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ボルヘス『七つの夜』感想

2011年05月29日 22時42分18秒 | 文学
ボルヘスの『七つの夜』(岩波文庫)を読んだ。七つの講演をまとめたものだが、僕には難しかった。ボルヘスはいつも思うのだが、難しい。
「第一夜 神曲」と「第四夜 仏教」はそのなかでも興味を持って読めたほうだ。
「第一夜 神曲」では、聖書の『ヨブ記』とメルヴィルの『白鯨』の話が登場し、読もうと思った。それと他の講演で『ヨブ記』の影響を受けているというウェルズの『不滅の炎』という小説の話があり興味をもったが、これには邦訳がない。『The Undying Fire』というのが原題のよう。少し気になったが、原書で読むほどでもないし、読めないだろう。
「第四夜 仏教」はいまたまたま仏教に興味があるせいもありおもしろかった。キリスト教徒はイエスの生涯に興味を持つのに、仏教徒はブッダの生涯に興味を持たない。それが本当であろうと嘘であろうとどうでもよいと思っている、という話はおもしろかった。ブッダの話でおもしろかったのは、矢の喩えで、矢が刺さって死にそうな男が射手の名前とか矢の材質とかを気にしているうちに死んでしまう。そこでブッダが「私なら矢を抜くことを彼に説くだろう」と言ったという話で、そんなふうなお話があるのならブッダの話もおもしろいかもしれないと感じた。仏教については今後も読んでみようと思っている。

いろいろな本を同時に読んだり、本屋で立ち読みしたりして思うのは、「朝まで生テレビ」の司会者の田原総一朗はこんな気分なのかもしれない、ということ。
ニーチェが僕には真意のつかめない比喩でツァラトゥストラについて語っていたり、ボルヘスが『千一夜物語』について難しい話をしたりしているなかで、テーブルの端っこからパネラーが何か言ったのをとらえて「なに? ちょっと黙って。いま吉本隆明がなにか言った」とそのパネラーに話をさせるというような、そんな気分で本屋で立ち読みしている。
というわけで吉本隆明の『老いの幸福論』(青春新書インテリジェンス)はとてもおもしろい本なので、いつか購入して読みたいと思った。長いスパンで目標を立てずに短い期間を想定して生きていく、というようなことが書かれていて、坂東玉三郎が病気をしたあとに毎日毎日を生きていくことだけを考えて生きてきたとテレビで言っていたのを思い出した。あまりに先のことを考えると絶望するということがあると思う。それから、自分の死は自分のものではないのだから葬式をどうしろとか延命治療をどうしろとか言うべきではない、ということも書いてあった。自分の死は自分のものではないのだと考えることはとてもよいことだと感じた。
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