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『お伽草紙』と『花様年華』

2016年06月26日 23時37分02秒 | 映画
新潮文庫の太宰治の『お伽草紙』を読んでいるがとてもおもしろい。
最初の「盲人独笑」はひらがなばかりで読みにくく、何が行われているのかよくわからないまま終わってしまったが、次に収録されている「清貧譚」はとてもおもしろかった。太宰治が創作をどういうふうに考えているかが菊を創作の比喩としてとらえることで分かるような気がした。人に売ることで芸が磨かれるということと、自分のなかだけで芸を研鑽することにこだわる純粋な気持ちの対比が描かれていたと思う。
『新釈諸国噺』は昔読んだときにおもしろくなかった印象があり期待していなかったがいま読むとおもしろかった。
昔話という形式を使うことで、あまり生々しさがなく、現実世界のリアリティも求められずに、軽い感じで語れるのが良いのだと思う。そこにやはり太宰治が登場するのがおもしろい。

『恋する惑星』はあまり良いと思わなかったのだが、なんとなく気になり、以前録画していたウォン・カーウァイ監督の映画『花様年華』の最初だけちょっと見る。
ほんとにちょっとだけ見たのだが、これは傑作だと思います。最初をちょっとだけ見て傑作だと思った映画は、だいたいにおいて傑作映画であることは間違いない、とは申しませんが、これだけ惹き込まれるのは珍しい。
これは背中を映した映画なのだと思う。
重要な登場人物以外は背中しか映らない。「トムとジェリー」なんかで人間は下半身しか映らない、そんな感じ。
重要な登場人物も背中がよく映る。
こんなに背中を映した映画も珍しい。もっと背中が見たい。
不倫の映画らしいのでそこも惹かれる。どうやってこの突き放した感じから切実な気持ちに寄り添うのか気になる。
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