酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

「生物と無生物のあいだ」の文系的読み方

2007-10-30 01:54:39 | 読書
 天皇賞は馬場の読み違いもあり、大外れだった。最適距離は2000㍍? 鉄砲が利くタイプ? メイショウサムソンの謎は、武豊とのコンビで少しずつ解けていくに違いない。

 さて、本題。帰郷中に「生物と無生物のあいだ」(講談社現代新書)を読んだ。著者の福岡伸一氏は茂木健一郎氏(脳科学者)同様、<理系の論理>と<文系の情念>を併せ持つ研究者(生物学者)である。

 東洋哲学が追究する真理、西洋科学が解明する自然の驚異……。両者の志向を繋ぐニューサイエンスに魅せられた時期があった。「踊る物理学者たち」(ゲーリー・ズーカフ)のページを繰りつつ、怒りと悔いが入り混じった感情にそよいだ記憶がある。俺はどうして理数科嫌いになったのだろう……。

 ヒトの誕生と進化は? 宇宙の始原と終焉は? 生命を支える構造は? 本質的な問いかけを前提に、精神と自然の接点を見いだすニューサイエンス流方法論が教育課程に導入されれば、数式と化学式の洪水に辟易することなく、理数科の授業を楽しめるはずだ。

 本書にも文系人間を刺激する記述が多く含まれている。著者はアメリカでの研究生活で重大な錯誤に直面し、<「生命とは何か」という基本的な問いかけに対する認識の浅はかさ>に行き当たった。<私たちは、自然の流れの前に跪く以外に、そして生命のありようをただ記述すること以外に、なすすべはない>という悟りに近い言葉で本書を結んでいる。

 <生命=自己複製を行うシステム>、<DNAを構成する四つの単位>、<エントロピーから生命体を守る動的平衡と相補性>……。難解な科学の最前線を、論理に弱い俺でも消化できるように、巧みな手さばきで調理してくれた。<秩序は絶え間なく壊されることによって維持される>(要旨)という自然界のルール、<内部の内部は外部である>という禅の公案のようなキーワードも刺激的だった。

 「平方根の法則」も示唆に富んでいる。100個の微粒子のうち例外的に振る舞うのは、100の平方根、10個前後という。あなたが属する部署が25~50人で構成されているなら、組織に馴染めぬ者、ルールに無頓着な者が5~7人いるのは当たり前なのだ。家族(小さな単位)がたやすく崩壊する一方、社会(大きな単位)ではアウトロー出現の確率が減少し、時に偏った思想や宗教に縛られる。「平方根の法則」は人間社会にも適用できる摂理なのだろう。

 学界の歪んだ実態も抉り出されていた。DNAの二重らせん構造を発見したのはロザリンド・フランクリンだが、彼女の成果を盗用した3人がノーベル賞を受賞したという事実に衝撃を受けた。野口英世は著者と同じくロックフェラー大で研究生活を送った。肖像が千円札に使われる野口だが、海外では扱いが異なる。<功名心以外は見るべきものなし>が、科学史における評価という。

 最後に。守屋武昌前防衛省事務次官の証人喚問をニュースで見た。自然の摂理が敷衍されるなら、高潔で識見ある人が指導的な地位に就くべきだが、真逆の現実が人間社会に蔓延している。人の狂いは自然にフィードバックされ、全国で桜が狂い咲いた。俺は果たして、正気を保っているのだろうか。
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罰当たりの天皇賞予想~雨に唄うはポップロック?

2007-10-27 01:00:42 | 競馬
 先週の菊花賞、最終コーナー手前で妄想から現実に引き戻された。珊瑚の島(ウエイクアイランド)がズルズル後方に沈んでいく。馬を責める気は毛頭ない。買った俺がアホだっただけだ。

 親類に不幸があり、昼過ぎから帰郷する。性なのか業なのか、喪に服すべき時に馬券を買う。万が一にも当たったら、天罰が下っても不思議はない。今回のテーマは<天罰を避けて、馬券を当てない>だ。どのみち俺など、三途の川で「行いの秤」をチェックされ、どこかの地獄でもがくのは確実だけど……。

 さて、天皇賞。当日は重馬場必至で、能力通り決まらない可能性もある。柄にもなく報恩の精神で、有馬記念で推したポップロック、毎日王冠で懐を潤してくれたチョウサンの2頭を選びたい。ポップは重得意だし、チョウサンにはビッググラス(高松宮記念3着)、サンアディユ(スプリンターズS2着)に似た勢いを感じる。

 <当てない>が目標である以上、メイショウサムソンとアドマイヤムーンは買わない。石橋守と込みでサムソンを応援してきたが、武豊への乗り替わりで好感度が下がった。そもそもサムソンは、俺にとって適距離、道悪巧拙、好走ローテがつかめぬ謎の馬なのだ。移籍金40億円が話題になったアドマイヤムーンだが、見た目そのままを伝える夕刊紙を信じるなら、調整が万全とはいえないようだ。

 マツリダゴッホは気になる一頭たが、喪中に「祭り」はさすがに買えない。伏兵陣ならシャドウゲイトだ。<シャドウ=影、暗がり、翳り、霊>で、今の俺にピッタリだ。重馬場、人気薄の逃げ馬、鉄砲の鬼(3戦3勝)、父ホワイトマズル(アサクサキングスと同じ)、思い切りいい鞍上(田中勝)……。条件は揃った。

 結論。◎⑮ポップロック、○⑬チョウサン、▲⑭ダイワメジャー、△⑪シャドウゲイト。印は便宜上で、馬券は並列扱いだ。単勝は⑪1点、馬連は4頭ボックス6点、3連単も4頭ボックスで24点。

 当たったらどうしよう、恐ろしい天罰が……。こんな心配をするなんて、俺はどこまでも能天気に出来ている。


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1971年10月25日~<正しい負け方>を教わった夜

2007-10-25 22:12:33 | スポーツ
 亀田騒動の余波が治まらない。多くの関係者が取材を受けているが、亀田兄弟のジム(グリーンツダ)の先輩、井岡弘樹氏(元2階級王者)の発言が印象に残った。控えめでまじめな亀田一家が上京後、醜く変身したことに、井岡氏は納得がいかない様子だった。<TBS―協栄>が「悪たれ家族」のシナリオを書いたのだろうか。

 36年前のきょう(25日)、ある試合に感動してボクシングファンになる。学生時代は後楽園ホールに足繁く通っていた。ボクシングでは、一つの負けがキャリアに終止符を打つケースが少なくない。どこか斜に構えた観客は、自らの温度と湿度を測るように、熱く醒めた眼差しをリングに投じていた。プロレス開催時の祝祭的ムードと対照的な緊張感が、時に閑散とした会場を覆っていた。

 「ある試合」とは、金沢和良がルーベン・オリバレスに挑んだWBAバンタム級タイトルマッチである。オリバレスはボクシング史に残るボクサーで、68戦66勝61KO1敗1分の戦績を誇っていた。下馬評通り、王者が繰り出す強烈なパンチに、金沢は序盤から防戦一方になったが、中盤に変化の兆しが訪れた。金沢の気迫に、オリバレスがひるんだような表情を浮かべるようになる。奇跡が起こる……。俺もテレビの前で拳を握り締めていた。金沢のラッシュにもオリバレスは倒れず、今度は金沢が打ち疲れる番になる。14回、ノーガードの金沢を、王者のアッパーが打ち抜いた、起き上がった金沢は、阿修羅のような表情で叫びながら、王者に向かっていく。南方戦線で英軍戦車に突進し、散華した日本兵のように……。人はいかに闘い、敗れるべきかを、金沢は身をもって知らしめた。

 オリバレス―金沢戦以外、71年9~11月に国内で行われた世界戦を挙げてみる。
□9月2日 西城正三(WBAフェザー級王者)がゴメスに5回KO勝ち
□10月10日 沼田義明(WBCJライト級王者)がアレルドンドに10RKO負け 
□10月23日 大場政夫(WBCフライ級王者)がカバネラに判定勝ち
□10月31日 輪島功一がホッジに判定勝ちしJミドル級王座獲得
□11月11日 柴田国明(WBCフェザー級王者)がマルセルと引き分け 
 
 3カ月間で6試合、71年を通して日本関連の世界戦は14試合行われたが、年間最高試合に選定されたのはオリバレス―金沢戦だった。「少年マガジン」に連載中だった「あしたのジョー」を超える死闘は、日本ボクシング史上NO・1の伝説として語り継がれている。

 3年後、録画放映された試合に衝撃を受ける。怪物オリバレスが新鋭アレクシス・アルゲリョにマットに這わされたのだ。野性的なオリバレス、知的なアルゲリョ……。両者の対照的なファイトに魅せられ、俺はボクシングの国境を超えた。

 現在は「エキサイトマッチ」(WOWOW)で最高峰の闘いを堪能している。実直な浜田剛史氏(元WBC王者、帝拳代表)、該博な知識とユーモアに溢れるジョー小泉氏(マッチメーカー、評論家)のコンビは最高で、月曜日が待ち遠しい。俺だけでなく、世界中のファンが望んでいるのは、マニー・パッキャオ(フィリピン)とエドウィン・バレロ(帝拳、ベネズエラ)の対決だ。遠からずWOWOWで中継される日が来るだろう。

 日本人ボクサーでメジャー級の評価を受けた世界王者を挙げるなら、ファイティング原田、柴田国明、ガッツ石松あたりか。おとぼけが売りの石松氏だが、デュラン、ヘススに敗れたものの、ゴンザレスを2度KOし、ブキャナンに勝っている。石松氏は真に偉大なボクサーだったのだ。



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2000Xを穿つ音~PANTAいう名の予言者

2007-10-23 01:07:19 | 音楽
 レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン来日公演の先行予約を申し込んだ。果たしてチケットをゲットできるだろうか。

 <レイジこそ世界で最もラディカルかつ知的なロッカー>……。この「常識」を覆す可能性があるとしたら、PANTAをおいて他にいない。横軸(同時性)と縦軸(歴史)を見据えるスケールの大きさ、虐げられし者への共感、揺るぎない意志、狂おしいまでのリリシズム……。PANTAで連想するのは、船戸与一の小説世界だ。

 頭脳警察(72~75年)、PANTA&HAL(79~80年)、ソロ(76~78年、81年~現在)と、PANTAは常に問題作を世に問うてきた。響として発表した最新作「オリーブの木の下で」は重信母娘とのコラボで、パレスチナと日本の絆をテーマに掲げていた(9月5日の稿)。

 <(業田は)何か(神か悪魔?)に憑かれて書かされていたのだろうな>……。これは「BSマンガ夜話」が「自虐の詩」を取り上げた際、いしかわじゅん氏が語った印象的な言葉である。PANTAにも神懸かり、悪魔憑きの時期があった。鈴木慶一がプロデュースしたPANTA&HAL時代の「マラッカ」(79年)と「1980X」(80年)は、コンセプトもサウンド面も世界の最先端を走っていた。

 「マラッカ」のテーマは石油に死命を制せられた日本の在り方で、現在においてもテロ特措法を議論する前提になっている。「さようなら世界夫人よ」に匹敵するバラード「裸にされた街」、マーク・ボラン追悼の「極楽鳥」、官能的な「ココヘッド」、「ネフードの風」など、収録曲のクオリティーは今日も褪せることはない。

 舞台を中東から東京に移したのが「1980X」で、タイトル中の「X」は<天皇の死=Xデー>のメタファーだ。研ぎ澄まされた音と言葉に袈裟斬られ、血が迸り出たような感覚に襲われる。絶望的な孤独を歌った「トウ・シューズ」、ストーカーを予言した「モータードライブ」、Xデーを想定した「臨時ニュース」、試験管ベビーに触発された「ルイーズ」、カード社会におけるアイデンティティー喪失を表現した「IDカード」と続き、テンションが途切れない。

 ♪アメ横でやっと手に入れた 気に入りのナイフが 狂った手許をはじき返す午後の街角 排ガスまみれのグリーンベルトに 投げ捨てられたナイフ……。このフレーズが締めくくる「ナイフ」では、衝動殺人者の心理を抉っている。「1980X」は「2000X」に照準を定めた予言集といえるだろう。

 初期Tレックスにインスパイアされた? 頭脳警察は、精神もスタイルもパンクの先駆けだった。1980年3月に発表された「1980X」をニューウェーヴ的と評するのは、歴史を無視した戯言である。キュアーの2ndアルバム「セブンティーン・セコンズ」は80年8月、エコー&ザ・バニーメンの1st「クロコダイルズ」は同年7月、ニュー・オーダーとデペッシュ・モードの1stはともに81年11月……。ニューウェーヴの主要バンドが形を整える前に、PANTAはUK勢に先行してニューウェーヴ的な音を奏でていた。PANTAは優れたサウンドクリエイターでもある。

 本稿を読んだ方は、「マラッカ」と「1980X」を併せて聴いてほしい。<PANTAこそ世界で最もラディカルかつ知的なロッカー>と確信されることを保証する。


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菊花賞的中で珊瑚の島へ

2007-10-20 01:53:21 | 競馬
 先週の秋華賞、ザレマはダイワスカーレットをマークして道中を進むも力尽き、ズルズルと後退した(15着)。馬券を買った者として、川田の積極策に拍手を送りたい。好対照なのが武豊で、急追したベッラレイア(4着)だが、明らかに足を余していた。武豊自身「もう少しうまく乗れなかったかという反省が残りました」と、HPで胸の内を明かしている。

 さて、菊花賞。<ゆったり流れてスピード比べ>、<厳しい流れでステイヤー浮上>の2パターンのうち、後者を選ぶことにした。サンツェッペリン、アサクサキングス、ホクトスルタン、ヴィクトリーを見ながらレースを進めるロックドゥカンブを本命に推す。父レッドランサムの代表産駒はかのエレクトロキューショニストで、母系からも底力がありそうだ。遅生まれだが<心は大人>で、馬込みにも強い。55㌔の斤量にも恵まれた。

 対抗はリンカーンの弟ヴィクトリーだ。岩田にとっての不安材料は、同馬の気性と近藤夫妻のプレッシャーで、人馬の折り合いがポイントになるだろう。3番手は第一人者の意地に期待して、武豊鞍上のドリームジャーニーだ。武の仕掛けどころが、レースの結果を左右しそうだ。

 京都大賞典3着で素質の高さを証明したアルナスラインだが、成長期の離脱があまりに痛く4番手まで。注目していた兵庫特別組だが、タガノファントムは抽選ではじかれ、デュオトーンはソエに不安を抱えている。超大穴候補は、父母両系から英国の薫り漂うスタミナ血脈を受け継いだウエイクアイランドだ。

 結論。◎④ロックドゥカンブ、○⑱ヴィクトリー、▲⑯ドリームジャーニー、△⑫アルナスライン、注②ウエイクアイランド。3連複は④⑱⑯⑫②のBOXで計10点。3連単は④⑱2頭軸で<④・⑱><④・⑱・⑯・⑫・②><④・⑱・⑯・⑫・②>の計12点。射幸心で②から④⑱⑯⑫へ馬連、ワイド4点ずつ。

 ②絡みで的中すればウエイクアイランド(珊瑚礁の島)に行きたいものだ。日曜の午後3時40分まで、たっぷり妄想を楽しむことにしよう。



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「いつか読書する日」~心に染みる50代の恋

2007-10-17 01:03:02 | 映画、ドラマ
 一昨日(15日)、51歳になった。人生の秋は深まるばかりである。

 録画しておいた「いつか読書する日」(05年)を誕生日に見た。中年カップルの切ないラブストーリーが、そぼ降る雨のように乾いた心を濡らしてくれる。主演はタイガースに縁のある田中裕子(沢田研二の奥さん)と岸部一徳(リーダー)の二人だった。

 田中のアンニュイは若い頃と変わらず、老いと巧みに付き合っていた。岸部はジョン・ポ-ル・ジョーンズ(レッド・ツェッペリン)を驚嘆させたほどのベーシストだったが、還暦を迎えた今、最も存在感のある俳優になった。

 以下にストーリーを簡単に。語り部は女流作家の敏子(渡辺美佐子)で、田中が演じる美奈子を娘のように気に懸けてきた。

 さりげなく、自然体で、影がある……。個性が近い田中と岸部の共演が、ストーリーに奥行きと余韻を与えている。美奈子は牛乳配達とスーパーのレジを掛け持ちし、「くたくたになる」ことで孤独を癒やす50歳の女性だ。岸部が演じる槐多は実直な地方公務員で、末期ガンの妻容子(仁科亜季子)を献身的に介護している。

 高校時代、美奈子と槐多は付き合っていたが、悲しい出来事をきっかけに、秘めた思いを冷凍庫に仕舞い、言葉を交わさず生きてきた。死期を悟った容子は、夫への感謝を込めて一計を案じる。「(自分の)気持ちを殺すって、周りの気持ちも殺すことなんだから」と夫を諭す容子の台詞が印象的だった。

 「腐った氷」を溶かした雨は、二人をひたむきな10代に導くが、翌朝まで降り続いて運命を暗転させる。悲しい結末だが、槐多と美奈子の最後の表情は、<恋という修羅>からの解放感に溢れていた。ラストで美奈子は槐多宅に赴き、牛乳瓶を入れ替える。耐えた三十数年と同じぐらいの空っぽな時間が、彼女の死まで緩やかに過ぎていくだろう。「いつか読書する日」がようやく訪れたのだ。

 メーンストーリーには30年前のノスタルジックな風が流れていたが、サイドストーリーでは老人痴呆、児童虐待、介護といった21世紀の冷たい風が吹き荒んでいた。本作は黄昏時を自覚した人のための<R40指定>映画といえるだろう。

 年頭の誓いは「恋でもしようか」だった(1月2日の稿)。本作を見て、俺はまだ恋について語るほど成熟していないことを思い知る。もっと枯れ、もっと濾過しなければ、真の恋に届かないだろう。

 岸部とは間もなく「相棒」(小野田官房長役)で再会できる。超ハードスケジュールで映画やテレビに出演しているが、決してマンネリにならない。実に不思議な俳優である。


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秋華賞&スポーツあれこれ

2007-10-14 00:20:21 | 競馬
 スプリンターズSはノーマークのアストンマーチャンに逃げ切られた。3歳牝馬、畏るべしである。同期生NO・1決定戦になった秋華賞は、上位3頭の人気が拮抗している。

 先行脚質のダイワスカーレットは、京都内回りでは信頼できる軸馬だと思う。対するウオッカは、幾つもの死角を抱えている。<ダービー⇒宝塚記念>のローテが響いたのか、蹄球炎発症で凱旋門賞断念と、勝負事に不可欠の<流れ>を失くしてしまった。

 成長(ローズS16㌔増)と乗り替わり(秋山⇒武豊)で、ベッラレイアが人気を集めている。オークスでは展開のアヤで2着に敗れたが、秋山の騎乗は責められない。後方待機では打倒ダイワを果たすのは難しく、武の戦略を楽しみにしている。武にとってザレマは「私が棄てた女」だ。10着に終わったオークスを、「距離が長かった」と振り返っていた。ローズSは帰厩の遅れと出負けが重なり、6着に敗れたが、大型馬ゆえ使った上積みもある。4番枠からの先行粘り込みに期待したい。

 夏を使われたラブカーナ、アルコセニョール、レインダンスはいずれも14~15戦のキャリアで、上がり目に疑問符が付く。唯一可能性を覚えるのは3連勝中のタガノプルミエールで、無欲の追い込みに期待したい。

 結論。◎⑬ダイワスカーレット、○④ザレマ、▲⑪ベッラレイア、△⑯ウオッカ、注⑭タガノプルミエール。3連単は⑬1頭軸で<⑬・④・⑪><⑬・④・⑪・⑯><④・⑪・⑯・⑭>の15点。馬連は④から⑬⑪⑯へ3点。既成勢力を重視したが、菊花賞では夏の上がり馬を狙うつもりだ。

 ついでにスポーツあれこれ。袋叩き状態の亀田一家には、1億円近いギャラが支払われている。批判は結構だが、歪んだ構造を作ったメディアに自省と自戒を求めたい。野球は日米ともプレーオフ真っ盛りだが、松井稼が所属するロッキーズのにわかファンになった。ディープインパクト級の豪脚で王座まで登り詰めてほしい。

 NFLでは、補強に努めたペイトリオッツが絶対本命に恥じない強さを発揮している。サラリーキャップで多くのレギュラーを失い、開幕後もケガ人続出の昨季王者コルツだが、予想を覆す健闘を見せている。いずれかがAFC王者になり、スーパーボウル圧勝というシナリオが出来上がってしまった。

 読書と思索の秋のはずが、食欲とスポーツ観戦に浸っている。俺の腐った脳にピッタリの過ごし方といえるだろう。


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リアルで切ない警察小説~横山秀夫が描く男の世界

2007-10-11 00:49:12 | 映画、ドラマ
 一昨日(9日)、ゲバラ没後40周年の追悼セレモニーが世界各地で開催された。ゲバラは<死した革命家>ではなく、今や<反グローバリズムの象徴>である。キューバ革命成就後に来日し、原爆資料館を訪ねたゲバラは、「これほど酷い仕打ちをしたアメリカに、どうして尻尾を振るんだ」と日本人に問いかけた。胸に刺さるエピソードである。

 さて、本題。今回はゲバラの対極? に位置する警察を扱ったドラマについて記すことにする。

 俺は決して刑事ドラマのファンではない。全作見ているのは「刑事コロンボ」、「非情のライセンス」、「相棒」ぐらいだが、TBS系のスカパー&BSで新アイテムを発見した。横山秀夫の小説のドラマ化で、いずれも2時間枠の再放送だった。

 同時並行で原作を読んだ。いずれも数十㌻の短編で、警察機構の実態や病巣、犯罪者の心理が鋭く描かれ、ラストまで緊張感が途切れない。ネガ(原作)を忠実に再現するだけでなく、プリズムを通して屈曲、拡大させたのがドラマ化作品といえるだろう。

 「陰の季節」シリーズの舞台は神奈川県警だ。7作中4作が短編集「陰の季節」(文春文庫)をベースにしている。上川隆也が演じるのは、ノンキャリアながら出世街道をひた走る二渡警視(警務課調査官)だ。原作では妻子がいるが、ドラマでは独身と設定が変更されている。刑事部と警務部の対立、保身に走る上層部、天下りをめぐる葛藤、内部の腐敗、メディアとの緊張関係……。人事を司る二渡は、非情に徹して難局を克服していく。

 同シリーズは<潔い保守の物語>といえるだろう。高田純次(狡猾な上司)、伊東四朗(警察OBの助言者)、清水宏次朗(同期で親友の刑事)など、脇役陣も光っている。先日WOWOWで放映された「震度0」はエンディングが秀逸だったが、上川は高圧的でエゴイスティックなキャリア(冬木警務部長)を熱演していた。

 「第三の時効」(講談社文庫)に収録された6編は、山梨県警捜査一課を舞台にドラマ化されている。作品ごとに渡辺謙(朽木一斑班長)、段田安則(楠見二班班長)、伊武雅刀(村瀬三班班長)の演技派3人が主役を務めていた。<彼らに共通するのは、「情念」「呪詛」「怨嗟」といった禍々しい単語群だろうか>(「囚人のジレンマ」)……。原作にこう記されているように、強烈な三つの個性がしのぎを削って事件を解決に導いていく。ドラマ化に当たって各自の人間像に陰影が味付けだされ、作品を覆う孤独の匂いを濃くしている。

 横山秀夫は今後もリアルで切ない警察小説を書き続け、その多くがドラマ化されるだろう。「松本清張の後継者」の称号に値する活躍を期待している。

 今月下旬、「相棒~シーズンⅥ」がスタートする。回を重ねても失速しないのは、チームワークの精華だろう。横山作品に触れた上で、一点だけ「相棒」にケチを付ける。<キャリア支配=警察組織の戒律>である以上、東大卒キャリアの杉下右京(水谷豊)が50歳過ぎで警部というのは100%ありえない。何を今さらだが、警視ぐらいにしておけば座りが良かったのに……。


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「マシニスト」~不眠男が見る悪夢

2007-10-08 00:20:39 | 映画、ドラマ
 <酒に酔ったような、また夢を見ているような心地で、なすところもなくぼんやりと一生を終わること>(大辞泉「酔生夢死」の項)……。俺はブログのタイトル通り、無為に生きてきた。<虚>をさらに濃くしたのは、10年余の慢性的不眠である。2~3カ月おきに、睡眠2時間弱の日が半月ほど続く。

 不眠に纏わる映画といえば「マシニスト」(04年)だ。1年近く眠れないトレバー(クリスチャン・ベイル)は、為すべきことをメモにして日常を切り抜けている。不眠が記憶中枢を破壊するからで、俺もトレバーほどではないが、夢と現の境界がファジーになっている。同窓の友人に出身高校に女子部が創設されたと話して、失笑を買ったことがあった。不眠期の譫妄は、根のない記憶を組成するらしい。
 
 「メメント」や「バタフライ・エフェクト」といった<タイムトラベル・ムービー>は、切り取った時空を再構成する編集に支えられている。「マシニスト」ではまっすぐ流れる時間の中で、トレバーが記憶の迷路を彷徨う。トレバーにとってリアルな存在は娼婦スティービーだけで、自らもまた捜すべき対象なのだ。

 映像や照明に工夫が凝らされており、異物を呑み込んだような不快感は、観賞後も消えることはない。首吊り男のイラストと<●●●●ER>のパズルが、トレバーを隠された事実に誘っていく。すべてが明らかになった時、トレバーは不眠から解放されるのだろう。

 キリスト教を背景にした伏線が、全編に張り巡らされていた。トレバーが繰り返し手を洗うのは、贖罪の意識の表れだろう。大男アイバンは邪悪に見えるが、Ivanの語源を遡ると聖ヨハネに行き着く。空港ラウンジで知り合う女性の名は、聖母そのもののマリアだった。ニコラスと訪ねた遊園地のアトラクションは、人間の原罪をモチーフにしていた。

 本作最大の衝撃は、30㌔の減量で骸骨化したベイルの肉体である。体を張った俳優といえば、船越英二(「野火」)とロバート・デ・ニーロ「レイジング・ブル」が思い浮かぶが、ベイルも両者にひけを取らない迫真の演技を見せている。

 トレバーは冒頭で、睡眠導入剤代わりに「白痴」を読んでいた。ドストエフスキーの作品は寝る間が惜しくなるエンターテインメントだから、逆に目が冴えるのではと思ってしまう。ちなみに俺は、どうしても眠りたい時、詰め将棋の問題集をパラパラめくる。効きめはかなりのものである。


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ミントからスルメに?~フーファイの新作を聴く

2007-10-05 00:41:26 | 音楽
 40年近くロックを聴いているが、好きなバンドは大抵、日本でブレークしない。フー、ジェスロ・タル、キュアー、マニック・ストリート・プリーチャーズといったビッグネームだけでなく、ジェームスやライヴも過小評価に甘んじていた。
 
 フー・ファイターズもまた、俺という「疫病神」に憑かれたバンドである。英ハイドパークで8万人以上を集めるなど動員力は凄まじいが、日本では今一歩だ。だからこそ「アコースティック・ショウ」(昨年12月、厚生年金会館)では最前席を確保し、デイヴ・グロールと握手できたのだが……。
 
 6thアルバム“Echoes,Silence,Patience&Grace”が先月下旬、発売された。フーファイといえば、ストレートなロックをベースに、ポップなメロディーを味付けしたキャッチーな曲が多いが、新作はしっとりした手触りで、イメージとしては最近のマニックスのアルバムに近い。

 ニルヴァーナ解散後、デイヴはスティックをピックに持ち替え、フーファイを結成する。並行してストーナーロックの代表格、クイーン・オブ・ストーン・エイジでドラマーを務め、ヘビメタ系バンドとも交流している。ハイドパークでは元クイーンのメンバーをゲストに呼ぶなど、<パンク⇒オルタナ⇒グランジ>の枠にこだわらない活動を展開してきた。

 アルバムの感想を簡単に述べる。♯1“The Pretender”~♯4はフーファイらしさに溢れているが、♯5以降のトーンは前作“In Your Honour”のディスク2(アコーティスティック)を継承している。♯8はニール・ヤング風、♯10はザ・バンド風、♯11の後半はフー風と、60~70年代の骨太ロックへのオマージュが窺えた。

 デイヴは聴く者を勇気付ける曲を作り続けてきたが、本作では詞の中身も内向きになっている。40代に近づいたひとりの男として、孤独、空虚、自省、悔恨といった感情が織り込まれている。シンガー、ギタリスト、ドラマー、メロディーメーカーに続き、デイヴは本作で詩人としての評価も確立したといえるだろう。

 先行シングル“The Pretender”が売れなかったので、アルバムもコケるのではと心配していたが、初登場でビルボード3位と、そこそこのチャートアクションを示した。刺激いっぱいのミントではなく、聴き込むほどに味が出るスルメアルバムゆえ、従来のファンの間で評価は分かれるだろう。本作のダウナーなムードと混沌は、進化へのマイルストーンではなかろうか。次作ではスケールアップし、研ぎ澄まされたフーファイに出会うことができるはずだ。

 最後に吉報を。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの来日が決定した。近く詳細が発表されるという。レイジはフーファイと異なり、日本でも海外同様の人気を誇っている。果たしてチケットは取れるだろうか。


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