日々のことを徒然に

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芭蕉の葉が裂けて

2018年11月05日 | 自然 季節

 夏のあいだ、青く瑞々しく茂っていた芭蕉の葉、秋も深まると葉脈に添って裂けていく。秋風の強い日や台風の後などは哀れなほどの姿になる。秋も終わり冷気が強まるにつれ枯れ朽ちてその姿を消す。俳句では「破芭蕉」と書き「ヤレバショウ」と詠むそうだが、どこにも芭蕉の印象は浮かび来ない、ちょっと哀れで「敗れ芭蕉」の印象すらする。

 子どものころ、それは大きな芭蕉が家の裏に植わっていた。祭りだ、家の祝い事だといえば各家庭で角寿司を作っていた。角寿司、今は観光化され岩国寿司と呼んでいるが、子どものころは角寿司だった。その各段の仕切りに使う芭蕉の葉を近所の家から取りに来られていた。わが家でもそれは同じだった。葉の用途として繊維から芭蕉布が作れるそうだが目にしたことは無い。

 芭蕉は切り口から水がしたたることを何度も経験し、非常に保水力の高い植物だと知っている。それが瑞々しい葉を茂らせていたのかもしれない。寒気になり水不足となるので、一度枯れ芭蕉となって身を隠し、次の春に新葉を芽吹かせ子孫を守る、勝手にそんな仮説を立て納得している。

 祖母は「芭蕉の葉が裂け始めると冬支度に掛かる」と準備をしていた。炭団や炭を使う炬燵、火鉢用の灰作りなどしていた。プロパンガスや灯油がわが家に入ったのは祖母の死から数年経っていた。芭蕉の葉が裂けはじめる、冬支度を始める、ついこの間まで自然から季節の準備を読み取っていた、温暖化もなく自然と人がうまく共存していた、いい時代だったのかもしれない。
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