子どものころの話になる。4月4日は「せっく」といい、隣近所が子どもからお年寄りまでが、敷いたゴザの上に車座に集い宴を開いていた。宴では、各家庭手作りの「料理」を重箱に詰め持ち寄る。それを食べながら楽しんだ。カラオケの前身かもしれないが、蓄音機から流れ出る音楽に合わせ歌ったり踊ったりしていた。
今でいう桜の下で楽しむ花見に似ている。料理とは言うが、思い返せば毎日の食事に少々何かがプラスされた程度だった。それでも重箱を提げて喜んで参加した。そのことが集落や地域の交流や親睦となり、助け合う絆になっていたように思う。盛んに言われる災害時の共助は無意識のうちに醸成されていたのだろう。
なぜ4月4日なのか教えてもらってはいない。考えてみると雛と端午の節句の中間ということで分け隔てないいい日だったかもしれない。節句は節日(せちにち、せつじつ)ともいい、季節の変わり目に祝祭を行う日という。人日(1月7日)、上巳(3月3日)、端午(5月5日)、七夕(7月7日)、重陽(9月9日)などの式日がる。せっくと地域交流、昔人の知恵は今にも通じる。
新入社員が初仕事として花見の場所取り、今も続いているのだろうか。何十年も前、配属された学卒社員。命じられるままに、日の高いうちに出かけた。場所を確保したが、隣の宴席から一杯奨められ、そのまま寝入ってしまった憎めない話も肴にしたことがある。せっくも時が移れば中身も変わる。錦帯橋とそばの公園の桜は満開という。今週末は未だ花見が出来そうだ。