前々稿の冒頭、菊花賞を予想した。名前を挙げた3頭のうち、⑭アスクビクターモア、④ボルドフュージュで1、2着したが、まぐれ当たりだ。天皇賞秋で上位人気が予想される馬たちは、それぞれローテや血統に不安を抱えている。ならば、札幌記念の敗戦で甘く見られそうな③パンサラッサを狙いたい。むろん自信はないし、直線に入ってズルズル後退のシーンが目に浮かぶ。
「三遊亭白鳥 柳家三三 二人会」(北とぴあ)に足を運んだ。「両極端の会」と同じ趣向の別ブランドである。古典を継承し本寸法(正統派)と評される三三が白鳥作の新作を演じ、一方の白鳥が古典を披露するのが〝お約束〟だ。演目は三三が「腹ペコ綺談」、白鳥が「しじみ売り」で、ともにレアな演し物で、巧みの技に聞き入った。敬意と友情が滲む両者のオープニングとエンディングのトークも笑いを誘っていた。
英国の新首相にスナク氏が就任した。若さ、明晰な頭脳、インド系であることに耳目が集まっているが、総資産1200億円の新首相に生活苦に喘ぐ国民の気持ちがわかるのかと危惧する声が上がっている。英国といえば新宿シネマカリテで、ロック界に衝撃を与え、後に政治にもコミットしたアラン・マッギーの生き様を描いた「クリエイション・ストーリーズ」(2021年、ニック・モラン監督)を見た。
製作総指揮を担当したダニー・ボイルだけでなく、本作には「トレインスポッティング」チームが関わっている。ボイルといえば映画界きってのロック通で、「127時間」のハイライトシーンでシガー・ロスの「フェスティバル」を用いており、演出を担当したロンドン五輪の開閉開式もロック色が濃い内容だった。
時代背景が近いのは、同じくシネマカリテで観賞した「C.R.A.Z.Y」だ。同作のザック、「クリエイション――」のアラン・マッギーは、カナダと英国、創作と実在と背景は異なっているが、ともに1960年生まれでデヴィッド・ボウイの影響を受けた。さらに10代の頃から父との確執を抱えていた。本作では青年時代のアランをレオ・フラナガンが、中年以降をユエン・ブレムナーがそれぞれ演じていた。
<僕らは、どんなバンドよりも異常だった>……。これが本作のキャッチコピーで、アランだけでなく、レーベル創設メンバーは奔放な青春を謳歌していた。アランは<反抗>が全てでパンクバンドも結成するが、薬物依存を抱えていた。嵐の時代が終わると、アランはバンド発掘するなど裏方に回る。
俺のように1980年以降、UKロックに浸った者にとって、クリエイションは神々しい響きを放っていた。インディーズレーベルではラフ・トレード、4AD、ミュートも多くのロッカーを輩出したが、最も売れたのがクリエイションで、CD棚にも20組ほどのアーティストの作品が並んでいる。
プライマル・スクリーム、ティーンエイジ・ファンクラブなどがレーベルに貢献したが、〝神格化〟に至ったのはオアシスとの邂逅だ。グラスゴーで母の葬儀に参列したアランは最終電車に乗り遅れ、ロンドンに戻れなかった。仕方なく訪れたクラブにブッキングされていたのがオアシスで、当時は未契約の〝その他大勢〟の無名バンドに過ぎなかった。
オアシスの空前絶後の成功はビートルズ以来だったが、ネブワースでのライブを頂点にバンドもアランも下降の一手をたどる。ロックとはそもそも瞬間最大風速で微分係数だ。レーベル運営に行き詰まるのは必然の成り行きで、薬物依存と闘うことになる。天才的な感覚で〝ロックの大統領〟と評された旋風児は本作の後半で、常識人の一面を見せていた。
上記した「C.R.A.Z.Y」でもザックと父の和解が描かれていたが、「クリエイション――」でも父と相寄ることになる。「男らしく、まっとうに生きろ」とアランに迫った父は労働党支持者だった。政治には無関心そうなアランは、作品中で語られるアナキズムやフェミニズムについての議論には冷淡だったアランだが、90年代半ばから労働党に肩入れし、オアシスまで巻き込んでブレア首相誕生に寄与した。
ワイルドサイドを歩き続けたアランが父の日、父を訪れるシーンに感銘を覚えた。はみ出すこと、反抗を自らに課して疾走してきたアランの着地点が興味深かった。俺は66歳になっても〝10代の荒野〟をトボトボ歩いている。BGMはクリエイションが送り出したバンドたちだ。
「三遊亭白鳥 柳家三三 二人会」(北とぴあ)に足を運んだ。「両極端の会」と同じ趣向の別ブランドである。古典を継承し本寸法(正統派)と評される三三が白鳥作の新作を演じ、一方の白鳥が古典を披露するのが〝お約束〟だ。演目は三三が「腹ペコ綺談」、白鳥が「しじみ売り」で、ともにレアな演し物で、巧みの技に聞き入った。敬意と友情が滲む両者のオープニングとエンディングのトークも笑いを誘っていた。
英国の新首相にスナク氏が就任した。若さ、明晰な頭脳、インド系であることに耳目が集まっているが、総資産1200億円の新首相に生活苦に喘ぐ国民の気持ちがわかるのかと危惧する声が上がっている。英国といえば新宿シネマカリテで、ロック界に衝撃を与え、後に政治にもコミットしたアラン・マッギーの生き様を描いた「クリエイション・ストーリーズ」(2021年、ニック・モラン監督)を見た。
製作総指揮を担当したダニー・ボイルだけでなく、本作には「トレインスポッティング」チームが関わっている。ボイルといえば映画界きってのロック通で、「127時間」のハイライトシーンでシガー・ロスの「フェスティバル」を用いており、演出を担当したロンドン五輪の開閉開式もロック色が濃い内容だった。
時代背景が近いのは、同じくシネマカリテで観賞した「C.R.A.Z.Y」だ。同作のザック、「クリエイション――」のアラン・マッギーは、カナダと英国、創作と実在と背景は異なっているが、ともに1960年生まれでデヴィッド・ボウイの影響を受けた。さらに10代の頃から父との確執を抱えていた。本作では青年時代のアランをレオ・フラナガンが、中年以降をユエン・ブレムナーがそれぞれ演じていた。
<僕らは、どんなバンドよりも異常だった>……。これが本作のキャッチコピーで、アランだけでなく、レーベル創設メンバーは奔放な青春を謳歌していた。アランは<反抗>が全てでパンクバンドも結成するが、薬物依存を抱えていた。嵐の時代が終わると、アランはバンド発掘するなど裏方に回る。
俺のように1980年以降、UKロックに浸った者にとって、クリエイションは神々しい響きを放っていた。インディーズレーベルではラフ・トレード、4AD、ミュートも多くのロッカーを輩出したが、最も売れたのがクリエイションで、CD棚にも20組ほどのアーティストの作品が並んでいる。
プライマル・スクリーム、ティーンエイジ・ファンクラブなどがレーベルに貢献したが、〝神格化〟に至ったのはオアシスとの邂逅だ。グラスゴーで母の葬儀に参列したアランは最終電車に乗り遅れ、ロンドンに戻れなかった。仕方なく訪れたクラブにブッキングされていたのがオアシスで、当時は未契約の〝その他大勢〟の無名バンドに過ぎなかった。
オアシスの空前絶後の成功はビートルズ以来だったが、ネブワースでのライブを頂点にバンドもアランも下降の一手をたどる。ロックとはそもそも瞬間最大風速で微分係数だ。レーベル運営に行き詰まるのは必然の成り行きで、薬物依存と闘うことになる。天才的な感覚で〝ロックの大統領〟と評された旋風児は本作の後半で、常識人の一面を見せていた。
上記した「C.R.A.Z.Y」でもザックと父の和解が描かれていたが、「クリエイション――」でも父と相寄ることになる。「男らしく、まっとうに生きろ」とアランに迫った父は労働党支持者だった。政治には無関心そうなアランは、作品中で語られるアナキズムやフェミニズムについての議論には冷淡だったアランだが、90年代半ばから労働党に肩入れし、オアシスまで巻き込んでブレア首相誕生に寄与した。
ワイルドサイドを歩き続けたアランが父の日、父を訪れるシーンに感銘を覚えた。はみ出すこと、反抗を自らに課して疾走してきたアランの着地点が興味深かった。俺は66歳になっても〝10代の荒野〟をトボトボ歩いている。BGMはクリエイションが送り出したバンドたちだ。