スプートニクの恋人(村上春樹著 小説)

2021-10-01 00:00:36 | 書評
1999年に発表された『スプートニクの恋人』著者の作品クロニクルで見ると、『ねじまき鳥クロニクル三部作』の完結が1995年。地震とテロがあった年だ。その後、しばらく活動を控えた後の発表作。全体的には1987年の『ノルウェーの森』の前の作品のような部分もあるし、エンディングの一つの月を二人で見るくだりは、後に「1Q84」の二つの月につながっているような感じもある。



登場人物の「ぼく」は著者のいくつかの作品に登場する『中二階の男』である。「ノルウェーの森」のワタナベ君のタイプ。薄い関係のガールフレンドが二階から降りてきて、中二階のぼくに挨拶してから一階の人物(男や女)と濃い関係になっていく。そしてその関係がいずれ解消されるが、うまく中二階には戻ってこられない。

文庫本化したのは2001年だが、もしかしたら読んでなかったのかもしれない。登場人物は「ぼく」を除けば魅力的な人物ばかりだが、「ぼく」は俗物に描かれている。

予想と異なり。小説は平和的に終わっていく。