旧制高校で、唐津の行事がストーリーに大きな役割を果たしている。俊彦(窪塚俊介)、鵜飼(満島真之介)、吉良(長塚圭史)、阿蘇(柄本時生)の4人が10代後半の青年を演じている。窪塚は撮影時35歳、満島と柄本は27歳、長塚に至っては40歳……。実年齢と役柄のギャップは大きいが、監督の意図を理解し、表現するにはキャリアを積んだ俳優たちが必要だったのだろう。
俊介は若者の天真爛漫さ、鵜飼は一本気、吉良は哲学や思想を語る知性、阿蘇は道化を演じる小心な若者をそれぞれ演じている。バンカラな硬派の集まりは、美那(矢作穂香)、あきね(山崎紘菜)、千歳(門脇麦)らとの交流で空気が変わってくる。魅力的だったのは美那の義姉圭子を演じた常盤貴子だ。ちなみに常盤は、長塚の妻である。
シュールかつ煌びやかな作品世界は、絢爛たる万華鏡に迷い込んだ如くだ。映像、照明、音楽と、一つ一つのシーンに贅が尽くされている。そこに「青春は戦争の消耗品ではない」といった台詞がちりばめられていたが、全体として感じたのは壮大なレクイエムであることだ。厭戦や抵抗だけでなく、がんと闘う監督自身、そして日本人が普遍的に抱く死生観が織り込まれていた。
表現者はそれぞれの手段で社会に訴える。大林はいずれ遠い過去になってしまう今、崇高な意志を示した。消化し切れていないが、映像の断片、俳優たちの表情、台詞の切れ端を記憶の中で拾い集め、再構成していきたい。
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