ノーベル医学賞の意外

2008-10-07 00:00:24 | 市民A
10月上旬は、ノーベル賞週間である。次々に各賞が発表される。

まず、ノーベル医学・生理学賞が発表された。

仏独3氏にノーベル医学賞=エイズ、子宮頸がんウイルス発見
10月6日19時14分配信 時事通信

スウェーデンのカロリンスカ研究所は6日、2008年のノーベル医学・生理学賞を、エイズウイルス(HIV)を発見したフランス・パスツール研究所の女性研究者フランソワーズ・バレシヌーシ教授(61)と世界エイズ研究予防財団のリュック・モンタニエ名誉教授(76)、子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピロマウイルス(HPV)を発見したドイツがん研究センターのハラルド・ハウゼン名誉教授(72)の3人に授与すると発表した。

授賞式は12月10日にストックホルムで行われる。賞金1000万スウェーデンクローナ(約1億4400万円)はハウゼン氏に半分、バレシヌーシ氏ら他の2人に4分の1ずつ贈られる。

まず、スウェーデンのカロリンスカ研究所というところで講演された日本人がいる。現昭和大学横浜北部病院の副院長の工藤進英氏。大腸内視鏡のゴッドハンドであり、陥凹型大腸がんを世界最初に発見した方で、かつ、その切除法の大家である。ノーベル賞の前座と言われるこの研究所で講演を行なっているそうである。

その工藤氏の講演会に行ったおり、裏話を聞いたのだが、ノーベル賞の選考は、この研究所のほんの一握りの人間が行なっているそうだ。しかも医学・生理学といっても、その中の医学の分野では、今まで、非白人は一人も受賞していないそうである。一番近かったのが野口英世というのだから、人種的偏見は大きいと言われていた。

腹立ちまぎれに、「スウェーデンは暗く沈んだ国で、日本に帰ってくると木々や花々が大変美しい」とか言われていた。もちろん、ノーベル賞の授賞式はストックホルムに燕尾服を着て行かなければならないが、受賞したなら町が暗くても我慢できるだろう。


という予備知識をおいて考えると、違和感があるのが、AIDSウイルスの発見者として受賞されるフランスのパスツール研究所のリュック・モンタニエ氏。確かに、今年は、彼が科学誌「サイエンス」の1983年5月20日号に「エイズ・ウイルス発見」を掲載してから25周年にあたる。

しかし、翌年1984年になり、アメリカ国立衛生研究所のロバート・C・ギャロ氏が、「発見されたウイルスがAIDSウイルスであることを突き止めたのは、私の方が先だ!」という主張をすることになる。さらにもう一人現れるのだが、その方は第一号の椅子は諦める。こうして、どちらが真の発見者か、ということで論争が続いたのだが、そんなことよりも新薬開発が先じゃないかということになり、レーガン大統領とシラク首相の首脳会談のテーマにもなり、政治決着として、「両者とも第一号である」ということになった。(とはいえ、現在、毎年数千万人の方が亡くなっている)

何となく、同時発見者の一人が受賞するということは、もしやギャロ氏の運命も尽きたのか、と思って調べると、これがよくわからないのだが、英語版wikipedia(つまり本家)に「Robert Charles Gallo」のページがあった。1937年3月23日生まれとなっていて、現在はメリーランド大学に所属しているようだ(確かノーベル賞が数十人いる大学)。特段、不幸の話は書かれていない。

が、文末に2008年10月6日に書き加えられた一節があった。

In October 2008, (one half of) the Nobel Prize in Physiology or Medicine was awarded to Françoise Barré-Sinoussi and Luc Montagnier for their discovery of human immunodeficiency virus. The official press release makes no mention of Gallo.

フランス人のモンタニエ氏が受賞したのに、ノーベル賞の公式発表にはギャロ氏のことは、何も触れていないよ、ってことだ。

それで、その公式発表を見てみたが、やはりギャロ氏なんか地球上に存在しないような書き方だ。よほどアメリカ人が嫌いなのだろうか。ノーベル財団の基金の運用を全部リーマンが担当していた、とか言うわけじゃないだろう。現にギャロ氏が1984年当時所属していたアメリカ国立衛生研究所のノーベル賞受賞者は100人を超えるそうである。

数日内に一悶着ありそうである。


さて、ノーベル賞の与太話だが、ノーベルはダイナマイトの発明で一財産を作った、と言われているが、実際には、ダイナマイトで稼いだ小金を石油事業に突っ込む。旧ロシアのバクー油田である。ここで巨額の富を得ている。この油田はその後、ソ連に接収されたものの、現在はアゼルバイジャン共和国に属していて(カスピ海西岸)、地政学上重要なポイントと化している。

もう一つ。今年のノーベル経済学賞には「金融工学博士」が選ばれることはないだろうし、「グリーンスパン」氏とか「ゼロ金利政策発明者」が選ばれることもないだろう、とは思っているのだが、結構、選考委員は冗談が好きそうだから。


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