日々のことを徒然に

地域や仲間とのふれあいの中で何かを発信出来るよう学びます

ライオンの墓 1

2016年08月12日 | しっちょる岩国


 子どものころこんな話を聞いていた。ある年の夏、錦帯橋の川原でサーカスが開かれていた。台風が来てサーカス小屋は流された。そこにはライオンなど珍しい動物もいたがみんな流されて死んだ。大蛇は下流の臥龍橋を上って助かったがどこへ行ったか分からない。大きな抜け殻がどこかにあるかもしれん。大蛇については半信半疑のまま70年近く過ぎた最近、この話を「ライオンの墓」(写真)として綴った文章に出会った。概略を写させてもらう。

 昭和5年の夏休みも暑い日が続いていた。夕方になると長い腰掛けを家の前に持ち出し、世間話をしながら夕涼みをして過ごしていた。8月になり錦帯橋川原に山元動物演劇団がやってきた。娯楽の少ない時代、絵や写真では見ていても、本物のトラやライオンを見たことのない人が沢山いました。11日から始まった初日には遠くから歩いて見に来る人などで満員となりました。

 12日、昼の部を終えたころに南の湿った風が吹きはじめ天気がおかしくなってきました。雨が降り始めたが予定通り開演しました。間もなく、水をうつすような大雨が小屋の屋根を叩き始めた。風も強さを増し、テントの隙間からも水しぶきが舞台に落ち始めました。演劇団はプログラムの主なものを上演し早めに終了しました。見物の人たちは濡れ鼠のようになって帰って行きました。雨は衰える様子もなく降り続きます。

 青く澄んでいた錦帯橋下の水も、だんだんと濁り増水し始めました。これまで見たこともない速さで水は小屋に迫ってきます。団員は、沢山の動物たちを檻ごと移動させる作業を大雨の中みんな必死に続けす。しかし、小屋は倒れ下流へ流され始めた。一緒に動物たちの檻も流れ、檻の中から動物たちの「ウオーン、ウオーン」と助けを求める声が聞こえます。(ライオンの墓 2へ) 
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