
吉本隆明『真贋』(講談社文庫)を読んだ。
最近読んだほかの吉本隆明の本(『今を生きる親鸞』『老いの幸福論』)と内容は重なる部分もあったが、この本がいちばんおもしろかった。
釈迦も孔子も倫理的に良いことしか言わないから駄目だといった安藤昌益に興味を持った。安藤昌益の本はどこかで読めるのだろうか。
文学の毒の話はおもしろかった。本を読むことはよいことだといわれているが、読むことによって実生活への興味がなくなったりというような毒が表れることがあるという話。まさしくその通りと思った。
川端康成は、女性の新人編集者がやってきたときに一言もしゃべらず、とうとうその編集者が泣いたという噂話は初めて聞く話だった。吉本隆明が川端康成について話すのを聞くのは初めてのことのように思う。そもそも、誰かが川端康成について何か言ったり書いたりするのを見たことがない。変人のようで、少し川端康成に興味を持った。
戦後の作家では、太宰治の評価が高いのは知っていたが、それと同じように武田泰淳の名前が出ていた。
夏目漱石の奥さんが書いた『漱石の思い出』に興味を持った。
小島信夫は、人の嫌がることをわざと言うような人だったらしい。
ざっと興味を持ったのは以上のようなところだ。
このところ、向田邦子ブームなのではないかと思っていて、何か読むべきかなと思ったりもするのだが、それと同じようにサマセット・モームブームなのではないかとも思っている。ここ最近で新訳が三作品も出た。
向田邦子よりもモームのほうがおもしろいだろうから、『昔も今も』と『お菓子とビール』を購入した。
『お菓子とビール』は昔新潮文庫(タイトルは『お菓子と麦酒』)で読んだことがあり、なかなか切ない感じでよかったと思うのでもう一度読んでみる。