人類が横穴に戻った日

2009-08-26 00:00:48 | マーケティング
人類が、現代に至る前にどういう家に住んでいたのかは、今一つわかっていないようだ。従来は、山肌に穴を掘った横穴住宅に住んでいて、そのうち現在の住宅の原型である竪穴住居に変化したという説があったが、それは、日本などでは狩猟民族(縄文時代人)と農耕民族(弥生時代人)の時代の順番を示すだけのもので、今でも地中海沿岸では横穴住居があったりするし、そもそも、人類の起源のケニアのサバンナでは、木の上にいたのかもしれない。

要するに、世界中に移住していった場所の自然条件や入手可能な住宅建材を大脳皮質の働きで選択したのかもしれないし、選択ミスをしたグループが死滅しただけなのかもしれない。

とはいえ、日本では、横穴の住んでいたのは、数千年前のことだろう。

ところが、その横穴住宅が復活するらしいのである。

場所は、京都。四条河原町から数分のところである。

一応、ホテルらしい。

9h1+7+1=9h。ということらしく、ナインアワーズというホテルで、2009年12月に全国の1号店が開業になる。

なぜか、六本木でコンセプト説明会:ナインアワーズ展が開かれたので、ちょっと覗いてみたら、かなり驚いた。

その前に、1+7+1=9hの意味だが、ホテルに求められる機能として、シャワー1時間。睡眠7時間。休息1時間。の9時間ということで、9時間の滞在を満足できる空間を用意したということらしい。

個人的には、さらに9hというのは、「まさか、9平方メートルのビジネスホテルではないだろうか」と疑っていた。以前、それぐらい狭いホテルに泊まって窒息しそうになったことがある。

ところが、9平方メートルどころじゃなかったわけだ。

会場に入って奥の方に、何かプラスティックのバスタブのような物体が置かれていたわけだ。ただし、バスタブなら、桶なのだから上があいているはずだが、犬小屋のように、手前の方が開いている。実は、同じ形で、もう少し小さなものが自宅にもある。米国から輸入した「バリケン」というもので、犬用。地震の時や、犬を連れて遠出するときに、ガードするためのもので、バリケード・ケンネルの短縮型である。

9h2中を覗くと、どうもオーディオ系のスイッチ類が奥の方にある。人間用であった。

中へどうぞと係りの方が勧めるのだが、ジャーナリズムの方も、ちょっとみなさんご遠慮がちである。何しろ、入る時に四つん這いにならないと奥に進めない。もちろん高さは1メートル程度だから、立つことはできない。横穴住居以下である。

ぶざまな姿を同業他社のカメラマンに写されることになるのだろう。

そして、この横穴ボックスが壁に埋め込まれて上下二段で、何十個、何百個も横に並ぶようだ。

何か、ここに、人が大勢詰まった状態をイメージすると、動物の中でも、蟻とか蛇とか、かなり下等な方の巣というように思えてしまうのだが、大丈夫だろうか。

その前に、ホテルの目的を、シャワーと睡眠と1時間の休息に割り切ってしまってよかったのだろうか(実際、7時間、箱に横たわるのだけでも苦痛だ)。ホテルには、もっと多様な価値がある、というのが、ホテル学の基本だ。

glantz一方、この「多様な目的」にだけ、焦点をあてたホテルが登場した。六本木の隣町である麻布十番の南北線の駅から0分のところにある「HOTEL THE GLANTZ」。開業したてである。悪くいえば、シティホテル風のラヴホテルという人もいるが、時間制のホテルである。室内は最高級のベッドや調度で各種アメニティも充実(しているそうだ)。外から見ると、窓ガラスはすべてマジックミラーで外からはまったく見えない(中からは見えるのだろうか)。

実は、このラヴホテルではない時間制ホテルというのが、都内で大増殖中らしいのである。実際に、そこで何が行われているのか。それは使う人の自由であるのだが、まあ、推して識るべしなのかもしれない。

ただ、こういう秘密の空間を、ネガティブに考えるのは簡単なのだが、例えばフランス革命の作戦が立てられたのはサロンだったし、横穴ホテルが登場する京都でも、維新の時は寺田屋とか池田屋といった料亭が舞台だったし、戦後日本の保守政治が料亭を舞台に密室を中心に動いたことを考えれば、案外、時間制ホテルで次の次の次の政権が誕生するのではないかと、ほんの僅かな可能性を予感しておく。


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