禁止用語のタイトル

2023-09-24 00:00:34 | 落語
落語は江戸時代からの演芸なので、オリジナルのストーリーには、現代の観点から言うと「禁止用語」や「差別用語」が含まれているし、噺の内容次第が封建的な部分もあり、噺家は、部分修正したり、まずい部分をカットしたりするし、どうしても難しい場合はお蔵入りにしてしまう。

今回聴いたのは、「妾馬」と「青菜」。どちらも抵触気味だ。

まず、「妾馬」(噺:柳家さん喬)。「めかうま」と読むそうだ。「妾」は要するに第二夫人。使用禁止用語らしい。イスラム圏ではまったく問題ないが日本ではいつの時からかは不明だが一夫一妻制だったが、二人以上のベッドパートナーを持つものも多く、特に江戸時代の大名についていえば、男子が産まれないと、お家取り潰しとなり家来含めて浪人となり全国放浪の身になるため、財政の許す限り2号、3号と囲っていた。側室という呼び名もあるが、基本的に大名は国元と江戸の間を毎年移動しなければならず、国元には身分の宜しい本妻がいて、江戸には器量重視の側室がいて、結果として江戸の方に子供がたくさん生まれていたようだ。

で、そういうわけで、ある大名は江戸の町民の器量よしを一目ぼれして城内に入れ、男子が産まれる。「おつる」が一夜にして「御鶴の方」になり、その兄で風来坊が、大名屋敷に呼ばれることになる(この男は、長尺本の場合は、お城入りの時にもらった百両を博打ですったことになることもある)。そして衣装一式は長屋の主に借り、城中に入るのだが、城内のコトバが符号のように聞こえ、会話ができない。ついに殿様から、「いつもの話し方でよろしい」と言われて、「べらんめえ」になり酒を与えられ、さらに唄のいくつかを披露する。

結果として、名字帯刀を与えられ、武士になり上がるわけだ。

普通はここまでで、きちんと話すと1時間になり、さらに後段があって、武士としては素人だが、急用を与えられ、馬に乗って疾走することになるのだが、行き先は馬任せということになる。二編話すと「妾」と「馬」と題名が完結するのだが、最初だけだと、単に禁止用語一文字になってしまう。

柳家さん喬師匠の枕だが、まず「二世議員」の話から。軽く褒めるが、誰だってぼんくらなのは知っている。次に「歌舞伎界」。これは同じ芸能の世界からみた世襲制についての厳しい意見を軽妙に語る。最後に「落語界」。こちらは僅かに二世がいるが、それも含めて「実力世界」と表現。やや嫉妬も感じられるが、世襲制に批判的な市民の多くが拍手をもって盛り上がる。

「青菜」(噺:柳家権太楼)。これは結構有名で、主人公は植木屋さん。大庭を抱える大旦那のところで仕事をし、仕事が終わったところで、縁側で旦那と一杯やる(現代の植木屋は99%が車に乗ってくるのでありえない)。その時の旦那夫婦の振る舞いに感激し、家に帰ってから妻にも、同じように接客してほしいと無理難題を言いつける。このあたりが男尊女卑ではあるが、植木屋は石を運んだり梯子を木に掛けて剪定したりと、女性向でないこと甚だしい仕事なので、わからなくもない。そこで親友を家に招いて、鰯の塩焼きを鯉の洗いと称したり、仮想空間を作ろうとして失敗を続ける。最後に「弁慶」ということなる。

オチがなかなかわからない。「弁慶」といのが実際に戦いで立ち往生で亡くなったことから、仮想空間の設定の種が尽きて、立ち往生したことを意味することによる。また、上方では「弁慶」は「割り勘」を意味する言葉でもあるそうだ。