書道展の会場に足を踏み入れた瞬間、迫りくるエネルギーのような波動を感じ、何か身体が熱くなったようで一瞬だが立ち止まる。何度か訪れた絵画や写真展では感じたことのない初めての経験をした。
訪れたのは石田霞村(いしだかそん)さんの書道展。この度、卒寿、今年2月に数えの90歳になられたことを記念しての作品展会場。国内だけでなく海外でもその書道活躍は高く評価され国際文字文化芸術賞、パリ芸術院展名誉賞、国際芸術大賞など国内外で多くの賞に輝かれている。会場ではその一端を伺うことができる。緻密に描かれた日本画にも驚いた。
太い字細い字優しい字、小さな木片から手では持てそうにない大きな扇など100点の作品が並ぶ。作品には判読できない字句が多い、なのに作品に引き寄せられる。最初に感じた波動はそんなところから出ているのだと思う。会場で立ち会っている門下生の知人が色々説明してくれた。初めての内容で驚くことばかりだった。今も毎日筆を持たれ作品は中腰で書かれる。大筆で書き上げた作品へしたためる小さな文字の雅号でも筆を変えないという。そばにいてもただ驚くばかりらしい。
若いころ、石田さんとは同じ課で優しく声をかけてもらっていた。職場異動され出合う機会は少なくなっていたが、私も異動し再び出合う機会が増えた。子どものころから始められた書道、退職されるころ書道界で名を知られた人だと初めて知った。退職記念に「一期一会」の書を残された。教育施設に同僚と掲げたことを誇らしく思った、30年あまり前のことを思い出す。会場出るとき交わした握手の感触は道を極めた人の温もりだった。
(写真とお名前の掲載は了解をいただいております)