活字のサーカス(椎名誠著 エッセイ)

2021-10-05 00:00:43 | 書評
『活字のサーカス』は副題がー面白本大追跡ーとなっているが、本のことが書かれているのは1/3位ではないだろうか。



最初の切り口は、ちょっとした旅行に同行させる本のこと。この本が出版された1987年には、電子書籍はなかった。そうなると、重い本はいけない。ハードカバーなど最悪だ。思いだけで、水にぬれて乾くと反り返ってしまい体積が増えたりする。SF、アドベンチャー、歴史小説、ノンフィクション、古典など10冊ほど持っていくそうだが、思うようにはいかない。ほとんど読まないこともあるし、本が足りなくなることもあるそうだ。

私も感じるのだが、旅行中に読むというのは、移動手段(鉄道や航空機や船)の中で読む場合と、ホテルで夜中や悪天候で、室内から出られない時に読む場合。

実際には、旅を楽しみというのは車窓などから見る風景も含まれるので本を読んでばかりではいかないが、新幹線で東京-新大阪など、外の景色は見飽きていれば、読書もいい。

しかし、海外のホテルは、たいがいが天井に照明器具はなく。室内は間接照明で、読書には全く不都合なことが多い。帰りの機内で悔しいので持って行った長編小説を読んだりする。

開高健氏はベトナム戦争中の合間に欧州での日本人女性との不倫体験を含んだ『輝ける闇』を書いたが、その中に長期旅行中に読んでいた本が書かれている。

マーク・トウェイン作『アーサー王宮廷のヤンキー』。英語で読んだのだろうか。日本語訳を買ったのだが角川文庫で573ページ。さらに文字が小さいのだ。最近の文庫なら1000ページ分位ある。まだ買ってから1年強といったところで、書棚の隙間に横向きに詰め込んである

本書には短編エッセイとして222ページの中に16編が含まれているが、著者の好みは「サバイバル」小説ということがよくわかる。漂流民の冒険、戦地ニューギニアのジャングルに情報遮断状況で取り残された兵士、SFでも地球滅亡、人類滅亡などがお好みのようだ。