黄色くなった朝顔の葉を取り除いたらその下に蝉の脱け殻があった。その少し色あせた茶色は脱皮から相当な時間が過ぎているようだ。空のプランターに苗を植えたので、地面からプランターを乗り越えて登ってきたことになる。天敵の目の届かない葉陰の安全な場所で脱皮したのは偶然だろうか。
「ぬけがら」の発音も漢字に替えると「脱け殻」と「抜け殻」になり、受けとり方で意味が違ってくる。脱け殻、これはセミや蛇など昆虫や甲冑類などが脱皮した古い体皮、中が空っぽでも何かをやり終えた感を持たせる。白蛇の脱け殻は弁財天の使いで金運を呼び込むとしてそっと財布に忍ばせるという。
抜けの方、詰まっている物が抜ける、乳歯が抜けて永久歯に、こんなのはいいが、気のせいかあまり受けのいい例えが見つからない。その最たるものは抜け髪、そう抜け落ちた髪のことだ。髪を下ろす人ならいざ知らず、それなりに気を使いながらふさふさの頭を願う者には堪らない表現になる。せめて気の抜けたうつろな状態の人にだけはならないよう努力しよう。
セミは土中7年、生息1週間の寿命という。庭に脱け殻を残したあのセミは一生を終えているだろう。雌は樹皮に産卵、孵化した幼虫は地中に入って植物の根から養分を吸収するという。地中へ達するまでに虫たちの餌食という災難があるだろう。そう思えばセミの難儀な一生がうかがえる。セミの卵も幼虫もまだ目にしたことがない、遅いかもしれないが、探してみよう。