アベノミクスの成果をでっち上げるため、毎月勤労統計調査が歪められていた。だが、多くの国民が〝成長幻想〟に囚われていることは朝日新聞の世論調査からも窺える。67%が<経済成長は必要>と答え、<必要ではない>は30%だった。一方で70%が<経済成長は困難>と答え、<期待できる>の20%を大きく上回った。
前々稿で紹介した「欲望の資本主義~偽りの個人主義を越えて」(NHK・BS1)には、成長やGDPについて興味深い考察があった。チェコの経済学者トーマス・セドラチェクは「人間の自由より経済成長を優先するのは資本主義の本来の姿ではない。成長への偏愛はやめよう」と主張していた。
多くの識者が中央集権的、独占的傾向に警鐘を鳴らし、権力と寄り添うGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)を<監視資本主義を主導するプラットホーム>と批判的に捉えていた。ビットコインについて、<技術が信用を担保する分散型システム」との肯定的な捉え方があることを知る。
自由、多様性、公平に価値を置く俺は、ブログで脱成長、反グローバリズム、地産地消、分散型経済を推奨してきた。資本主義を超えるオルタナティブな方向性を学ぶため「脱成長ミーティング」(ピープルズ・プラン研究所)に何度か足を運ぶ。17回目のテーマは「グローバル社会的連帯フォーラム(GSEF)」で、報告者は若森資朗氏だった。
GSEFを提唱したのは朴元淳ソウル市長で、第1回総会は2014年に当地で開催された。「ソウル宣言」は世界が現在抱える課題――格差拡大、非正規雇用の増大、環境破壊etc――の原因は市場原理主義、新自由主義、グローバリズムであると明確に指摘し、対抗するために協同組合と草の根民主主義が連携し、公正かつ持続可能な社会を目指すと高らかに謳った。
若者、障害者、非正規労働者に就業の道を開くなど、朴市長は多くの改革で成果を挙げた。日本では殆ど報じられないが、宇都宮健児氏(供託金違憲裁判原告弁護団長)は講演などで言及している。<ソウルの民主主義>は世界に波及し、GSEFの第2回(16年)、第3回(18年)世界大会がそれぞれモントリオール、ビルバオで開かれた。
若森氏はビルバオ大会日本実行委員会代表で、現地の議論を紹介するだけでなく、社会的連帯経済のモデルとされ、知的障害者の雇用に取り組んでいるファゴール油圧機製造部門を訪問した際の印象も語っていた。若森氏はパルシステム連合会専務理事で、「のりこえねっと」代表者である。
「脱成長ミーティング」には研究者、銀行家、官僚に加え、様々な運動の実践者が集う。今回も同様で、農業従事者、産地と消費者のネットワークづくりに携わってきた人、障害者やホームレスと向き合ってきた活動家、ビルバオ大会に参加した大学生が発言していた。日本で社会的連帯経済を推進するための障壁になるのが縦割り行政で、管掌する省庁が異なるため、手続きが煩雑になるという。
肩身は狭いが一言居士ゆえ、俺も若森氏に質問した。いわく<社会的連帯経済が最も浸透しているのは韓国とスペイン。自由、独立、抵抗が社会に根付いていることが前提になるのでは>……。若森氏は韓国の民主化運動について語り、日本では革命の歴史がないと付け加えた。淡々と話す若森氏だが、パッションと反骨精神が言葉の端々に滲む熱い人だった。
社会的連帯経済は資本主義と共存できるのか、資本主義の未来形なのか、それとも社会主義への橋頭堡なのか……。ビルバオ大会参加者にも方向性の違いがあるようだ。日本の協同組合でも同様で、高邁な理想を掲げても企業である以上、収益を上げるという命題に直面する。いかに折り合っていくかがが課題なのだろう。
インターネットによって生産者と消費者の関係が大きく変わったことを、参加者は経験を踏まえて語っていた。「欲望の資本主義」でユヴァル・ノア・ハラリは「20年後、世界中でトマトを売っているのはアマゾンだけ」と予測している。社会的連帯のベースはコミュニティーであり人間同士の交流だが、GAFAといかに向き合えばいいのだろう。質問したかったがタイムオーバーになった。
前々稿で紹介した「欲望の資本主義~偽りの個人主義を越えて」(NHK・BS1)には、成長やGDPについて興味深い考察があった。チェコの経済学者トーマス・セドラチェクは「人間の自由より経済成長を優先するのは資本主義の本来の姿ではない。成長への偏愛はやめよう」と主張していた。
多くの識者が中央集権的、独占的傾向に警鐘を鳴らし、権力と寄り添うGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)を<監視資本主義を主導するプラットホーム>と批判的に捉えていた。ビットコインについて、<技術が信用を担保する分散型システム」との肯定的な捉え方があることを知る。
自由、多様性、公平に価値を置く俺は、ブログで脱成長、反グローバリズム、地産地消、分散型経済を推奨してきた。資本主義を超えるオルタナティブな方向性を学ぶため「脱成長ミーティング」(ピープルズ・プラン研究所)に何度か足を運ぶ。17回目のテーマは「グローバル社会的連帯フォーラム(GSEF)」で、報告者は若森資朗氏だった。
GSEFを提唱したのは朴元淳ソウル市長で、第1回総会は2014年に当地で開催された。「ソウル宣言」は世界が現在抱える課題――格差拡大、非正規雇用の増大、環境破壊etc――の原因は市場原理主義、新自由主義、グローバリズムであると明確に指摘し、対抗するために協同組合と草の根民主主義が連携し、公正かつ持続可能な社会を目指すと高らかに謳った。
若者、障害者、非正規労働者に就業の道を開くなど、朴市長は多くの改革で成果を挙げた。日本では殆ど報じられないが、宇都宮健児氏(供託金違憲裁判原告弁護団長)は講演などで言及している。<ソウルの民主主義>は世界に波及し、GSEFの第2回(16年)、第3回(18年)世界大会がそれぞれモントリオール、ビルバオで開かれた。
若森氏はビルバオ大会日本実行委員会代表で、現地の議論を紹介するだけでなく、社会的連帯経済のモデルとされ、知的障害者の雇用に取り組んでいるファゴール油圧機製造部門を訪問した際の印象も語っていた。若森氏はパルシステム連合会専務理事で、「のりこえねっと」代表者である。
「脱成長ミーティング」には研究者、銀行家、官僚に加え、様々な運動の実践者が集う。今回も同様で、農業従事者、産地と消費者のネットワークづくりに携わってきた人、障害者やホームレスと向き合ってきた活動家、ビルバオ大会に参加した大学生が発言していた。日本で社会的連帯経済を推進するための障壁になるのが縦割り行政で、管掌する省庁が異なるため、手続きが煩雑になるという。
肩身は狭いが一言居士ゆえ、俺も若森氏に質問した。いわく<社会的連帯経済が最も浸透しているのは韓国とスペイン。自由、独立、抵抗が社会に根付いていることが前提になるのでは>……。若森氏は韓国の民主化運動について語り、日本では革命の歴史がないと付け加えた。淡々と話す若森氏だが、パッションと反骨精神が言葉の端々に滲む熱い人だった。
社会的連帯経済は資本主義と共存できるのか、資本主義の未来形なのか、それとも社会主義への橋頭堡なのか……。ビルバオ大会参加者にも方向性の違いがあるようだ。日本の協同組合でも同様で、高邁な理想を掲げても企業である以上、収益を上げるという命題に直面する。いかに折り合っていくかがが課題なのだろう。
インターネットによって生産者と消費者の関係が大きく変わったことを、参加者は経験を踏まえて語っていた。「欲望の資本主義」でユヴァル・ノア・ハラリは「20年後、世界中でトマトを売っているのはアマゾンだけ」と予測している。社会的連帯のベースはコミュニティーであり人間同士の交流だが、GAFAといかに向き合えばいいのだろう。質問したかったがタイムオーバーになった。