<溺れる犬は叩く>と<大衆への媚び>を金科玉条に蠢くメディアだが、〝らりピー〟こと酒井法子は賞味期限が切れつつある。新たな〝飯の種〟に浮上したのは、知人が次々に亡くなった女性結婚詐欺師(34)か。
謎めいた笑みとささやかな癒やしだけで篭絡されそうな俺だが、幸いなことに、いや不幸にして肉食系女子のターゲットにはなりえない。貪り食う餌(財産)がないからだ。不審な死を遂げた男性(41)は自身のブログで、結婚の報告をしていたという。貶められた愛が哀しい。
京都の夜はカズオ・イシグロの「夜想曲集」と過ごした。副題に「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」とあるように、音楽をテーマに出会いと別れを淡々と描いた珠玉の短編集だ。
長崎生まれで5歳時に渡英したイシグロは、数々の文学賞に輝くなど英語圏を代表する作家だが、俺の中では〝日本文学の旗手〟だ。「わたしを離さないで」(07年3月8日)、「わたしたちが孤児だったころ」(07年9月)26日)と当ブログで2度取り上げたが、その中で以下のように記している。
<「もののあわれ」、「滅びの美学」、「自己犠牲」、「予定調和」、「矜持」、「恥の意識」といった日本で死語になった価値が、イシグロの作品に息づいている>、<映画に例えるなら小津安二郎で、読み進むにつれ懐かしい湿感が心に染み込んでくる>……。
映画「重力ピエロ」では、<人間の行動を決めるのはDNAか環境か>がテーマの一つだったが、イシグロ作品に色濃いのは日本人のDNAだ。
「夜想曲集」に収録された作品を簡潔に紹介したい。疲れた心身に染み込む乳酸菌のような優しい読後感を覚える掌編たちだ。
ベネチアを舞台にした「老歌手」は、復活を期す往年の大スターと楽団を掛け持ちする東欧出身のギタリスト(語り手)の触れ合いを描いている。愛し合いながら別れを決意した夫婦の心情に、語り手の生い立ちが重ねられている。
「降っても晴れても」は、国外で英語教師を務めるレイがロンドンで友人夫婦と過ごす日々を描いている。定住者とボヘミアンの対比が面白く、セピア色に褪せた青春の日々が同世代の我が身に染みてくる。保養地モールバンが舞台の「モールバンヒルズ」の主人公は歌手志望の青年だ。結婚式やパーティーでの演奏で欧州を回るスイス人夫婦との交流には、希望の価値が込められている。
微笑ましいのは「夜想曲」だ。醜男ゆえ芽が出ないサックス奏者のスティーブと「老歌手」で登場したトニーの妻リンディが、整形手術のため缶詰めになったハリウッドのホテルでコミカルな騒動を繰り広げる。「チェリスト」ではアドリア海沿いの街を背景に、気鋭のチェロ奏者と年上の女性が、生徒と教師として過ごす日々が綴られる。ラストに暗示された夢の終わりが痛く胸に迫った。
昨日、新宿西口駅構内で、青年がバンジョーを弾いていた。「オー・シャンゼリゼ」演奏後、平均年齢の高い数人の聴衆からパラパラ拍手が送られる。一つの曲、一人のアーティストにはそれぞれのドラマがあるはずだ。くたびれたザ・フーのTシャツを着ていた青年にも、音楽をめぐる物語が幾つもあるに違いない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyo_uru.gif)
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謎めいた笑みとささやかな癒やしだけで篭絡されそうな俺だが、幸いなことに、いや不幸にして肉食系女子のターゲットにはなりえない。貪り食う餌(財産)がないからだ。不審な死を遂げた男性(41)は自身のブログで、結婚の報告をしていたという。貶められた愛が哀しい。
京都の夜はカズオ・イシグロの「夜想曲集」と過ごした。副題に「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」とあるように、音楽をテーマに出会いと別れを淡々と描いた珠玉の短編集だ。
長崎生まれで5歳時に渡英したイシグロは、数々の文学賞に輝くなど英語圏を代表する作家だが、俺の中では〝日本文学の旗手〟だ。「わたしを離さないで」(07年3月8日)、「わたしたちが孤児だったころ」(07年9月)26日)と当ブログで2度取り上げたが、その中で以下のように記している。
<「もののあわれ」、「滅びの美学」、「自己犠牲」、「予定調和」、「矜持」、「恥の意識」といった日本で死語になった価値が、イシグロの作品に息づいている>、<映画に例えるなら小津安二郎で、読み進むにつれ懐かしい湿感が心に染み込んでくる>……。
映画「重力ピエロ」では、<人間の行動を決めるのはDNAか環境か>がテーマの一つだったが、イシグロ作品に色濃いのは日本人のDNAだ。
「夜想曲集」に収録された作品を簡潔に紹介したい。疲れた心身に染み込む乳酸菌のような優しい読後感を覚える掌編たちだ。
ベネチアを舞台にした「老歌手」は、復活を期す往年の大スターと楽団を掛け持ちする東欧出身のギタリスト(語り手)の触れ合いを描いている。愛し合いながら別れを決意した夫婦の心情に、語り手の生い立ちが重ねられている。
「降っても晴れても」は、国外で英語教師を務めるレイがロンドンで友人夫婦と過ごす日々を描いている。定住者とボヘミアンの対比が面白く、セピア色に褪せた青春の日々が同世代の我が身に染みてくる。保養地モールバンが舞台の「モールバンヒルズ」の主人公は歌手志望の青年だ。結婚式やパーティーでの演奏で欧州を回るスイス人夫婦との交流には、希望の価値が込められている。
微笑ましいのは「夜想曲」だ。醜男ゆえ芽が出ないサックス奏者のスティーブと「老歌手」で登場したトニーの妻リンディが、整形手術のため缶詰めになったハリウッドのホテルでコミカルな騒動を繰り広げる。「チェリスト」ではアドリア海沿いの街を背景に、気鋭のチェロ奏者と年上の女性が、生徒と教師として過ごす日々が綴られる。ラストに暗示された夢の終わりが痛く胸に迫った。
昨日、新宿西口駅構内で、青年がバンジョーを弾いていた。「オー・シャンゼリゼ」演奏後、平均年齢の高い数人の聴衆からパラパラ拍手が送られる。一つの曲、一人のアーティストにはそれぞれのドラマがあるはずだ。くたびれたザ・フーのTシャツを着ていた青年にも、音楽をめぐる物語が幾つもあるに違いない。
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