酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

友川カズキとウクライナ~社会復帰への第一歩?

2022-08-24 15:36:49 | カルチャー
 仕事から離れて半年、宙ぶらりん状態が続くが、先週末はささやかな社会復帰を果たす。土曜は第30回オルタナミーティング「友川カズキ阿佐ヶ谷ライブ」(阿佐ヶ谷ロフト)、日曜はグリーンズカフェ「杉原浩司さんと話そう プーチンのウクライナ侵攻、そして日本の軍事化」(永福和泉地域区民センター)に足を運んだ。ともに緑の党(グリーンズジャパン)会員発のイベントだ。

 まずは友川カズキのライブから。阿佐ヶ谷ロフトでのライブは俺にとって冬の風物詩だが、最近はコロナ禍で中止になっていた。今回は季節を変え、入場を制限して換気休憩を挟んだ4部構成で開催される。ギター一本でアンコールを含め計17曲が演奏された。病気から回復し、減量もしたという友川の、72歳とは思えないアグレッシブなステージに聴き入った。

 俺は友川の偽悪的、自嘲的なMCに共感しているが、実は雲泥の差がある。俺は東京砂漠を這うゴキブリで、友川は晩年の大岡昇平をも含め多くの文化人を魅了した偉才なのだ。静謐と狂気、曲には繊細と野性のアンビバレンツがちりばめられ、諦念、絶望、孤独を叙情で包んでいる。詩は絵画的で、目をつぶると情景が脳裏に浮かんでくる。

 セットリストには「殺されたくないなら殺せ」、「一人ぼっちは絵描きになる」、「三鬼の喉笛」、「桜の国の散る中を」といった馴染みの曲だけでなく、初めて聴く「桑名の駅」や友川が故郷を歌った「三種川」も含まれていた。三種川の氾濫が大きく報じられたことに、友川はショックを覚えたという。

 日曜の杉原浩司氏の講演会も示唆に富む内容だった。散会後、気の置けない人たちとの飲み会に参加するなど、楽しく充実した夜を過ごした。杉原氏は武器取引反対ネットワーク(NAJAT)代表で、グリーンズジャパン東京共同代表でもある。NAJATはウクライナ侵攻のみならず、ミャンマーの軍事クーデターへの抗議活動を展開している。杉原氏の論考は「世界」などメディアに掲載されることも増えた。

 杉原氏はチェチェンとシリアでの大虐殺の延長線上にウクライナ侵攻を捉えている。飲み会で「赤い闇 スターリンの冷たい大地」で描かれたホロモドールについて話すと、杉原氏も見ていたようで、ロシアとウクライナの根深い<支配-被支配>の関係が背景にあるようだ。

 侵攻から半年、クリミア半島でのロシア側施設への攻撃が報じられるように、ウクライナが持ち直したという見方もあり、中国製ドローンをウクライナが導入しているとの分析がある。深刻なのは戦争がもたらした食料危機で、中東やアフリカでは多くの人が飢餓状態に陥りつつある。遠く離れた〝外野〟日本では左派・リベラルの論調が変わってきた。<米国・NATO=正義、ロシア=悪>は誤りで、責任は両方にあるという相対論だ。

 ロシアのプロパガンダ(フェイクニュースを含む)が功を奏した点もあるが、相対論は的外れと杉原氏は断言する。SNSで現場から世界に発信された無加工の映像は、ロシア軍の戦争犯罪を伝えているからだ。<女性や子供たちの命を守るためにも、ウクライナは停戦交渉すべき>という意見に説得力がないわけではないが、歴史的経緯やプライドを踏まえると、外野で相対論を吐くことに、俺自身も疑念を覚える。

 さらに、左派・リベラルには<アメリカや日本政府と同じ判断をしたくない>との共通認識がある。バイデン大統領や岸田首相が説くウクライナ支援に同調することは出来ないと考える識者もいるだろう。朝日や毎日など多くのメディアに掲載されている非戦論の根底にあるのは、全ての戦争は悪と見做し、武装抵抗を否定する論理と杉原氏は指摘する。

 アウエー(武器輸出展示会や防衛装備庁)に単身乗り込み、抗議の声を上げてきた杉原氏を任侠映画のヒーローを重ねたこともある。数を頼まず言葉を行動に移す杉原氏が警鐘を鳴らしているのは軍事予算の巨額化だ。ロシアのウクライナ侵攻の悪しき副産物は、上記の食料危機に加え、世界各国で軍備増強が進んでいる。

 日本でも21日付朝日新聞朝刊が<防衛予算 事項要求100超>と報じた。長射程「スタンド・オブ・ミサイル」の運用も含まれている。軍事費増額、憲法改正と戦前回帰の動きを推進してきたのが、統一教会、日本会議、神政連といった〝カルト〟だ。暗澹たる思いに沈んでしまう。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「この国の戦争」~物語と空... | トップ | 「C.R.A.Z.Y」~温かな... »

コメントを投稿

カルチャー」カテゴリの最新記事