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大江健三郎『万延元年のフットボール』

2020年03月29日 02時58分53秒 | 文学
大江健三郎の『万延元年のフットボール』(1967年)を読んだ。(講談社『大江健三郎全小説7』所収)

『日常生活の冒険』が詰まらなかったので長篇小説を読むのはやめようかと思ったが、こちらはとってもおもしろい。惹き付けられる。
何がおもしろいというわけではないが、おそらく文体のせいだろう。
と、はじめはだいぶ期待した。
しかし最後のほうは期待外れだった。
曾祖父とその弟、語り手の長兄と次兄のS次、そして語り手の蜜三郎と鷹四のそれぞれのペアが重なるように描かれる。
鷹四が蜜三郎の妻の菜採子と関係を持ち、そのあとかつて鷹四が妹と関係を持って妊娠させて中絶後に妹が自殺してしまったという告白があり、それから鷹四が自殺する。
このあたりがちょっと話が詰め込み過ぎ・めちゃくちゃな印象がありついていけなくなる。
その前の、なんだか唐突に蜜三郎が怒り始めて雪が降って都会に帰れないので倉屋敷に閉じこもり、鷹四が谷間の村の若者と作ったフットボールチームと対立し、彼らが”スーパー・マーケットの天皇”の経営するスーパーに対して暴動を起こす、というあたりから違和感は充分にあった。
曾祖父の弟は谷間から逃げて横浜に行ったと思っていたら、倉屋敷の地下で本を読んでいたということがわかるという展開も、まったく興味が持てない。曾祖父の弟の話に興味が持てないので、彼がどのように余生を過ごしていたのかにも興味を惹かれない。どうせ嘘だし。
フォークナーの『アブサロム、アブサロム!』が死んでたと思ってたひとが生きてた、という話であるという噂を聞いたことがある。ひょっとするとそこらへんの影響があるのかもしれない。
しかしやはりちょっとこのころの大江健三郎は苦手かもしれない。
『洪水はわが魂に及び』だけは読もうと思うが、それ以降はわからない。

他で気になったことをメモしておく。
・語り手の蜜三郎の妻の菜採子は、大江健三郎の娘と同じ名前なのであろう。
・《それはイギリスの動物採集家が少年時の日々をエーゲ海で過した愉快な思い出を語った本で、もともと死んだ友人が発見してきて、愛読していたものである。》(100頁)
と語られる蜜三郎が翻訳している本はジェラルド・ダレルの『虫とけものと家族たち』のことだろうか。
・フットボールというのは足で蹴っているようだからサッカーのことだろう。アメリカンフットボールのことではないのだろう。
・隠遁者ギーは何のためにだか登場する。
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