FBは幽霊会員だが、知り合ったばかりの7人目の友達が自身のページにドラマチックな映像を貼り付けていた。台湾のひまわり学生運動(立法院占拠)を支持した50万の民衆が総統府を包囲したデモの空撮である(昨年3月末)。以下をコピペすれば3分間の感動を味わえる(https://www.youtube.com/watch?v=Or8GwHY-2O8#t=27)。
警察車両は見当たらず、人々は笑みを浮かべている。<主権者は国民>という信念は昨秋の地方選で結実し、国民党は大敗を喫した。総統選では高校生が先頭で叫んでいるし、反原発デモでは多くの人気俳優やタレントが参加している。有形無形の圧力は一切ないという。日本が民主主義度で台湾に追いつく日は来るだろうか。
緑の党に入会して1年半、尊敬できる人たちと繋がることができた。とりわけ刺激を受けた高坂勝さんと杉原浩司さんが、相次いでメディアに登場した。多様性重視、アイデンティティーの浸潤、自然との調和を説き、循環型社会の志向する前共同代表の高坂さんは、千葉で有機農業を実践し、東京で週休3日のオーガニックバーを経営している。
「未来へつなぐ。土曜スタジアム」(BSTBS)に出演した高坂さんは仕事をテーマに、錚々たる面々と語り合っていた。「脱成長」で羽田圭介氏(芥川賞作家)を驚かせたり、大宅映子さんと親しく言葉を交わしたりで、〝トークの名人〟らしく包容力を発揮しつつ、「(仕事で)構造的暴力に加担したくない」など刃を時折、キラリ煌めかせていた。
高坂さんが柔なら、山本太郎参院議員が「霞が関が最も恐れる男」と評する杉原さんは剛だ.でも、性格はとても優しい。その名が活動家の間に浸透しているのは喜ばしい限りだ。明日(1日)は慰労会を企画したが、当の杉原さんは戦争法案成立後も立ち止まらない。インターネット番組「FFTV特集」に出演し、武器輸出と防衛装備庁への抗議を表明した。
帰省中に京都で読んだうちの一冊、吉田修一著「森は知っている」(15年、幻冬舎)の感想を記したい。映画化された「悪人」は見たが、吉田の小説を読むのは初めてだ。ちなみに、「悪人」は過剰なほど情緒的と感じ、<在日朝鮮人3世で「フラガール」の監督でもある李相日は〝日本的〟の呪縛から自由になれば、さらなる高みに到達できる>(論旨)と記した。だが、俺は明らかに勘違いしていた。
韓国映画を観賞していくうちにわかってくるが、日本人と朝鮮人はメンタリティーとエモーションを共有している。「悪人」の熱さに、吉田の小説も情緒的に違いないと想像していたが、「森は知っている」は純水のように爽やかで瑞々しい作品だった。
主人公の鷹野は沖縄の架空の島、南蘭島で暮らす高校3年生だ。友達の柳、知的障害を持つ柳の弟寛太とともにビーチハウスの女子更衣室を覗くなど、ありふれた17歳の少年に思える。だが、鷹野と柳は、過酷な運命に首根っ子を掴まれていた。AN通信という組織により、イーサン・ハントの卵として訓練を施されていたのだ。体内に小型爆弾を埋め込まれる直前、柳は逃亡し、鷹野は微妙な立場に追い込まれる……。
伏線が張り巡らされている本作を読み進めながら、俺は確信した。続編が用意されているに違いないと……。ところが、実は続編は既に存在していた。3年前に発表された「太陽は動かない」で、鷹野はイーサン級の活躍を見せていると知る。本作は前景に当たる作品で、〝メーキング・オブ・鷹野〟の位置付けか。時を遡って続編を読むことにする。
丁寧でオーソドックスというのが、吉田作品初体験の印象だ。本作の肝というべきは、餓死した弟を抱いて発見されたという棄てられた記憶であり、転校してきた詩織との仄かな恋だ。クールなはずの教育係が鷹野に寄せる父性にも感銘を覚えた。明日のことは考えられないけど、目の前の一日を精いっぱい生き抜く……。これが、鷹野の身に染みた教訓だ。ナイーブな心情と破天荒な出来事を違和感なく紡いでいく力量に、連作「カオスの娘」、「英雄はそこにいる」を著した島田雅彦を重ねていた。
「太陽は動かない」では太陽光発電、そして本作の後景に聳えていたのは、水道事業の民営化を見越した水資源を巡る暗闘だった。テーマ設定にも作者の俯瞰の視点が窺える。代表作と目される「怒り」は映画化され来年公開される。「悪人」同様、李監督というから、情念が滾る作品になるかもしれない。
警察車両は見当たらず、人々は笑みを浮かべている。<主権者は国民>という信念は昨秋の地方選で結実し、国民党は大敗を喫した。総統選では高校生が先頭で叫んでいるし、反原発デモでは多くの人気俳優やタレントが参加している。有形無形の圧力は一切ないという。日本が民主主義度で台湾に追いつく日は来るだろうか。
緑の党に入会して1年半、尊敬できる人たちと繋がることができた。とりわけ刺激を受けた高坂勝さんと杉原浩司さんが、相次いでメディアに登場した。多様性重視、アイデンティティーの浸潤、自然との調和を説き、循環型社会の志向する前共同代表の高坂さんは、千葉で有機農業を実践し、東京で週休3日のオーガニックバーを経営している。
「未来へつなぐ。土曜スタジアム」(BSTBS)に出演した高坂さんは仕事をテーマに、錚々たる面々と語り合っていた。「脱成長」で羽田圭介氏(芥川賞作家)を驚かせたり、大宅映子さんと親しく言葉を交わしたりで、〝トークの名人〟らしく包容力を発揮しつつ、「(仕事で)構造的暴力に加担したくない」など刃を時折、キラリ煌めかせていた。
高坂さんが柔なら、山本太郎参院議員が「霞が関が最も恐れる男」と評する杉原さんは剛だ.でも、性格はとても優しい。その名が活動家の間に浸透しているのは喜ばしい限りだ。明日(1日)は慰労会を企画したが、当の杉原さんは戦争法案成立後も立ち止まらない。インターネット番組「FFTV特集」に出演し、武器輸出と防衛装備庁への抗議を表明した。
帰省中に京都で読んだうちの一冊、吉田修一著「森は知っている」(15年、幻冬舎)の感想を記したい。映画化された「悪人」は見たが、吉田の小説を読むのは初めてだ。ちなみに、「悪人」は過剰なほど情緒的と感じ、<在日朝鮮人3世で「フラガール」の監督でもある李相日は〝日本的〟の呪縛から自由になれば、さらなる高みに到達できる>(論旨)と記した。だが、俺は明らかに勘違いしていた。
韓国映画を観賞していくうちにわかってくるが、日本人と朝鮮人はメンタリティーとエモーションを共有している。「悪人」の熱さに、吉田の小説も情緒的に違いないと想像していたが、「森は知っている」は純水のように爽やかで瑞々しい作品だった。
主人公の鷹野は沖縄の架空の島、南蘭島で暮らす高校3年生だ。友達の柳、知的障害を持つ柳の弟寛太とともにビーチハウスの女子更衣室を覗くなど、ありふれた17歳の少年に思える。だが、鷹野と柳は、過酷な運命に首根っ子を掴まれていた。AN通信という組織により、イーサン・ハントの卵として訓練を施されていたのだ。体内に小型爆弾を埋め込まれる直前、柳は逃亡し、鷹野は微妙な立場に追い込まれる……。
伏線が張り巡らされている本作を読み進めながら、俺は確信した。続編が用意されているに違いないと……。ところが、実は続編は既に存在していた。3年前に発表された「太陽は動かない」で、鷹野はイーサン級の活躍を見せていると知る。本作は前景に当たる作品で、〝メーキング・オブ・鷹野〟の位置付けか。時を遡って続編を読むことにする。
丁寧でオーソドックスというのが、吉田作品初体験の印象だ。本作の肝というべきは、餓死した弟を抱いて発見されたという棄てられた記憶であり、転校してきた詩織との仄かな恋だ。クールなはずの教育係が鷹野に寄せる父性にも感銘を覚えた。明日のことは考えられないけど、目の前の一日を精いっぱい生き抜く……。これが、鷹野の身に染みた教訓だ。ナイーブな心情と破天荒な出来事を違和感なく紡いでいく力量に、連作「カオスの娘」、「英雄はそこにいる」を著した島田雅彦を重ねていた。
「太陽は動かない」では太陽光発電、そして本作の後景に聳えていたのは、水道事業の民営化を見越した水資源を巡る暗闘だった。テーマ設定にも作者の俯瞰の視点が窺える。代表作と目される「怒り」は映画化され来年公開される。「悪人」同様、李監督というから、情念が滾る作品になるかもしれない。